九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

大豆

呉豆腐の味の決め手となるのは大豆。各店とも厳選した大豆から美味しい豆乳をつくることを心がけている

デンプン

北海道産の馬鈴薯デンプン。葛を使わずデンプンだけを入れてじっくり練ることにより、こちらならではのトロトロ感ともちもち感を引き出す

つくり(練り方)

かつては完全な手づくりだったが、今ではミキサーも導入されている。しかし、重要なポイントでの手作業は欠かせない

語り 高島豆腐店 高島明博の「呉豆腐」

高島明博さん

餅のようにやわらかく、
プリンのような光沢
とろける食感
陶磁の里、ふるさとの味、
呉豆腐

高島豆腐店の代表・高島明博さんが考えた呉豆腐のキャッチコピーだ。
「うちは戦前から始めた豆腐屋で私は三代目。戦前に開業し呉豆腐は戦後からつくり始めました。私が家業をついで5年くらいしてから、『タウン情報さが』さんの取材を受け、それからテレビでも取り上げられ、徐々に広く知られるようになっていきました」。

始めた当初は、常時つくってはいなかったのだという。
「元々は精進料理として家庭でつくっているのが呉豆腐でした。ですから、ふだんいつも食べているものではなかったんです。うちも注文を受けたらつくる、注文がない時はつくらないという感じでした。有田は旧暦でお盆の行事をやりますので7月がお盆。その時だけは寝ないでつくってました。通常も早朝3時からですがその時は24時間営業でしたね(笑)。私の小さい頃は砂糖をかけておやつとしても食べていましたが、今は小さいパックに入れて黒蜜を添えた商品もつくっています。有田陶器市の時など、呉豆腐をおみやげにする方も多いです。精進料理がおみやげやスウィーツにもなったのだから、昔とはずい分と変わりましたね」。

大豆が炊きあがったら、豆乳とおからに分けられる

毎朝仕事が始まるのは朝の3時くらいから。早朝5時。湯気がたちこめる工房の中では大豆のいい香りがしている。
「厳選した大豆を6時間ほど水につけた後、さらに水を加えながら粉砕します。このどろどろになったものを圧力釜で炊いた後、絞って豆乳とおからに分けます。今は豆乳がたくさんとれるように専用の機械を使ってしっかりと絞ってますよ。それでも豆乳は半分、半分はおからになりますね。余談ですが、このおからは佐賀牛の飼料にもなっています」。

溶いたデンプンを投入する

豆乳ににがりを加えれば普通の豆腐だが、呉豆腐に加えるのはデンプンだ。
「鍋に豆乳を入れて沸騰させますが、その間に甘藷デンプンとタピオカデンプンをミックスしたものをボウルに入れて豆乳で溶きます。それを裏ごしして、沸騰した豆乳に加えます。豆乳は一気に沸騰してふきこぼれたりするので、目を離せませんね」。

手作業でも混ぜる

鍋の豆乳はミキサーで混ぜ、練っていくのだが、機械まかせではなく、初めは巨大なしゃもじのような混ぜ棒を使った手作業も行なわれる。混ぜ棒の上下運動が鍋の底を叩くトントンという小気味いいリズム。高島さんは足腰をバネのようにやわらかく使って混ぜ棒を全身で上下させている。すぐに高島さんは汗だくに。

とろみから粘りへとなり完成に近づく

「ラップをBGMにするといいかもしれないですね(笑)。ミキサーの羽をよけながら混ぜているんです。ミキサーだけだと外側は早い流れ、内側は遅い流れなので、徐々にかたまっていく豆乳が、真ん中にたまってダマのようになってしまうんですよ。そうならないようにするため、初めは内側と外側をまぜて均一になるように、混ぜ棒を使って手で混ぜるんです。昔は全て手作業でしたので今の何倍も大変でしたね。」

練りあがったら型の中へ。かたまる前の呉豆腐が入った鍋は約25kgくらいの重さだ(鍋自体は2kgくらい)

もともとは先端が四角い形をしたへらのような形をした混ぜ棒だが、使っていくうちに角は削れてだんだんとまるくなっていく。1年ほど使うと大きさもかなり小さくなるそうだ。ミキサーの羽は樫の木製だが、うまく混ぜることができるように、形状が加工されている。

ある程度冷えてかたまったら切る
呉豆腐には、こんなに弾力がある!!

10分ほど手作業で混ぜ、それからミキサーだけで50分ほど練る。
全体がもちもちとろとろになったら、型に流し込む。表面をへらでならし、ふたをして水槽に沈めて冷やす。
「手間もかかるし、細かいとこもあるし、よそは真似できんでしょうね。たとえ技術的には真似できたとしても力仕事も多くて疲れるし大変だから、やっぱりやらんでしょうね(笑)」。

長年の経験から最適な形にしたミキサーの羽根
使い込んだ混ぜ棒は小さくなってしまう

冷やされて切り分けられた、できたばかりの呉豆腐は本当にプルプルもちもち。
「3日は日持ちしますが、どんどん固くなっていくので、できるだけ早く食べてください」。

その味わいは、高島さん自らが考えた冒頭のキャッチコピーそのものだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

大豆

厳選した大豆を6時間ほど水につけると大きさは3倍にふくれあがる。そこに水を加えながら粉砕して圧力釜で炊き、豆乳をつくる

デンプン

甘藷葛(さつまいもデンプン)とタピオカのデンプンを使用している。じっくり練ることにより、こちらならではのトロトロ感ともちもち感を引き出す

つくり(練り方)

練り初めの10分は、全体が均一になるように、ミキサーの羽根と合わせ、混ぜ棒を使い手作業でも混ぜる

このページを共有・ブックマークする

高島豆腐店甘藷とタピオカのデンプンでもちもち呉豆腐

戦前から有田で豆腐をつくり続けている。豆腐、厚揚げなどのスタンダードな商品に加えて、呉豆腐は戦後まもない頃からつくられ始めた。豆乳に甘藷デンプンとタピオカデンプンをミックスしたものを加え練りあげられる呉豆腐の食感はもちもちだ。黒みつを添えた呉豆腐も販売中で、こちらはおやつ感覚で食べられる。

(上)「ごどうふ」1パック210円。自家製のゴマ醤油タレ付き
(下)170円
『黒みつごどうふ(3コ入)』500円。有田陶器市のシーズンには、有田焼の器に入ったもの(3コ入1800円)も販売される
『豆腐』140円、『豆乳』110円、『厚揚げ』 140円、『かけ醤油×ごまだれ 2本セット』 700円、『おから』1袋30円、「いなり揚げ」1枚25円なども販売されている
工房は国道35号線沿い、『道の駅 黒髪の里』の近くにある

高島豆腐店

住所 西松浦郡有田町岩谷川内2-9-7
電話 0955-43-2463
営業 7:00~17:00
休み なし
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.godoufu.com
お店情報をプリントする

お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