九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

具材

フル以外に、豚肉や豚肉の塩漬け、つけあげや厚揚げ、キャベツやニンジンなどの野菜などが使われる。家庭ごとで変わる

味付け

醤油ベースに砂糖を加えた甘辛い味や味噌味にすることが多い。こちらも各家庭で様々な味付けがある

作り方

まず肉類を炒め、フル以外の具材を炒める。最後にフルを入れて調味料を加え、ほどよく炒めたらできあがりだ

語り 食酒房 旬(くいしんぼう しゅん) 新納ふの江の「フルイキ」

新納ふの江(にいのふのえ)さん

『食酒房 旬』がある大島郡瀬戸内町は奄美大島最南端の街。対岸に見える島は、渥美清さん主演の映画『男はつらいよ』の第48作目のロケ地としても知られている加計呂麻島(かけろまじま)だ。第48作『寅次郎紅の花』はシリーズ最終作(撮影後に渥美清さんは逝去)となるため、“寅さんファン”が今も多く訪れる。「ロケ中に私も渥美さんを見に行ったんですよ!」と元気に迎えてくれるのは女将・新納ふの江さんだ。お客さんが考えてくれたという大切なキャッチフレーズは“旬の食材を旬な手をかけ旬な貴方へお届け”。その言葉通りに、刺身をはじめ奄美の旬を感じられる“今日のおすすめ”料理や、油ぞうめん、味噌漬け、鶏飯丼といった奄美の味が楽しめる。

「奄美で『フルイキ』をよく食べるのは11月末から正月過ぎくらいまでの寒い時期。毎年『フルイキ』を食べ始めると冬が来たって感じなんですよ。でもね、『フルイキ』をうちの店で食べる地元の人はほとんどいませんよ(笑)。お店で食べるものではなく、完全な家庭料理ですからね。フルは庭で植えているようなものですしね。でも食べたいと言ってくだされば作ります!大体11月末から3月いっぱいくらいまではフルがあるので作れますよ」という新納さんに『フルイキ』を作っていただいた。材料はフル、豚の三枚肉、ちきあぎ(つけあげ)だ。フルは白い根元の部分と緑の部分に分けておく。

フルを適当な長さに切る

「まず豚の三枚肉を炒めます。歯ごたえがあったほうがいいからちょっと厚めに切っていますよ。そこにちきあぎとフル(まず白い根元の部分、次に緑色の部分)を加え、醤油とザラメを加えて味付けすれば炒めればできあがりです。ねっ、簡単でしょう?」。

豚の三枚肉を炒め、ちきあぎを入れる
フルを加え、ザラメと醤油で味付けする
ほどよく炒めてできあがり

具材や調味料の量はすべて目分量だ。「これでいい感じになるんですよ(笑)。前にね、奄美の料理の作り方をちゃんと勉強しようと思って、立派な分厚い本を見てみたんですよ。でも、材料の欄にはほとんどの料理で“適量”と書かれていました。材料の種類と手順が書かれているだけでしたね(笑)」。

ニンニクの香りが広がる甘辛い味わい。比較的大ぶりに切られた具材も含め、食べるとほっとする新納さんの『フルイキ』。「塩豚を使うところもあるし、このあたりではちきあぎを入れるのですが厚揚げを入れる地域もあったりするんですよ。キャベツやニンジンを入れたりもします。家庭ごとに具材や味は違いますね。今日は3人前作って盛り付けましたが、家で作る時もたくさん作って大皿に盛り付けますからね。やっぱり『フルイキ』は家庭料理なんです。『フルイキ』以外でフルを使う料理として旬の時期によく作るのは『フルの塩漬け』。お店では、突き出しとして出すこともありますよ」。

『フルイキ』と『フルの塩漬け』

お店に定休日はなく不定休。その理由は…「潮がいい時はトコブシやテラダ(とびんにゃ)などの貝を海に獲りに行くのでお休みです(笑)」。新納さんは訪れる人に奄美の“旬”を感じていただきたいといつも願っている。「(奄美を)楽しみにしてぜひ来てくださいね!」

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

フル、豚の三枚肉、ちきあぎ(つけあげ)。フルは切って根元の白い部分と緑色の部分を分けておく

出汁・味付け

使う調味料はザラメと醤油のみ。奄美でよく食べられる家庭料理ということもあり、シンプルな味つけだ

作り方

まず豚の三枚肉を炒め、ちきあぎ、フルを加えて炒める。ザラメと醤油を加えてほどよく炒めればできあがり

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食酒房 旬(くいしんぼう しゅん) 奄美大島南端の街で食べる島の味

元気な女将・新納ふの江さんが迎えてくれる居酒屋。フル、歯ごたえが残るように厚めに切った豚の三枚肉、ちきあぎ(つけあげ)をザラメと醤油だけで炒めた『フルイキ』はほっとする味わいだ。200円〜の居酒屋メニューに加えて、油ぞうめん、味噌漬け、鶏飯丼といった島料理がそろう。“旬”な食材を使う“今日のおすすめ”も楽しみたい。

『フルイキ』500円(写真は3人前1500円)
『刺身盛(一人前)』1000円
『味噌漬け3種盛』600円。タン、レバー、ティランコ(豚の顔)の3種の味噌漬けのセット
『あしたば天』400円
店内ではシマ唄の生演奏が行なわれることもある
暖簾や看板のデザインに使われている模様はモンステラの葉。花言葉は“思いやり”だ

食酒房 旬(くいしんぼう しゅん)

住所 大島郡瀬戸内町古仁屋大湊5-5上原ビル1F
電話 0997-72-0031
営業 17:00〜OS22:30
休み 不定
30席
カード
駐車場 あり
※記載した内容は2020年1月29日現在のものです。
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