九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

鶏もも肉

骨付きのまま焼く店もあれば、ぶつ切りにしてから焼く店もある。ぶつ切りにする店は、ぶつ切りの大きさにまで気を配っている

味付け

味付けのベースとなるのは塩。作り手が厳選した塩や、特製の炒り塩を使っている。薬味として、ゆず胡椒がつく場合も多い

焼き方

単純に炭火の上の網にのせて焼くわけではない。炭火に鶏の脂を入れることで炎を大きく立ち上げ、一気に焼き上げる

語り みやざき地頭鶏専門店 ぐんけい本店 隠蔵 黒木賢二の「地鶏の炭火焼き」

黒木賢二さん

『ぐんけい』オーナー・黒木賢二さんが『みやざき地鶏』にはじめて出会ったのは1989年、52歳の時。
「当時、宮崎が『みやざき地鶏』に力を入れ始めたということもありましたが、食べてみてとても美味しいと思ったので、店で提供したいと思った一番の理由ですね。宮崎の牛肉などはすでに有名でしたから、自分はこの地鶏をやってみたい。本物の地鶏をやってみたいと思ったんです。俺が『みやざき地鶏』を日本一にしてやると思ってましたね(笑)」。

かくして、『みやざき地鶏』の第1号の販売店として『ぐんけい』はオープンした。
「1日にお客さんが一人という時もありましたが、味を分かってくれるお客さんが日々増えていくのを感じていました。ですから、とある会合で『手応え十分です、日本一を狙います』と言ったんですけど、その時はみんな本気にしませんでしたね(笑)」。

徐々にファンを増やしていった『みやざき地鶏のもも焼き』。2004年に『みやざき地鶏』はさらに改良されて『みやざき地頭鶏』となり、『ぐんけい』でも『みやざき地頭鶏』を使うようになった。『ぐんけい』は『みやざき地頭鶏指定店 第1号』でもある。

切った鶏もも肉に特製炒り塩をまぶす

昔から変わらず一番人気の『みやざき地頭鶏』のもも焼きの作り方を見せていただいた。
「宮崎の地鶏のもも焼きは、骨がついたまま焼くやり方と、あらかじめ切ってから焼くやり方がありますが、うちは切ってから焼いています。1コ12gくらいに切り、塩をふってなじませます」。

もも焼きの味付けはこの塩のみ。黒木さんが手作りする特別なものだ。
「塩は炒り塩ですべて私が作っています。昆布とシイタケの出汁に天然塩を入れて溶かし、煮詰めて炒り上げるんです。大きな中華鍋で作りますが、力仕事なので1度に作るのは5kgほど。週に何度か作っていますね」。

塩だけをなめてみたが、辛さだけではなく甘味と旨味、ふくらみを持つ味わいだ。

厨房には、もも焼き専用の焼き台がある。
「店を始める前は鉄工所での仕事もしていたので、その経験が生かされましたね(笑)。今では、焼く時にヘラを使うところも増えましたが、これは私が考えたやり方なんですよ。焼き台も焼き方も年々進化してきましたね」。

鶏の脂を炭火に入れ、さらに網の上において炎をつくる

網の上にもも肉をのせる前に、火加減の調整が行なわれる。
「炭の状態を見て炭の量を増減して、火加減を調整します。これは身体で感じて覚えるしかないですね。そして、炭の中に鶏の脂を入れますが、この量も、もも肉の脂ののり具合などで変えますから、感覚です。身体で覚えるしかないですね」。

炎の中で焼き上げる

炭の中に鶏の脂を入れると炎が上がる。網の上にも鶏の脂をおき、そこへもも肉をのせ、ヘラを使って炎の中で一気に焼き上げる。

オリジナルの焼き台で、ヘラの幅に合わせたすき間から焼けた肉を鉄皿の上に出すことができる

「目で見て確かめながら焼き、6〜7割方火が通ったところで取り出して鉄皿の上にのせます。その鉄皿を網の上にのせ、しばらく熱して西米良産の柚子こしょうを添えればできあがりです。完全に火が通る前に取り出すのは、食べる時にベストの状態になるようにするためですね」。

鉄皿ごと熱して、柚子こしょうを添える

大きな炎の中での力強い動きは、見るのもおもしろい。
「昔は炭の上で火ばしを使って焼いていました。それは、のどかではあるけどあまりかっこよくない。“めあがり(目立ちたがり)”と言われても、派手にかっこよく焼いたほうがいいですね。やるからにはイメージも大切です(笑)」。

