九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

タレ

カツオ出汁、砂糖、塩、おろしショウガ、薄口醤油、ネギを合わせたもの。ショウガの味を効かせるのが美味しくつくるコツとのこと

鶏肉と下ごしらえ

鶏モモ肉の皮をはぎ、脂の部分を取り除く。筋切りをした後、タレが染み込みやすくするため、箸で鶏モモ肉をつつく

揚げ方

表面についているネギとショウガを包丁で落とし、片栗粉をまぶす。170度ほどの油でじっくり揚げた後、食べやすい大きさに切る

語り 割烹とし 佐藤虓治の「ゴーレン」

佐藤虓治さん

昭和38年から料理の道を歩み始めたご主人・佐藤虓治さとうこうじさん。長崎の老舗料亭『富貴楼(ふうきろう)』での板長を経て、昭和53年に『割烹とし』を開店した。長崎の食材を使って作るのは、長崎の伝統を受け継ぐ卓袱料理や会席料理の数々。卓袱料理の一品として『ゴーレン』が提供されることもあるし、お願いすれば単品として作っていただくこともできる。「『ゴーレン』は『富貴楼』にいた時に覚えた料理ですね」。

佐藤さんが守る『ゴーレン』の丁寧な作り方を教えていただいた。
「白身魚を使う『ゴーレン』もあるのですが、鶏モモ肉を使うことが多いですね。やわらかい肉じゃないといけません。皮をはいで、脂の部分をきれいに取り除きます。皮があると揚げた時にふくらんでしまうし、脂は独特な匂いがする部分なのです。食べやすいように筋切りをした後、箸で鶏モモ肉をつつきます。タレに漬けた時、タレが鶏モモ肉に染み込みやすくするためなんですよ」。

鶏モモ肉の皮をはぎ、脂を切り取る
筋切りした後、タレを染み込みやすくするため、鶏モモ肉を箸でつつく

タレはカツオ出汁、砂糖、塩、おろしショウガ、薄口醤油、ネギを合わせたものだ。 「ショウガの味を効かせるのが美味しく作るコツですね」

カツオ出汁、砂糖、塩、おろしショウガ、薄口醤油、ネギを合わせ、タレを作る

鶏モモ肉はタレに一昼夜漬けておく。 「『ゴーレン』は前日から準備が必要な料理なんですよ。時間がかかりますね(笑)。

鶏モモ肉をタレに一昼夜漬けておく

タレから取り出した鶏モモ肉は、表面についているネギとショウガを包丁で落とします。残っていると、油に入れた時にそこが先に焦げてしまうんです」。表面の水分をふきとった後、片栗粉をまぶし、油に入れる。

肉の表面のショウガとネギを包丁で落とし、片栗粉をまぶす

「170度ほどの油でじっくり揚げていきます。180度だと表面が焦げて中には火が通っていないという状態になりますね。ちなみに、(衣の材料に砂糖も使われていて)衣が甘い『長崎天ぷら』はもっと焦げやすいので160度くらいで揚げますね」。

170度ほどの油でじっくりと揚げる。揚げ時間は肉の厚みによって変わる

調理場にパチパチといい音が響き、ほどなく油からこんがりと揚がった鶏モモ肉を取り出す。 「すぐに切ると断面がくっついてしまうんですよ。だから、『ゴーレン』は少し冷ましてから切り、盛りつけるのです」。
ころあいをみて1枚の鶏モモ肉は食べやすい大きさに切り分けられる。
「祝いの席で食べる『卓袱料理』は、縁起のいい3、5、7といった奇数をよく使います。だから、『ゴーレン』も奇数に切り分けるんですよ(笑)」。 できあがった『ゴーレン』を口にするとショウガの香りが広がり、少し甘めの味付けに箸がすすむ。

