九州の味とともに 夏

熊本 馬刺し

肉の旨味、脂の甘味、独特の食感…
美しい色合いとともに広がる美味

加藤清正公の時代から、熊本では滋養強壮の源として食べられていたという話もある『馬刺し』。熊本ではスーパーの食肉売場などにも並び、今もよく食べられている郷土の味。熊本以外では、東北地方や長野県、山梨県でも『馬刺し』を食べる習慣があるようだ。馬肉は、高タンパク、低脂肪、低カロリーであることや、鉄分を多く含む食材として、近年注目されている食材でもある。

通常『赤身』と呼ばれるモモ肉など、肉そのものも、やわらかで旨味満点だが、サシ(脂)が入った霜降り肉(主にバラ肉)は、また格別な味わい。肉の旨味と脂の甘味を感じた後、口の中でとろけるようだ。スライスされたタマネギと、おろし生姜、おろしニンニク、ネギなどの薬味、甘めの醤油が、その味をさらに高めてくれる。料理人が切った後は美しい桜色。馬肉を別名『桜肉』と呼ぶ由縁だ。しかし、馬肉は酸化しやすく時間が経つと色が黒くなってしまうので、料理人たちは早く食べることを勧める。

肉にも、様々な部位があり、味わいに違いがあるが、肉以外にも、熊本では珍しい部位を食べられる店が多い。ゴマ油と塩で食べる「サクップルッ」のレバー刺し、「コリコリッ」のコーネ刺し(タテガミの根元の脂肪)など、肉とは違う食感と旨味を持っている。

馬肉

■馬肉
熊本県菊陽町で、牛や馬の飼育から販売までを一貫して行なっている総合食肉商社『フジチク』。小田又幸さんと藤本健さんに『馬肉』のお話をうかがった。

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●馬肉食の歴史
「加藤清正公の時代から食べられていたという話もありますが、昭和30年代から、よく食べるようになったとも聞いています。熊本以外では、信州や東北あたりでも、馬肉はよく食べられていますね。熊本では日頃から食べられていますが、特にお正月に食べる家が多いので、おかげさまで12月は仕事が大変忙しくなります(笑)」。

●馬肉の飼育
「カナダ西部にある契約牧場で生まれ、1年〜1年半ほど育った仔馬を、チャーターした飛行機を使い熊本まで運びます。私たちがカナダまで行き、足が強そうで骨格がしっかりした仔馬を選ぶんですよ。そして、1年〜1年半ほど自社農場で育てます。阿蘇山麓からの風が吹くこの地で、気候、馬の発育や体調に合わせた、独自の飼料を与え、大切に育てます。飼料は長年の経験をもとに改良を加えたもので、詳しくは秘密です(笑)。熊本で過ごす時間が、やわらかくて、きめ細やかな馬肉を作り出すのです。私たちは“仕上げ”という言い方もしますね。約1000頭の馬を育てていますよ」。

●馬肉の銘柄
「牛肉ほど消費量が多くないということもあるのですが、牛のように『黒毛牛』といったような名前で分けてはいませんし、ブランド馬というものもありません。うちでは「ふじ馬さし」という商品名で販売しています。しっかり食べて大きくなった馬が美味しいですね。馬の体重は1トンから1トン300kgくらいの間で、うちでは1トン50kgを目安に育てています。いつか、『阿蘇馬』といったブランド馬を作りたいと思っています」。

●馬肉の加工
「屠殺(とさつ)した馬は、徹底した衛生管理を行なっている工場で、解体、カット、冷凍します(一度冷凍することが定められている)。厚生労働省が定めた細菌基準はもちろん、自社基準値に問題がないことをロットごとに検査しています。鮮度が命ですので、屠殺したら、その日のうちに加工しています」。

●馬肉の栄養分
「馬肉は高タンパク&低カロリーなうえ、鉄分が豊富です。鉄分は、牛肉や豚肉よりも多く含まれていて、特に吸収の良いヘム鉄が多く含まれています。また、カルシウムも牛肉や豚肉の約3倍、さらにグリコーゲンや、血液中のコレステロール値を下げると言われる不飽和脂肪酸(リノール酸やαリノレン酸など)も含まれています。生活習慣病の予防に役立つ食材と言えますね」。

●馬の脂
「馬肉の脂はあっさりしていますので、胃にもたれにくく、旨味を堪能できます。うちでは、サシが多く入った霜降りのものをイメージしやすいように、“大トロ”“中トロ”といった名前をつけています。その“大トロ”は1頭の馬から、よく取れても10kgですから、極上の品ですね。肉以外の部位では、馬のタテガミの部分の皮下脂肪である『コーネ』もよく知られているものです。肉の脂とは違うコリコリとした食感がありますね」。

大切に育てられる馬たち

■フジチク
自社農場で飼育し、自社工場で加工した『馬刺し』、『黒毛和牛』などを販売。直売店(本社、菊陽バイパス店etc.)や通販で購入することもできる。
住所/菊池郡菊陽町久保田727-1
電話/096-232-2919
http://www.fujichiku.jp

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「馬刺し」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
馬肉

肉として使われるのは赤身、霜降りのバラ肉など。熊本ではレバ刺し、コーネ刺しなど珍しいものが食べられる店もある

切り方

馬肉は色が変わりやすいので、各店とも注文が入り、切る直前まで冷やしている。食感がよくなるように、繊維を断つように切る

薬味・醤油

スライスしたタマネギ、ネギ、おろしショウガ、おろしニンニクが添えられる。醤油は甘口かつ濃口の醤油が使われる

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