九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

具材

水や湯で戻した干しダコ(マダコを干したもの)の他、ゴボウ、ヒジキがよく使われる。生のタコが使われることもある

味付け

醤油、みりん、酒、砂糖といった最低限の調味料しか使われていない。干しダコから染みだす旨味を生かしている

作り方

具材を煮込んで味付けしたものをごはんに混ぜ込む作り方と、具材を米と一緒に炊き上げる作り方がある

語り 旅館 風月荘 松本キヨノの「たこめし」

松本キヨノさん

付近には南蛮寺などがありキリシタン文化を偲ばせる有明町の上津浦地区。すぐ前の海から揚がる豊富な魚介を取り扱っているのが『松本鮮魚』。

『松本鮮魚』の生簀にいるマダコと、干しダコ

そして、その直営旅館が『旅館 風月荘』だ。獲れたての海の幸を求めて地元の方々も食事処としてよく利用しているそうだ。

「『たこめし』は今、炊いてるからね」と出迎えてくださったのは女将・松本キヨノさん。厨房に案内していただくと、すでにいい香りが漂い始めていた。
「『たこめし』は、タコやヒジキなどを一緒に煮て味付けしたものをごはんに混ぜる作り方もあるけど、うちはタコ、ゴボウ、ヒジキを米と一緒に炊いてますよ。炊くことでタコもごはんもふっくらします。それに、一緒に炊くとごはんの一粒一粒にタコの旨味がよりしっかり染み込みますからね」。

その作り方は…。
「『たこめし』に使うのは干しダコです。毎年7月くらいになると、このあたりでもタコをたくさん干していますよ。その時の干しダコを、うちでは味が落ちないように冷凍保存して使っています。

『たこめし』にはお湯で戻した干しダコを切ったものを使う

お湯に干しダコを入れて、30分くらい戻してから、小さく刻むんだけど、この段階では結構かたいんですよ。だから刻むのに力が要りますね(笑)。研いだ米に刻んだ干しダコ、ヒジキ、切ったゴボウを加え、水を入れます。酒と天草で作られている薄口醤油などを加えて味付けします。この時に味見して、味が足りなければ調整します。

大きなガス釜で炊く

あとは炊くだけですが、水加減が一番難しいですね。かたいのも美味しくないし、べちゃっとしても美味しくないしね。特に米が変わった時なんかは注意しないといけませんね」。

炊飯器のスイッチを入れ40分ほどで炊きあがり、さらに20分ほど蒸らしてできあがりだ。

炊きあがって蒸らした後、ふたを開けるとまわりにいい香りが漂う

ふたを開けて炊きたての『たこめし』を混ぜると、さらにいい香りが漂う。

よく混ぜる

「下のほうの焦げが、また美味しいですもんね。焦げは炊かないとできませんからね(笑)。」

均一に混ざったら器に盛りつける

タコの香りや旨味が、ごはんの一粒一粒に染み込んでいる。炊きたてなのが、さらに美味しさを倍増させているようだ。
「地元の方々の宴会では、最後に炊きたての『たこめし』を食べていただけるように時間を調整して炊いてます。味を知っている方が初めて食べる方に、『ここのたこめしは旨かっぞ(美味しいんだよ)』と言ってくださったりもします。うれしいことですね」。

『たこめし』は予約が必要な料理だが、単品でも食べることができる。さらにお願いしておけば、その他のタコ料理も食べられる“タコ料理三昧”が味わえる。
「この界隈の店では、タコづくしの『タコ八(タコはち)料理』をやってるところが幾つもありますが、うちでも食べられます。煮たタコをナイフとフォークで食べる『タコステーキ』、珍しい、生きたタコの刺身、タコの天ぷら、豚は入っていないけど、ゆでて刻んだタコと味噌を合えた『豚和え』などいろいろなタコ料理があります。『たこめし』と『タコステーキ』は必ずお付けしていますが、あとは時期によって異なりますね。夏に向けては特にタコが美味しくなる季節です。タコの刺身も本当に美味しいですよ。生のタコは頭をひっくり返して塩でよくもんだりしないといけないので、作るのはちょっと面倒なんですけどね(笑)。メスは夏に向けて、頭に卵も入ってきますね。それも美味しいんです」。

高台にあり、食事をする大広間からも海が見える『旅館 風月荘』。
「小さな街ですが、穏やかな夕日が沈む風景は本当にきれいだと思います」。

風景からも料理からも海の恵みを実感できる場所だ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

天草で獲れたマダコの干しダコ、ゴボウ、ヒジキというシンプルなもの。干しダコは湯で戻してから刻んでおく

味付け

味付けもいたってシンプルで、調味料として酒と薄口醤油が使われている。薄口醤油は上天草で作られているものだ

作り方

研いだ米にすべての具材と酒、醤油を加えて炊き、蒸らした後よく混ぜてできあがり。水加減が一番難しいとのこと

このページを共有・ブックマークする

旅館 風月荘鮮魚店の直営旅館で食べる天草の海の幸

天草で獲れる魚介を取り扱う『松本鮮魚』の直営旅館。旬の魚介を使った『旬刺』など、ボリューム満点の新鮮な魚介をリーズナブルに食べられる。『たこめし』の具材は、干しダコ、ゴボウ、ヒジキ。味付けも薄口醤油と酒だけといたってシンプルだが、具材を米と一緒に炊き上げることで、ふっくらとしたごはん一粒一粒にタコの旨味が染み込む。

味噌汁、小鉢が付く『たこめし』800円。『タコ八料理』は5,000円~ ※いずれも要予約
旬の魚介を使った刺身の盛り合せ『旬刺し』はこのボリュームで700円。ごはんと魚の味噌汁が付いたセットは1,300円 ※要予約
海が見える大広間で食事をすることができる
国道324号線沿いの『松本鮮魚』の奥の高台にある『旅館 風月荘』
※宿泊は1泊2食付き5,775円~

旅館 風月荘

住所 天草市有明町上津浦1309-1
電話 0969-53-1157
営業 ※完全予約制。電話で問合せのこと
20席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.matsumoto-sakanaya.jp/hugetsusou.html
お店情報をプリントする

■お取り寄せ情報
『松本鮮魚』から、魚介類の取寄せは可能。電話で問合せを
電話/0969-53-1155