九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

ゆで方

白根の部分を先にゆで、葉の部分はさっとゆでる。葉の中は空洞なので、その中にある空気を抜くことも必要

巻き方

白根から数cmのところを折り、白根を軸にして葉の部分をくるくるとまきつける。『ひともじのぐるぐる』という名前の由来だ

作り方

味噌をベースに酢、砂糖、塩、ミリン、カラシなどを合わせて作る。味わいの違いは使う味噌の種類によっても異なるようだ

語り くまもと・旬膳料理 水前寺羅生門 濱田眞穂の「ひともじのぐるぐる」

濱田眞穂さん

「幼稚園の時から料理人をやろうと思っていたんです(笑)」という熊本出身の濱田眞穂さん。小さい頃、『ひともじのぐるぐる』を食べていた事を覚えていらっしゃるとのこと。
「小さい頃から姿と味は知っていましたが、その時は『これ一体何だろう?』と思ってました。小学生の時に両親の仕事の都合で熊本を離れ、その後、京都で料理の修行をして熊本に帰ってきました。帰ってきてから、小さい時に食べたあの料理が『ひともじのぐるぐるだったんだ』と記憶と味が結びついたんです。小さい頃はあまり美味しいとは思っていませんでしたが、お酒を飲むようになってからは、美味しいと思うようになりましたね(笑)」。

料理人として『ひともじのぐるぐる』を改めて見た時にどう感じたかを尋ねてみると、
「『ぬた和え』という料理がありますが、『ぬた和え』はゆでたネギを酢味噌で和えたもの。『ひともじのぐるぐる』は、ゆでた『ひともじ』に酢味噌を和えないで上からかけるというところが違いますね。こういう食べ方もあるのだなと思いましたよ。和えてしまうと水気が出やすくなりますから、『ひともじ』の食感がより感じられる料理だと思います。形としては『ひともじ』を巻いただけなんですがくるくると巻くところはおもしろいですね。初めて目にして、「えっ?こんなものなんだ」と思われるお客様も多いようです(笑)。今では、一年中食べることができますが、冬から春先の時期が、身もしまっていますし甘味が増していますね。熊本では桃の節句によく食べられるということを聞いたこともありますよ」。

根を落とし、葉の先端を切る

作り方を見せていただいた。『ひともじ』の根を落とし、葉の先端も少し切り落とし、塩を入れた湯でゆでる。
「葉の中は空洞になっていて空気が入っているので、そのままゆでるとふくれあがってしまうのを防ぐためなんです」。

白根から先にゆで、その後全体をゆでる

火の通りにくい白根の部分を先に湯に入れて火を通した後、全体を湯に入れて葉の部分はさっとゆでる。そして氷水で冷やし水分を切る。
「煮過ぎると繊維がこわれてしまい美味しくなくなってしまいますね。氷水で冷やすのは、鮮やかな緑色を残すためです。水分はしっかり取らないと、水気が出て酢味噌の味もうすくなってしまうから注意が必要です」。

氷水で冷やし、水分をよく取り除く

水気をとった『ひともじ』の根元から4cmくらいのところで折り曲げ、葉の部分をくるくると巻いていく。
「しっかりと巻いていき、最後は結ぶわけではありませんが、ぎゅっと締めます」。

白根の上を折ってまいていく

盛りつけた上にかけられるのは自家製酢味噌。
「酢味噌は、京都の『さくら味噌』がベースです。この味噌は西京味噌と豆味噌をブレンドした京都の伝統的な味噌で、それに酢、砂糖、塩、ミリン、カラシなどを加えて作ります」。

食べやすい一口大の大きさに巻かれた『ひともじのぐるぐる』。きれいに“ぐるぐる”と巻かれている。カラシも効いていて歯応えも味わいも鮮やかだ。
「素材が新鮮なうちにゆでて、巻いていますので、よくかんで『ひともじ』の甘さを味わっていただきたいですね」。

酢味噌をかけて完成

素材、丁寧な技、さらにこちらの料理には『水』が関係しているとのこと。
「地下水を使っていますが、とにかくここは水がいいんです。庭の池の水も湧水ですよ。出汁もごはんも、水で味が変わりますから。『ひともじのぐるぐる』もゆでる仕事がありますからね。熊本の素材を料理するのに、熊本の水を使えるというのは本当に素晴らしいですね。そんな熊本の味を守っていかなければならないと思っていますし、県外の方にももっと知っていただきたいと思います。さらに、『また食べたい』と思っていただけるようにがんばります!!(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

ゆで方

葉の先端を少し切り落とした後、塩を入れた湯で白根の部分から先にゆでる。氷水で冷やしてからしっかりと水分を切る

巻き方

根元から4cmくらいのところで折り曲げ、葉の部分をしっかりと巻いていく。巻き終わりはぎゅっと締めて形を整える

酢味噌

西京味噌と豆味噌をブレンドした京都の伝統的な味噌『さくら味噌』がベース。酢、砂糖、塩、ミリン、カラシなどを加えて作る

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くまもと・旬膳料理 水前寺羅生門 味わいにも空間にも、季節の流れを感じる

水前寺公園に隣接しており、樹々や花が四季折々の姿を見せる自然豊かな庭園を見ながら、落ち着いた和の空間で食事を楽しめる。熊本の旬の素材を使った『水前寺小箱』2100円、『会席料理』5250円〜などの料理からも、四季の移ろいを感じることができる。また、『ひともじのぐるぐる』『馬刺』『辛子蓮根』といった熊本の郷土料理もそろう。

『ひともじのぐるぐる』420円
『ひともじのぐるぐる』と、『からし蓮根』840円、『馬刺』1575円。季節を感じる料理は、『水前寺小箱』2100円、会席料理5250円〜などで
水をたたえる日本庭園の一部のような建物だ
8人まで対応の個室から80名収容の大広間まで様々なシーンで利用できる

くまもと・旬膳料理 水前寺羅生門

住所 熊本市水前寺公園12-25
電話 096-385-3333
営業 11:30〜14:00/18:00〜OS21:30
150席
休み 不定
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.suizenji-rashomon.com
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