九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

酢飯

米どころ・白石町の米がベース。もちもちした食感を出すため1割ほどもち米も加える。炊きたてに寿司酢を加え酢飯をつくる

具材

奈良漬け、錦糸卵、むつごろうの甘露煮、紅しょうが、椎茸、ゴボウ、カマボコなどが基本的な具材。作り手によって違う具材も入る

盛りつけ方

錦糸卵を一番上から丸い形にしてのせるところは共通しているが、細かい盛りつけ方は作り手によって微妙に異なるようだ

語り かどや 藤松紅木の「須古寿司」

藤松紅木さん

棚には年季が入った大きさの異なる『もろぶた』が置かれている。
「洗って外に干しても反らないような組み方で、木でかしめた(固く止める)ような作りになってます。大きさが大・中・小とあって、大は一升、中は7合、小は5合のお米を使います」と藤松紅木(ふじまつこうき)さん。

もろぶたの角を見ると、職人の技がよくわかる
手で酢飯を押して表面をきれいにする

まずは酢飯作りから。

「使うお米は白石のお米。それにもち米を1割ほど入れてちょっとかために炊き上げます。いい味になるように昆布も一緒に炊きますね。炊きたてのごはんに寿司酢を入れて、『混ぜしゃもじ』で混ぜていきます。寿司酢は、酢、塩、砂糖などで作り、半日ほどねかせたものです。
自家製の“混ぜしゃもじ”は、元々はもっと角張っていたが、8年くらい使って丸くなった部分もあるのだそう。
「このほうが力が入りやすくて使いやすいですね」。

特製ものさしを目安にして等分する

寿司酢の甘い香りが漂う中、もろぶたにごはんを敷き詰めていく。寿司酢を表面にまいて卓球のラケットのような自家製“切りしゃもじ”で表面をなぞると、ツヤが出てくる。ごはんをきれいに敷き詰めたら、木製の特製ものさしを目安にして、再び “切りしゃもじ”を使い等分する。そして、具材を順番にのせていく。

  • (1)自家製奈良漬け-1年半から2年ねかせたもの。3粒ずつくらい
  • (2)ささがきゴボウ-砂糖、醤油、みりんで味付けしたもの
  • (3)椎茸-刻んで甘辛く炊いたもの
  • (4)錦糸卵
具材を1種類ずつのせていく。刻んだ奈良漬けは3粒ずつくらい

ここまででも彩りは随分ときれいなのだが、「まだきれいになるよ〜」と藤松さん。

  • (5)カマボコ
  • (6)エビ-皮をむいて醤油で炊く
  • (7)むつごろう-素焼きしたものを、砂糖、醤油、みりん、水飴などで1時間ほど炊いて甘辛くしたもの
  • (8)紅しょうが
  • (9)デンブ

具材は9種類あるが、むつごろうとエビはどちらか1つなので、等分された須古寿司にのる具材は8種類というわけだ。できあがった須古寿司は、黄、ピンク、緑…色とりどりで鮮やかだ。
「1つずつの須古寿司は田んぼを表していると言われています。錦糸卵は丸い形にしていますが、これは満月を表しているとも言われています。山の上から見た田毎の月(たごとのつき)ということなのでしょうね」。

徐々に色鮮やかになる須古寿司

もちもちとした酢飯はほどよい甘酸っぱさ。その中にあるピリッ、コリッとした紅しょうがの食感や奈良漬けの塩味が際立つ。ゴボウ、シイタケ、デンブ、香ばしくもあるむつごろうは、酢飯より甘く食感もそれぞれに異なるところがおもしろい。酢飯のやわらかい甘味の上に、塩味やより甘いものが合わさっているバランスが絶妙だ。

小さい頃にも家で須古寿司作りの手伝いをしていた藤松さんは、当時、紅しょうがをかける役目だったのだそうだ。
「ちょっとしか手伝えなかったので、もっといろいろできるようになりたいなぁと、いつも思ってました。今ではいやというほど作っていますが(笑)」。
そんな藤松さんは、現在、子どもたちに作り方を教えることも多いのだそうだ。
「自分でもいつも思っていることなのですが、子どもたちにも『きれいで美味しくつくれるようにがんばろう!!』と言っています。大切な伝統を伝えていきたいですね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

酢飯

白石のお米にもち米を1割ほど入れ、昆布と一緒にしてかために炊く。炊きたてのごはんを、酢、塩、砂糖を入れ半日ねかせた寿司酢と一緒にまぜる

具材

自家製奈良漬け、ささがきゴボウ、椎茸、錦糸卵、カマボコ、エビかむつごろうの甘露煮、紅しょうが、デンブ。全体的に甘い味付けの中、奈良漬けの塩味が光る

盛りつけ方

全体的に真ん中が高くなるように盛りつけ、紅しょうがやデンブなどは外側に置く。そして、盛り上がった中心部分には、錦糸卵を丸い形に置いて満月を象る

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かどや きれいで美味しい須古寿司を目指して…

『もろぶた』で作られる須古寿司は、小(15コ)、中(21コ)、大(32コ)の3種類。また、2コ入りのパックもある。須古寿司が店頭に並んでいることもあるが、数が少ないのでまずは電話で予約・確認を。店主・藤松さんは、自らも目指してきた『きれいで美味しい須古寿司』を地元の多くの子どもたちにも伝えている。

『須古寿司』もろぶた小15コ入は2,700円(税込)。中21コ入3,500円(税込)、大32コ入4,700円(税込)。写真のサイズより一回り大きい須古寿司が入る弁当タイプ 普通盛(2切れ)450円(税込)、大盛(4切れ)700円(税込)

かどや

住所 佐賀県杵島郡白石町堤628
電話 0952-84-2220
駐車場 あり
※すべて要予約
※記載した内容は2016年3月22日現在のものです。
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