九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

馬肉

肉として使われるのは赤身、霜降りのバラ肉など。熊本ではレバ刺し、コーネ刺しなど珍しいものが食べられる店もある

切り方

馬肉は色が変わりやすいので、各店とも注文が入り、切る直前まで冷やしている。食感がよくなるように、繊維を断つように切る

薬味・醤油

スライスしたタマネギ、ネギ、おろしショウガ、おろしニンニクが添えられる。醤油は甘口かつ濃口の醤油が使われる

語り むつ五郎 小山公輔の「馬刺し」

小山公輔さん

『むつ五郎』は昭和48年に開店した馬肉・活魚料理専門店。2代目の店主・小山公輔さんにお話をうかがった。
「開店当初は魚介料理が中心だったのですが、“馬肉の神様”と呼ばれる馬の生産者さんと出会い、“馬肉”というすばらしい食材に出会い、『馬刺し』も出すようになっていったのです。一般的には『馬刺し』と言えば肉の部分を指しますが、肉の部位の違いもありますし、内臓も食べられますし、一口で『馬刺し』と言っても、その範囲は広いですね」。

生の『馬肉』が手に入る頃は、このように干されていた

カウンター席の上には、馬コーネ刺し(タテガミの部分にある脂肪)、馬レバ刺し、馬舌刺し、馬心臓刺し、馬根刺し(大動脈)といった、あまり目にすることのないメニューが書かれた木札が並んでいる。
「どれも馬の内臓などの部位ですね。希少な部位の入手は難しいのですが、うちが大量に仕入れるからこそ手に入るものです。馬1頭の重さは1トンくらいあるのですが、例えばレバーは馬1頭で3kgくらいしか取れませんからね」。

すべて馬バラ肉だが、左から、オビ(霜降りの部分)、バラ厚、本オビ(オビより更に上質な霜降り部分)(カットしたものと塊)

小山さんは、「より上質な馬肉を提供したい」と、卸しを通さずに直接買い付けに行かれるとのこと。
「馬は屠殺(とさつ)場で、屠殺された後、カット場に運ばれて各部位に分けられます。私は、そのカット場に週3回くらい行って、見て触って仕入れています。まわりは肉屋さんがほとんどで、飲食店の人は、ほとんどいませんね(笑)。馬は牛のように“黒毛”などといって分けられることはありません。カナダで1年から1年半ほど育てられた後、熊本で半年から1年ほど育てられた3歳くらいまでの馬肉を仕入れています。熊本である程度の期間育てられることで、肉に甘味が出ますし、脂の質が良くなるのです」。

現在、馬肉はマイナス20度で2日間以上冷凍させることが定められている。それを解凍して食べるのだ。
「馬肉が新しいものであることも大切なのですが、冷凍状態での温度の管理、解凍の仕方というのが、とても重要ですね。ここは秘密です(笑)」。

小山さんが冷蔵庫から取り出した馬肉の塊は、とても美しい色合いだ。その肉が素早く切られていく。

繊維を断つように切る。空気に触れると色が変わっていく

「馬肉は筋肉の繊維が多い肉ですので、繊維を断つように切っていきます。肉の状態は馬によって違いますから、微妙に厚みを変えたりもしています。また、さらに食べやすくするように隠し包丁も入れていますよ。そして、馬肉は変色しやすくて、空気に触れるとすぐに色が変わってしまいます。切った馬肉をお出ししたら、『早く食べてくださいよ!』といつも思ってますね(笑)」。

より食べやすいように隠し包丁を入れる

一緒に盛りつけられたタマネギや、おろしショウガ、おろしニンニクの薬味と一緒に『馬刺し』をいただく。微妙に違う食感も楽しめるし、どれもとろけるような美味しさだ。
「通常の『馬刺し』に盛りつけているのは、すべてバラ肉ですが、オビ、バラ厚、本オビという3種類あります。実はバラ肉だけでも細かく分けると6種類あるんですよ。それぞれに微妙に違うサシの入り方や食感を味わっていただけますね。醤油は、いろいろ試してみましたが、熊本の甘めの醤油が一番合いますね。美味しさに加えて、『馬刺し』は低カロリーで高タンパクですから、素晴らしい食材です。私は家がお店をやっていたこともあって、1歳くらいから食べていたんじゃないでしょうか。元気です(笑)」。

取り出すのも面倒であり、1頭から取れる量も少ない、とても珍しい“馬脳みそ”もいただいた。甘辛く煮付けられており、白子よりも、ふわりとやわらかい不思議な食感だ。
「うちの店に来てくださる方は7〜8割は県外の方で、みなさん『馬刺し』を食べられます。脳みそとか、背のり(脊髄)といった珍しい部位も、話のタネにもなるし、頼まれる方が多いですね」。

きれいな色合いから、別名“桜肉”と呼ばれる馬肉。『むつ五郎』の店内にあるカウンター、テーブル、イス、柱にも桜の木が使われている。さらにお皿にも桜の模様…馬料理三昧を五感で楽しめるお店だ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

馬肉

「より上質な馬肉を提供したい」と、卸しを通さず、店主自らカット工場で仕入れる。肉に加えて希少な部位もメニューに並ぶ

切り方

丁寧な解凍がなされた肉を繊維を断つように切る。肉の状態により厚みを変えることも。食べやすくするために隠し包丁も入れる

薬味・醤油

タマネギ、おろしショウガ、おろしニンニクが付く。醤油は熊本で作られている甘めの醤油が添えられる

このページを共有・ブックマークする

むつ五郎昭和48年創業の馬肉・活魚料理専門店

店主が自ら買付けに行く馬肉を使った最上級の『馬刺し』をはじめ、30種類以上の馬肉料理がそろう。あまり目にすることのない馬舌刺し、馬心臓刺し、馬根刺し(大動脈)などが食べられるのも、こちらならではだ。その他、天草で獲れる魚介や、『カラシレンコン』『一文字のぐるぐる』といった熊本の郷土料理も味わえる。

『馬刺し』1人前2,200円(写真は2人前で4,400円)。3種類のバラ肉が味わえる
『馬脳みそ』800円。馬肉などと一緒に甘辛く煮付けられている。不思議な食感だ
カウンター、テーブル、イス、柱などに桜の木が使われている店内

むつ五郎

住所 熊本市花畑町12-11 熊本グリーンホテル地階
電話 096-356-6256
営業 17:00〜24:00
休み 日曜(月曜祝日の場合、月曜休み)
40席
カード
駐車場 なし
URL http://www.mutugoro.co.jp
お店情報をプリントする

お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