九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

スケトウダラの卵

スケトウダラの卵の質が明太子の味を決めるため、各社とも仕入れには細心の注意を払う

調味液

調味料に含まれる出汁の材料、唐辛子の品種や加工法、隠し味的な調味料などが明太子の味わいの特徴を決定付ける。各社とも詳細は秘密だ

漬け込み方

美味しい明太子を作るため、漬け込み時間、漬け込み室の温度、途中のもみこみなど、各社独自のやり方で行なわれている

語り 福さ屋 松尾来の「博多明太子」

清水工場次長・柴田好人(しばたよしと)さん(左)と取締役製造統括・松尾来(まつおきたる)さん(右)

博多弁のCM「食べんとわからん、わからん。○さ(○の中に「さ」を表記)がピシャっとついとー」でおなじみの『福さ屋』は1977年から明太子の製造をスタートしている。変わらないのは、原料にこだわり、時間と手間をかけて“味わい深い、程よい辛さ”を作ること。福岡市南区の清水工場を訪ねてお話をうかがった。

清水工場には、良質な原卵を仕入れた後、塩漬けされたものが搬入される。「スケトウダラの選別が何よりも大切な部分ですね。スケトウダラは北の海で1〜4月に獲れますが、1月に獲れるものの卵はまだ熟成していません。2〜3月に獲れたものの卵がいいんです。船の設備によっても状態は変わります」。お話してくださるのは取締役製造統括・松尾来さんと清水工場次長・柴田好人さんだ。

「搬入された卵の塩漬けは人の目と手によってさらに選別します。やわらかさ加減は手作業でしかわからないものなのです。選別の統一も大切ですね」。その後、調味液に三昼夜漬けて熟成させる。調味液には『福さ屋』こだわりの材料が使われている。

調合した調味液を攪拌しているところ

「詳しい材料は秘密ですが(笑)、できあがった明太子には、旨味の代表的な成分であるグルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸はすべて入ることになります。唐辛子は辛味もですが、香りが高いものを使っています。それから、イワシを使った魚醤を使用しているのです。イワシを塩とともに漬け込み発酵させたものから出る液体成分で、魚の動物性タンパク質が分解されてできたアミノ酸とペプチドを豊富に含んでいます。旨味であり、隠し味ですね」。

調味液を注ぐ
熟成室で、三昼夜、熟成させる

漬け込みが終わったら、計量、包装。1つ1つ形も重さも違うため、計量や包装も人の手で行なわれている。明太子づくりは人の手に頼る部分が大きいのだ。その後、厳しい品質検査が行なわれる。

計量してパック詰めする

品質検査は、異物混入がないかなどのチェックはもちろん、味の検査も行なわれている。「辛さ、粒子感、やわらかさ、塩味、旨味などを人の舌でチェックしています。私たちの中では『皮、ちょっと厚いね』とか『粒子あるね』といった専門的な会話もありますね(笑)」。そうやって厳しいチェックをパスしたものだけが私たちの食卓に届く。

検査を行ない、包装される

「卵の粒感、唐辛子のピリッと感とほどよい塩味のバランス、魚醤で生まれる味の深みとまろやかさなどを感じていただけるとうれしいですね。この味は少しずつ変化して今にいたっています。昔は保存のためもあって今よりも塩分が多いものでした。今では冷蔵・冷凍技術も発達しましたし、健康志向の方も多いので塩分控えめになっています。また、明太子というと塩分が高いイメージですが、実は1食あたりで考えても塩分はそれほど多くはないんです。さらに、私たちの明太子の塩分は業界内でも少ないほうなのです。ぜひ安心して召し上がっていただきたいですね。日本の米で炊いたごはんは甘いですから、明太子にはよく合いますね。ジャガイモにも合います。もちろん、焼酎にも。芋焼酎のお湯割りと合わせると最高ですね(笑)」。

最近、人気を集めているのが明太子を使った『博多めんたいラスキューブ』。明太子とラスクが出会った新感覚のお菓子だ。明太子の可能性は高く、これからも新しい商品が生まれていきそうだ。しかし、松尾さんと柴田さんをはじめ、工場のみなさんの仕事は変わらない。「明太子のつくり方は変わらないんです。手間と時間をかけて、丁寧に…」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

スケトウダラの卵

厳選したスケトウダラの卵を使う。スケトウダラが獲れる時期、漁船の違いにも気を遣いながら仕入れるとのこと

調味液

辛味とともに香り高い唐辛子、味に深みとまろやかさを与えるイワシの魚醤なども使い、旨味のバランスがとれるように配合

漬け込み方

塩漬けされた原卵を人の手によって選別。品質の良いものだけを調味液に浸し、熟成室で3日ほど熟成させる

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福さ屋 本社売店 隠し味の魚醤でより深い味わいを

博多弁のCM「食べんとわからん、わからん。○さ(○の中に「さ」を表記)がピシャっとついとー」でおなじみ。原卵を手を使ってひと腹ひと腹を確認するなど時間と手間をかけることで、辛さ、旨味、粒子感、やわらかさ、塩味のバランスがとれた“味わい深い、程よい辛さ”をつくり上げている。調味液にイワシを使った魚醤を加えることで、味に深みとまろやかさが生まれる。

家庭用・贈答用といった定番商品をはじめとした各種明太子、明太子を使った各種加工品がラインナップに並ぶ。お菓子にも注目だ
博多駅からすぐの便利な場所にある本社売店

福さ屋 本社売店

住所 福岡市博多区博多駅中央街5-14
電話 092-461-2938
営業 9:00〜17:00
休み なし(1月1・2日のみ休み)
カード
駐車場 なし
URL https://www.fukusaya.info
※記載した内容は2020年2月25日現在のものです。
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