九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

フグの下ごしらえ

フグの皮をはぎ、よく洗って三枚におろした後、一口大のぶつ切りやそぎ切りにしておく

湯引き

湯引きした後、氷水に入れて身を引き締め、水気を切る。湯引きの時間によって表面の色と歯ごたえが変わる

食べ方

ポン酢で食べる。薬味にネギ、もみじおろし、梅肉、おろしニンニク、フクシュ(ニンニクの葉)などが添えられる

語り だるまそば 我那覇信子の「ソーキ汁」

牟田口安信さん

島原城の堀端に続く静かな通りに面する『会席料理 はしもとや』は、和洋折衷の会席料理を提供する完全予約制の店。日々、お客様のことを想い、島原産を中心とした食材に向き合うのは店主・牟田口安信(むたぐち やすのぶ)さんだ。
「お客様にはご利用しづらい部分もあるかと思うのですが、完全予約制にさせていただいているのには理由があります。一切の無駄なく新鮮な素材を仕入れることができますし、一品一品に手間をかけることができます。そして、なによりもお客様に合わせた料理をお届けできるのです。何名かでいらっしゃる時、それはどんな意味をもつ会なのか。お酒はどのくらい召し上がるのか。食べられないものや苦手な食材はおありなのか…。お客様を知ることで、最善を尽くし責任をもったお料理を作らせていただけるのです。大変申し訳ないのですが、当日のご予約では厳しい場合もございます」。
開店から21年。牟田口さんの真摯な仕事に共鳴する方も多く、1年に1度訪れ、その時に次の年の予約をする方もいるそうだ。

『がんばの湯引き』は会席料理の一品として登場する料理。「『がんばの湯引き』と『オコゼの刺身』はよくお出ししている料理ですね(仕入れの都合などにより提供できない場合もある)。島原ではフグを『てっさ(刺身)』よりも湯引きで食べることが多いのですが、特に都会から来られた方は、フグを湯引きにするということに驚かれるようです」。
まだ生きているフグをさばくところから見せていただいた。

生きているナシフグ

「様々なフグを湯引きに使いますが、今日使っているのはナシフグとコモンフグです。頭に包丁を入れると皮がするりとむけます。皮をむいたフグは『ムキフグ』『ムキガンバ』と呼ばれています。血はきれいに洗い流しますが、島原は湧水が豊富なので、昔は湧水で洗っていましたね」。
皮をはがれたフグは三枚におろされ、そぎ切りにされる。

皮をはぎ、三枚におろした後、そぎ切りにする

「長崎ではトラフグよりもお手頃価格の『ムキフグ』の方が中心となります。フグは『てっさ』などで薄切りにして食べることが多いと思いますが、当店では厚切りにした身が好まれています。湯引きも刺身も厚めにしていますね」。
切った身を湯引きするが、湯引きの時間は食べるお客様によって変えているとのこと。
「若い方向きの湯引きは、一瞬だけ湯にくぐらせますが、年齢の高い方向きの湯引きは、中まで熱を通してやわらかくします。湯にあまり通さない湯引きは透き通っていて歯ごたえがしっかりしています。しっかり湯に通した湯引きは見た目が白くやわらかくなります。年齢の高い方はやわらかいほうが食べやすいですからね」。
“お客様のため”という想いは、湯引きのゆで時間にまで表れているのだ。湯引きされた身は氷水で引き締め、水気を切る。

湯引きして、氷水で身を引き締める

『がんばの湯引き』は特製のポン酢で食べるが、薬味として、梅肉、フクシュ、もみじおろしが添えられる。取材ということでゆで時間の短いものと長いものの2種類の湯引きを作っていただいたが、プリプリした身とやわらかい身。食感の違いがよくわかる。

左奥が湯引き時間の短いもの、右手前が湯引き時間の長いもの。色味も食感も異なる

梅肉とニンニクの風味で食べる湯引きは他にはない新鮮な味わいだ。「フクシュはニンニクの葉です。ポン酢だけで食べることもありますが、島原では梅肉とフクシュが湯引きによく使われる薬味ですね。梅肉とフクシュはフグを炊いて作る島原の郷土料理『がね炊き』の材料にも必ず使います。私は小さい頃から湯引きが好きでしたが、『がね炊き』も大好きでした。残った煮汁がにこごりになって、それをごはんにかけて食べると美味しかったですね」。

フグ料理として、『がんばの湯引き』とともに『がね炊き』、『がんばのカルパッチョ』も作っていただいた。まさに和洋折衷。牟田口さんは訪れる方のために、島原の食材を多彩な料理に仕立てている。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

フグの下ごしらえ

頭に包丁を入れて皮をはぐ。三枚におろした後、そぎ切りにする ※写真はナシフグ。トラフグの場合は皮のはぎ方などが異なる

湯切り

お客さんの年齢によって、湯引きの時間を変えて歯ごたえを調整する。氷水で身を引き締めて水気を切る

食べ方

特製のポン酢で食べる。島原ではフクシュと呼ばれているニンニクの葉、梅肉、もみじおろしが薬味として添えられる

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会席料理 はしもとや 堀端に続く通りに面した会席料理の店

島原城の堀端に続く静かな通りに面した店は、和洋折衷の会席料理を提供する完全予約制の店。店主・牟田口安信さんは、訪れる人のことを想いながら島原産を中心とした食材に向き合う。会席料理の一品として食べられる『がんばの湯引き』も、食べる人の年齢や好みにより湯通しの時間を細やかに変えることで、歯ごたえを調整している。

会席料理5400円〜の一品として出されることが多い『がんばの湯引き』
フグを使った島原の郷土料理『がね炊き』 ※会席料理の一品として出されることもある
洋風に仕上げた『がんばのカルパッチョ』 ※会席料理の一品として出されることもある
10800円の会席料理の一部
すべて和室だが、テーブル席も用意されている
落ち着いた佇まいの外観

会席料理 はしもとや

住所 島原市城内3-991
電話 0957-64-0012
営業 11:30〜15:00/17:00〜22:00
※完全予約制
休み 不定
92席
カード
駐車場 あり
URL http://www.hashimotoya07.com/
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