九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

五島うどん

上五島には30軒以上の『五島うどん』製麺所があり、素材や製法が少しずつ異なる。各店がセレクトした『五島うどん』を使っている

炊き方

『五島うどん』を熱湯を張った鉄鍋に入れて炊く。鉄鍋のまま提供され、さらに炊きながら食べるスタイルの店もある

つゆ

アゴ(トビウオ)出汁をベースにしたつゆにつける食べ方と、卵と生醤油を合わせたものをからめる食べ方がよく知られている

語り 竹酔亭 本店 舛田好伸の「地獄炊き」

舛田好伸さん

古い歴史を持つ『五島うどん』は、かつては各家庭で手作りしていたものだった。1976年に創業した『ますだ製麺』は、昔ながらの手作業で手延うどんの製造を開始。舛田安男会長が「五島うどんの旨さを、もっと広く、もっと多くの人に伝えたい」と始められたのだ。現在は機械化された部分もあるが、気候や温度、湿度に合わせて調整するのは手仕事。一昼夜をかける乾燥工程では、何度も麺の様子を確認しているとのことだ。
「うどんと寝起きを共にしています。朝から一練りしていますしね。毎日うどんに語りかけてますよ(笑)」。

そう話してくださったのは、製麺工場の上に住まれている舛田好伸さん。舛田さんを中心に、日々愛情を込めた麺が作られている。そして、その麺を食べることができるのが、『ますだ製麺』の直営店『竹酔亭 本店』だ。舛田さんは、『竹酔亭 本店』の店主も務めている。

お店では、五島うどんを使った、かけうどんなどを食べられるが、メニューには『地獄炊き』の文字は書かれていない。(原則、予約制)
「『地獄炊き』は、つゆにつけて食べるか、溶いた卵と生醤油を合わせたものにつけて食べるかです。うちのつゆは、アゴ出汁100%です。コクのあるアゴ出汁は、作り立てのものが一番美味しいですよ。つゆを作るのに30分ほどかかります。ですから、その日の朝でもいいのですが、できれば前日までにご予約をいただきたいのです。通常のうどんのつゆは昆布、カツオ節、アゴの粉末から作る出汁がベースで、地獄炊きのつゆとは、違うものですね」。

こちらの『地獄炊き』は、厨房で調理するのではなく、客席のテーブルの上で鍋料理をするようにして作られる。ガスコンロの上に置かれた鉄鍋の中で、グツグツと沸いている熱湯に『五島うどん』が投入される。

うどんがくっつかないように、鉄鍋の中に広げるように入れ、さらによく混ぜる

「うどんをばらばらと入れたら、くっつかないようにすぐに箸でよくかき混ぜます。

5分ほど炊く

ふたをして、沸騰したら外し、5分くらいでできあがります。炊いている時は、地獄の釜みたいにグツグツいってますね。固めが好きな方はすぐに、少しやわらかめが好きな方はもっと炊いてからと、お好みでどうぞ」。

炊きあがった『地獄炊き』

コシの強いうどんに、アゴの風味が広がるつゆがからむ。うどんそのものも風味豊かだ。
「アゴ出汁はコクがあるでしょう?そして、モチモチとした引きとコシの強さが五島うどんの特徴です。古くから続く製法に加えて、素材も大切です。小麦粉は、数種類をブレンドしています。それに、五島の水、海水を平釜で炊き上げた五島の塩、五島特産の椿油を使っています。五島ならではの素材が生み出す五島の味ですね」。

つゆだけではなく、溶き卵に生醤油、カツオブシ、おろしショウガを合わせた中に、うどんを入れて食べるのも旨い。家庭で食べる時は、つゆにつけて食べるよりも、卵と生醤油にゆで汁を少し加えたもので食べることが多いとのこと。出汁を取ることも不要で、一番簡単に食べられる方法だからだ。
「うちの雰囲気が好きで来てくださる方もいらっしゃいますが、『地獄炊き』は地元の方は、家で食べられることが多いようです」。

おもしろい形をした『ふしめん』200g 210円

麺が細いことが特徴の『五島うどん』だが、中央が平たくて薄い、おもしろい形のものを見せていただいた。
「これは節麺(ふしめん)というものです。うどんは、棒に引っかけて延ばしますが、棒に引っかかっている折り返しの部分ですね。グラタンなどにしても美味しいですよ」。

その他に、こちらならではの『五島うどん』もある。アゴの粉末を練り込んだ、あごうどんや、梅うどん、竹炭うどんなどだ。
「粉も変えたりと、いろいろなものを考えています。乾麺と、かけうどんなどに使う半生麺でも、使っている粉は違います」。

昔ながらのうどんから、オリジナルのものまで、『五島うどん』をより広く伝えようとしている『ますだ製麺』。全国各地にも展示・販売に行かれるとのこと。

「関東では受けがいいんですが、今のところ四国ではあまり受けないですね(笑)。『五島うどん』が美味しいことを、もっとたくさんの方々に伝えていきたいと思っています」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

五島うどん

古くから続く製法をベースに作る自家製麺。ブレンドした小麦粉、五島の水、海水を平釜で炊き上げた塩、五島特産の椿油が材料

炊き方

客席のテーブルの上で鍋料理をするようにして作られる。鉄鍋の中の熱湯にうどんを入れて、箸でよくかき混ぜ、5分くらいで完成

つゆ

コクのあるアゴ出汁100%で作った、作り立てのつゆにつけて食べるか、溶き卵と生醤油を合わせた中にうどんを入れて食べる

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竹酔亭 本店 できたてのつゆで食す地獄炊き

舛田安男会長が「五島うどんの旨さを、もっと多くの人に伝えたい」と始めた『ますだ製麺』の直営店。通常のうどんは半生麺をゆで、『地獄炊き』は乾麺をゆでて作る。30分ほどかけて作る『地獄炊き』用のつゆは、コクのあるアゴ出汁100%。出来立てのつゆが一番美味しいということで、予約のみで食べることができる(できれば前日までに予約のこと)。

『地獄炊き』1人前750円(写真は約2人前)。できれば訪れる前日までに電話で予約を
地元の方に食事処として愛されている
お店は島のメインストリート国道384号線沿いにある

竹酔亭 本店

住所 南松浦郡新上五島町七目郷449-1
電話 0959-42-0821
営業 10:00〜14:30(土曜、日祝日〜15:00)
定休日 なし
38席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.masuda-udon.co.jp
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