九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

ホルモン

牛や豚のホルモンが使われる。基本的には様々な部位がミックスされており、それぞれの味わいと歯ごたえを楽しめる

タレ

大きく分けると味噌ベースか醤油ベース。焼肉店では焼肉用のタレを使うことも多いが、特製のタレが使われることもある

作り方

タレで下味を付けたホルモンを、中央がくぼんだ独特の鉄鍋で炒める。たっぷりの野菜をのせ、野菜がしんなりしたら完成

語り 朝日家 安山宰祐の「田川ホルモン鍋」

安山宰祐(やすやまただひろ)さん

 『朝日家』の創業は1957年(昭和32年)。「昔の写真を見ると、“ホルモン、ジンギスカン、焼き鍋”という文字があるので、『ホルモン鍋』は当時から作っていたんだと思います」と語ってくださるのは、3代目店主・安山宰祐さん。九州産黒毛和牛に加え、豊富な内臓系メニューがそろう店で、『ホルモン鍋』は“ヘルシーで低カロリー、元祖もつ鍋”と書かれた人気メニューだ。「家が焼肉店ですから、子どもの頃から『ホルモン鍋』をよく食べていました。最低でも週に1回…『またか〜』という感じでしたね(笑)。でも、今でもよく食べています。まかないにすることも多いですね」。

ずっと変わらない老舗の味を作っていただいた。「そんなに繊細な料理ではないですよ。おおざっぱ(笑)。鉄鍋にホルモンのせて野菜のせて蒸し焼きにする感じです」。テーブルにピカピカに磨かれ中央がくぼんだ鉄鍋と、ホルモン、キムチが運ばれる。 「『ホルモン鍋』にはかつて鍋の代わりにセメント袋が使われていたこともあって、この鉄鍋はそれを再現するためのものなんです。特注ですね。使っているホルモンは上ホルモン(牛小腸)、センマイ(牛第3胃)、並ホルモン(豚大腸)、コブクロ(豚子宮)の4種類。きれいなホルモンを仕入れていますが、店でもきれいに洗います。特に豚のホルモンは独特の香りを抑えるために、丁寧に洗っていますね。洗った後、特製の味噌ダレを揉み込んでおきます」。火をつけて鍋が温まるのを待つ。「しっかり熱くしないと、ホルモンを入れた時に水分が残って味がぼやけるので、強火で10分くらいかけます。キムチをお付けしているのは、具材にもなるのですが、この10分間のつまみにしていただくためでもあるんです」。鉄鍋をしっかりと熱したところで、ホルモンを投入。〝ジュウッ〟という美味しそうな音が響く。

ピカピカの鉄鍋は使う度によく洗い、油を塗って拭きあげるとのこと。しっかりと熱した後、特製の味噌ダレを揉み込んだホルモンを入れる

「キャベツ、タマネギ、ニラなど、たっぷりの野菜と唐辛子や赤こしょうをのせ、特製のタレをまわしかけて蓋をします。(お好みでキムチをのせてもOK)タレは焼肉用のタレと同じで、ニンニクとショウガを効かせた醤油ベースのタレですね。赤こしょうは唐辛子とニンニクを混ぜたペースト状のもので、辛味というよりも味にコクを出すものですね。」

野菜類をのせ、唐辛子や赤コショウをのせる
醤油ベースの特製タレをかけて蓋をする

「初めは野菜に支えられて高い位置にある蓋が、鉄鍋にくっついたらできあがりです」。ホルモンたっぷりの鍋だが、食べてみると、見た目よりもあっさりしている。「もつ鍋よりもあっさりしているとみなさんが言われます。スープを使いませんから、ホルモンと野菜の旨味が凝縮されますね」。

途中で豆腐を入れ、蓋が鉄鍋にくっつくのを待つ
全体をほぐすようにして食べる

具材を食べてしまうと、鍋にはホルモンと野菜の旨味満点の汁が残る。まず、その汁を楽しめるのがうどんだ。「やや汁が多い皿うどんみたいな感じですね。〆なのに、これでまた焼酎が進むんです(笑)」。

〆その1はうどん

うどんを食べてもさらに少し残る汁。「最後におじやというかチャーハンはいかがですか?」。鍋にごはんと卵を投入しておたまで混ぜる。おたまに入ったごはんを落とすためにおたまを下に向けて鍋をたたくと、“カンカン”というこれまた美味しそうな音が店内に響く。最後にネギを散らせば、香ばしいおこげも加わった味わいに再び食が進む。『田川ホルモン鍋』は“二度〆”で楽しみたい。

最後はおじやでスープを一滴残さずにいただく

時折店内に響く“ジュウッ”という音と“カンカン”という音。他のテーブルからこの音が聞こえてきたら、焼肉で多少満腹でも『ホルモン鍋』を食べたくなるはずだ。「『ホルモン鍋』を初めから注文するのではなく、焼肉を一通り食べた後の〆として『ホルモン鍋』を食べられる方が多いんですよ。そして、『ホルモン鍋』の〆としてまずうどんを食べ、さらに最後にごはんも食べて…〆が何回もありますね(笑)」。寒い時期はもちろん、夏場にもスタミナづくりのためによく食べられているという『ホルモン鍋』。多くの炭鉱マンたちを支えていたのだろう。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

サトイモ

きれいに洗った上ホルモン(牛小腸)、センマイ(牛第3胃)、並ホルモン(豚大腸)、コブクロ(豚子宮)を使う

調味料

焼肉にも使うニンニクとショウガを効かせた醤油ベースのタレ。ホルモンにはあらかじめ特製味噌ダレを揉み込んでおく

作り方

よく熱した鉄鍋でホルモンを炒めた後、野菜類をのせる。特製タレをふりかけて唐辛子などを散らし、蓋をして火を通す

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朝日家 半世紀以上続く老舗の『ホルモン鍋』

九州産黒毛和牛に加え、豊富な内臓系メニューがそろう1957年(昭和32年)創業の焼肉店。特製味噌ダレを揉み込んだ上ホルモン(牛小腸)、センマイ(牛第3胃)、並ホルモン(豚大腸)、コブクロ(豚子宮)を鉄鍋で焼き、たっぷりの野菜をのせたら醤油ベースの特製タレや唐辛子、赤コショウ(唐辛子とニンニクを合わせたペースト)をかけて火を通す。

ホルモン、野菜、キムチ、〆のうどんか小めしが付く『ホルモン鍋セット』1人前1925円(写真は2人前)
写真は1階の小上がり席。2階には個室もある。BGMはK-POPなど
JR田川伊田駅近くに建つ

朝日家(あさひや)

住所 田川市魚町14-27
電話 0947-44-2097
営業 17:00~OS22:00
(土・日曜は11:00~OS14:00も営業)
休み 月曜
78席
カード
駐車場 あり
※記載した内容は2020年5月29日現在のものです。
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