一口いただくと、炭の風味と絶妙な塩味。やわらかくプリプリとした食感が口の中に広がる。
「“やわらかいのにはずむ歯応え”でしょう?。これは私が『みやざき地頭鶏』について、ずっと言い続けている言葉です」。

この旨さの秘密は、『みやざき地頭鶏』の特徴でもあるが、自社農場も持つ黒木さんの鶏に対する情熱によるところも大きい。
「『みやざき地頭鶏』は、1平方メートルあたり2羽までの飼育が限られていたり、出荷するまでの日数がオス120日、メス150日などの規定があります。とは言え、うちも含め40戸以上の農家が飼育していますが、育て方はどこも様々です。エサの質も違うし、愛情の込め方も違います。うちの農場は普通の鶏舎の10倍のお金をかけて作ったものです。水飲み場やえさ場など鶏が喜ぶように配置していますし、エサは無添加の配合飼料を与えています。鶏肉料理を売るからには鶏を育ててみたいと考えたのがきっかけですが、鶏が喜ぶような、鶏の楽園を作ってやりたいと思ったんですよ。鶏になったつもりでどうしたらうれしいかを考えましたね。うちの農場の鶏の顔を見るとニコニコしてますよ(笑)。私は『みやざき地頭鶏』の祖父鶏にあたる『地頭鶏』の原種も育てていますが、声をかけると寄ってくるし、3kg〜4kgもありますが腕にのってきますよ。鶏にも愛情は伝わるし、コミュニケーションもできるんです。やはりいい環境で愛情をかけて育てた鶏は、ストレスもないし、肉質もより良くなると思いますよ」。

尚、農場は消毒もミネラル消毒で化学薬品は一切使われていない。鶏糞は堆肥にして田んぼの肥料に使い、『ぐんけい』で使う米はその田んぼで収穫される有機無農薬米だ。藁は鶏舎に敷く敷物として使われている。今でこそ“循環”という言葉がクローズアップされているが、黒木さんはずっと昔から完全循環を目指しているそうだ。
「規模は小さいかもしれませんが、世界に誇れると思ってます」

『みやざき地鶏』・『みやざき地頭鶏』の炭火焼きの先駆者だった黒木さん。しかし、宮崎の先人たちへの感謝も忘れてはいない。
「地鶏の炭火焼きは、私がゼロから始めたわけではありません。先輩たちが『もも焼き』=『炭火焼き』という食文化を作ってくれていたからこそのものです。今では『みやざき地頭鶏』を出す店も増えましたが、商売は競争相手が沢山いるほうが楽しいですね。みんなで切磋琢磨して、『みやざき地頭鶏』を日本一にしたいと思っていますよ!」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

鶏もも肉

自社農場で無添加の配合飼料を与えて育てた『みやざき地頭鶏』のもも肉を使う。1コ12gの大きさに切っておく

味付け

昆布とシイタケの出汁に天然塩を入れて溶かし、煮詰めて炒り上げる炒り塩。辛さだけではなく甘味と旨味、ふくらみを持つ味わいだ

焼き方

炭火に鶏の脂を入れて炎を上げた後、網の上にも鶏の脂をおく。もも肉をのせ、特製のヘラを使って炎の中で一気に焼き上げる

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みやざき地頭鶏専門店 ぐんけい本店 隠蔵 自家製炒り塩が旨味を引き出すもも焼き

太い大黒柱を中心に作られた店内は迷路のような3階建て。1階では湧き水を利用したせせらぎや、厨房であがる炎を見ながら食事が楽しめ、2・3階は隠れ家気分も楽しめる。自社農場で育てた『みやざき地頭鶏』の『プレミアムもも焼き』は、オリジナルの焼き台を使い大きな炎で一気に焼く。ほのかな甘味を持つ自家製炒り塩がもも肉の旨味を引き立てる。

『プレミアムもも焼き』大400g2,730円。他に、中300g2,100円、小200g1,470円など量を選べる
ふんわりとした食感とタレが美味な『つくね串秘伝のタレ焼き』2本661円
塩加減に焼酎もすすむ『大手羽炙り焼き』2本682円
1階には本物の湧き水が流れる“せせらぎ”がある

みやざき地頭鶏専門店 ぐんけい本店 隠蔵

住所 宮崎市中央通8-12
電話 0985-28-4365
営業 17:00〜24:00(OS23:20)
定休日 不定
96席
カード
駐車場 なし
URL http://www.gunkei.jp
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