九州の味とともに 夏

長崎 生うに丼

壱岐の海が育てた濃厚なうにの旨味を
ごはんと一緒に味わうシンプルな丼

福岡県と対馬の中間に位置する壱岐島は、玄界灘に面し水産資源に恵まれている。漁が解禁となる5月から夏にかけて旬の時期を迎えるうに。海岸では潜水服ではなくカラフルなレオタードを着て海に潜る海女(あま)の姿を見ることができる。生うにを使った丼が『生うに丼』で、海士(あま)と呼ばれる男性の潜り手がよく食べていたという、シンプルかつぜいたくな料理だ。壱岐では『生うにのぼっかけ丼』とも呼ばれていた。

ムラサキウニや、より濃厚な香りと旨味をもつアカウニなどの身(正確には生殖腺で、精巣と卵巣のこと)をごはんの上に丁寧にのせ、刻み海苔やわさびを添えればできあがり。鮮やかな黄金色、口の中に広がるとろりとした食感、濃厚な香りと旨味は新鮮であればこそのもの。特製のタレをかけて食べると、うにの甘みがより引き立つ。また、壱岐の海はカジメと呼ばれる海草が豊かで、うにの餌となっている。それも壱岐ならではの濃厚なうにの味が生まれる理由の一つのようだ。

うにを使う料理として、生うにを米と一緒に出汁で炊き込む『うにめし』、生うにを混ぜた卵焼き『厚焼き』もよく知られている。また、『がぜ』と呼ばれるバフンウニの身をゆでて味噌と合わせた『がぜ味噌』も壱岐に伝わる郷土の味だ。

壱岐のうにについて

ご夫婦でゲストハウス『みなとやゲストハウス』を営む大川香菜(おおかわかな)さんを訪ねた。大川さんは現役の海女(あま)として海に潜り、うに、サザエ、アワビなどを獲っている。

『みなとやゲストハウス』を営む大川香菜さん
大川香菜さん

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■壱岐で獲れるうに
「5月から6月初めはムラサキウニ、その後は9月くらいまでアカウニが獲れます。もう1種、バフンウニも獲れますね。バフンウニ専門で獲る方もいらっしゃいますよ。3種のうには見た目が違うのですぐにわかります。アカウニはムラサキウニよりもトゲが短く、バフンウニは小さくてまるっこい形ですね」。

■うにがいる場所
「うには海草を食べるので、カジメなどの海草が豊富なところにいるうにの身入りがいいです。アカウニと『がぜ(バフンウニ)』は隠れているので岩を動かさないと見つからないんですよ。浅瀬にいることも多く、かがんだくらいの感覚で獲れることもあります。うにの身は、正確には生殖腺(精巣と卵巣のこと。うには雌雄同体のものも多い)と言い、1つのうにに5枚入っています。でも、すべてのうにの中に身が詰まっているわけではなく、せっかく深くまで潜って獲ってもあまり身が入っていないこともあるんです(笑)。うにをひっくり返して裏側の口の部分を見て、口のまわりに海草がついていると、身が入っている確率が高いですね」。

■うにの獲り方
「必要な道具は、『マスク(水中メガネのような潜水用のメガネ)』『フィン(足ヒレ)』『手袋』『うにかぎ』『おけ』ですね。岩場にいるうにを『うにかぎ』で引っかき出し、収穫したものは水面に浮かぶ『おけ』に入れておくんです。それから、壱岐の海女は潜水服ではなくてレオタードを着ています。これは他の地域にはない特徴ですね。レオタードだと体温が下がるので、長い時間潜ることができなくなり、獲る量が自然と制限されるんです。取りすぎないようにするために、先輩海女さんたちが試行錯誤しながら考えついたやり方ですね。昔は普通のレオタードだったのですが、今、壱岐では海女専用のものが売っています。私は主に黒色を使っていますが、カラフルなものもありますよ」。

■壱岐のうにの味
「私は岩手県出身で父が漁師だったこともあり、海に近い暮らしをしていました。大きさは東北のうにの方が大きいですね。味はどちらも美味しいです。一口で言うと東北のうにはすっきりした味、壱岐のうには磯の香りもする濃厚な味といったところでしょうか。うにの種類は同じだと思うのですが、東北のうには昆布を食べていて壱岐のうには海草を食べていることや、海水温度の違いから生まれる違いなのでしょうね」。

■食用以外のうにの利用
「殻などは畑の肥料になっていますよ。今は、仲間と、染料として使う取組みも行なっています。匂いを取り除くのに手間がかかるのですが、“うに染め”はピンクっぽいきれいな色になるんですよ」。

■現在の壱岐の海
「壱岐に来て7年ほどになりますが、最近は海草が少なくなっているように感じています。うにの獲れる量も減ってきています。年によってうにの身入りがよかったり悪かったりもします。豊かな海を私たちも意識して大切にしていかないといけないですね」。豊かな壱岐の海を多くの方に知ってもらうため、大川さん夫妻はゲストハウスを訪れるお客さんに様々なことを伝えている。「お話するより体験していただくのが一番ですね。本当は海の中を見ていただくのがいいのですが、それはなかなか難しいので、生きている魚介を見ていただいたり、触れていただいたり、食べていただいたりしています。うにに関しては、うにかき体験で、獲れたてのうにの味に驚いていただいてます(笑)。壱岐の魅力は魚介も野菜も肉も食材がなんでも豊富なことです。今でも物々交換があって、私たちもおすそわけしたり、おすそわけされたり…。今、お金はかかっていないのに、これまで生きてきた中で一番ぜいたくなごはんを食べていますね(笑)」。

古民家を再生した味わい深い建物だ
古民家を再生した味わい深い建物だ

■みなとやゲストハウス
住所/壱岐市芦辺浦258
電話/0920-40-0190
http://www.minatoya-guesthouse.com

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「生うに丼」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
うに

壱岐で獲れる新鮮なうにを使う。5〜6月はムラサキウニ、6〜10月はより濃厚な味わいのアカウニが獲れる時期だ

タレ

各店、醤油ベースの特製のタレが添えられる。うにの甘みと旨味をより引き出すために作られた『生うに丼』専用だ

作り方・食べ方

丼にごはんをのせ、生うにを丁寧にのせて刻み海苔わさびが添えられる。特製タレを合わせて食べる

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