少し冷ましてから食べやすい大きさに切る

「長崎の味付けは甘いものが多いですね。昔の味付けはもっと甘かったんですよ。『ゴーレン』のタレも、昔に比べれば砂糖の量を1/3は減らしています。それから、今は『ゴーレン』を揚げる油は白絞油(しらしめゆ/菜種油を精製した油)ですが、昔はゴマ油3:白絞油7という割合でブレンドしたものだったんですよ。だから昔と味は変わっていますよね。昔の料理は昔と同じように作ると、通用しないものもありますね。現代は海外の料理も入ってきているわけですから。料理人の自分がお金を出してでも食べたいと思うものを作らないとだめですよね(笑)」。

料理人歴が半世紀を超えている佐藤さんだが、チャレンジ精神はずっと変わらない。『ざぼん』や長崎ならではの柑橘である『ゆうこう』を使った自家製ポン酢『龍の泪』は、2013年からiTQi(国際味覚審査機構)5年連続受賞している。また、人気メニュー『長崎しんじょう』は、生クリーム、牛乳などを使った和食の域にとどまらない一品。そして、今も新しい料理を試作されているとのことだ。

卓袱料理の一品として出すこともある『ゴーレン』だが、知らない人が多くなってきたことを感じるとのこと。「『ゴーレン』は昔の人しか知らなくなってきたようです。昔から卓袱料理のメニューとして脈々と続いており、店に問合せもありますが、作れる料理人も少なくなってしまいました。私自身も伝えていきたいと考えていますし、もっと長崎で『ゴーレン』を盛り上げていかないといけませんね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

タレ

カツオ出汁、砂糖、塩、おろしショウガ、薄口醤油、ネギを合わせたもの。ショウガの味を効かせるのが美味しくつくるコツとのこと

鶏肉と下ごしらえ

鶏モモ肉の皮をはぎ、脂の部分を取り除く。筋切りをした後、タレが染み込みやすくするため、箸で鶏モモ肉をつつく

揚げ方

表面についているネギとショウガを包丁で落とし、片栗粉をまぶす。170度ほどの油でじっくり揚げた後、食べやすい大きさに切る

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割烹とし 長崎の伝統を受け継ぐ数々の料理を

この道50年以上のご主人・佐藤虓治さんが長崎の食材を使って作るのは、長崎の伝統を受け継ぐ卓袱料理や会席料理の数々。『ゴーレン』は、鷄モモ肉1枚を丁寧に下ごしらえした後、タレに一昼夜漬け込み、片栗粉をまぶして揚げる。縁起がいいと言われる奇数になるように切ってできあがり。長崎の『ざぼん』や『ゆうこう』を使った自家製ポン酢『龍の泪』も自慢の品だ。

『ゴーレン』1人前756円(写真は2人前)
『長崎真丈(アナゴ入)』756円。魚のすり身、卵白、粉チーズ、山芋、生クリーム、牛乳などを使った一品。エビ入りもある
『ざぼん』や『ゆうこう』を使った自家製ポン酢『龍の泪』で食べる『酢の物盛り合わせ』1,296円。鯨のおば、イカ、ブリの胃袋、ブリの肝、マテ貝、ワカメがつく
1階は個室にもなる小上がり。2〜3階はゆっくり座れる座敷だ
長崎伝統の果物『ざぼん』と『ゆうこう』を使い、砂糖、ミリンなどの甘味を一切使わないで作ったポン酢『龍の泪』。2013年国際味覚審査機構(iTQi)により最高三ツ星を日本で初めて受賞し、世界に認められたポン酢。各1,260円(320ml)。地方発送も可能(送料別)

割烹とし

住所 長崎市中町5-22
電話 095-825-4452
営業 11:30〜OS13:30/17:30〜OS21:00
休み 日祝日
67席
カード
駐車場 なし
URL https://kappoutoshi.com/
※記載した内容は2018年4月20日現在のものです。
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お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧

自家製ポン酢『龍の泪』や長崎角煮『琥珀』などは取寄せ可能