九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

馬肉

肉として使われるのは赤身、霜降りのバラ肉など。熊本ではレバ刺し、コーネ刺しなど珍しいものが食べられる店もある

切り方

馬肉は色が変わりやすいので、各店とも注文が入り、切る直前まで冷やしている。食感がよくなるように、繊維を断つように切る

薬味・醤油

スライスしたタマネギ、ネギ、おろしショウガ、おろしニンニクが添えられる。醤油は甘口かつ濃口の醤油が使われる

語り 五郎八 離れ 村本一也の「馬刺し」

村本一也さん

『五郎八』本店は、創業65年となる老舗和食店。『五郎八 離れ』は“熊本の魅力をより伝えたい”と5年前に開店した。ビルの5階とは思えない落ち着いた空間では、天草の新鮮な魚介、『馬刺し』をはじめとした熊本ならではの味を食べられる。

カウンター席の内側で料理されている料理長・村本一也さんに『馬刺し』についてのお話をうかがった。
「『馬刺し』は、熊本ではよく食べられていて、特にお正月などには欠かせないものですね。また、『今日は良い日だから食べよう』という方も多いです。戦後から特によく食べるようになったとも聞いています。熊本以外では、青森、福島、長野あたりでも食べられていますね。スーパーなどで売られていて、家庭で食べられているのは赤身の部分が多いようです。馬にはブランドや銘柄というものはなくて、大きさで肉の質が決まりますね。簡単に言うと、軽量馬は赤身が多く、重量馬は脂もよくのっていて、体重が1トン以上の馬のものが美味しいようです。うちでも、脂ののりが良い、そんな馬の肉を取り寄せていますよ」。

きれいな馬肉の塊。手前がカイノミ、奥が特上の三枚バラだ

『三枚バラ』、『カイノミ』、『ネッコ』『上タン』『コーネ』『レバ刺し』を食べられる、『鮮馬刺盛合せ』を作っていただいた。
「『三枚バラ』は、焼き肉で言えば極上カルビの部分で、馬一頭から取れる肉の1%ほどしかない極上のもの。うちでは『世界一』と呼んでいますよ。

表面の脂を取り除く(写真は極上バラ肉)

肉塊の表面についている脂(この脂はスジ煮込みなどに使われる)を落としてからすばやく3mmくらいの厚さに切っていきます。

刺身用に切っていく

馬肉は空気に触れると色が変わりやすいので、卸屋さんから届いた肉塊を下ごしらえする際、表面の脂まで落とさないで、切る直前まで残しているというわけです。赤い『カイノミ』は馬のあばら肉の部分です。熊本で『ネッコ』と呼ぶのは大動脈のこと。長野では『タケノコ』と呼びますし、おもしろいですね。刺身の他、炒めても美味しいですよ。『上タン』は馬の舌の真ん中といいますか、芯の部分です。『コーネ』はちょうどタテガミの下にある脂肪の部分です。

肉の繊維を断つように切っていく(写真はカイノミ)

肉はサシの入り方や繊維の入り方がそれぞれに違いますし、『ネッコ』は大きさや厚みが違います。状態を見ながら切り方は変えていかなければなりません。特に、肉には繊維があるので、繊維を断つように切っていくことが大切ですね」。

ネッコ(大動脈)は5mm厚くらいに切る

タマネギ、ネギ、おろしショウガ、おろしニンニクが添えられて盛りつけられた皿は見た目にも美しい。
「醤油は、甘めのたまり醤油を使っています。『ネッコ』と『コーネ』は、あっさりしているので醤油だけでもいいですね。レバ刺しはゴマ油をかけていますので、そのままどうぞ。その他の部位は、お好みで召し上がってくださいね」。

口の中で脂がとろける『三枚バラ』、ツルっとしてトロリとした『レバ刺し』、コリコリの『ネッコ』、外側はコリコリだが真ん中はやわらかい『上タン』、少しもっちりとした風味もある『コーネ』…様々な旨味と食感が楽しめる。
「部位によって異なる味や食感の違いを楽しんでください。そして、新鮮なものが美味しいです。馬の脂は融点が低いので、時間が経つと、溶けて流れてしまいます。だから、切る直前まで冷やしているのです。そして、馬肉は酸化が早いですから、空気に触れると変色が早くて、色がどんどん変わっていきます。切った瞬間から変わっていきますね。切ると、まず発色してきれいな色になりますが、時間が経つと少し黒ずんでいきます。ですから、お客様にも『早くお召し上がりください!』とお伝えします」。

厨房に立たれている村本さんは、日々、どんな想いでお仕事をされているのだろうか?
「海も山もある熊本は、様々な新鮮な食材が手に入ります。新鮮で素晴らしい食材が届くのは、料理人にとっても、うれしいことですね。『馬刺し』の素材も、美味しい新鮮なものが届きます。また、馬肉はミネラル分が多く、低カロリーで高タンパクという優秀な食材でもあります。上手に料理して多くの方に楽しんでいただきたいと思っています」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

馬肉

体重が1トン以上で脂ののりがいい馬肉を使う。肉以外に、ネッコ(大動脈)、上タン、コーネ(タテガミの下にある脂肪)などもある

切り方

馬肉は色が変わりやすいため、注文があってから表面の脂を取り除き、繊維を断つように切っていく(写真は極上バラ肉)

薬味・醤油

薬味としては、おろしショウガ、おろしニンニク、ネギが添えられる。醤油は、甘めのたまり醤油だ

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五郎八 離れ静かな和の空間で食べる熊本の味

昭和25年開業の老舗和食店『五郎八』の姉妹店で、ビルの5階とは思えない落ち着いた空間。天草の新鮮な魚介料理や熊本の郷土料理がメニューに並ぶ。『鮮馬刺盛合せ』は、極上(バラ肉)、上タン、レバ刺し他、部位の味わいと食感の違いを楽しみたい。馬肉を使ったにぎり寿司や、すき焼きなどのメニューもある。

『鮮馬刺盛合せ』6,300円(3人前)。極上(バラ肉)、カイノミ、コーネ、ネッコ、上タン、レバ刺しが付く
天草天領岩かきなど、地元の旬の素材を活かした料理も味わえる。
しっとりとした空間で熊本の味を楽しめる

五郎八 離れ

住所 熊本市中央区花畑町13-26 第一銀杏ビル5階
電話 096-321-8880
営業 11:30〜14:00(要予約)/16:30〜23:00
休み 不定
120席
カード
駐車場 なし
URL http://gorohachi-hanare.com/
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