九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

しめておとなしくした後、お腹の皮のような部分、背中の甲羅、エラの部分などを取り除く。しめ方にもいろいろあるようだ。

味付け

基本的に塩、醤油など最低限の調味料しか使わない。つがにそのものの味わいを引き出し、ごはんに染み込ませるためだ。

炊き方

つがにを生の状態から炊くことが多い。一度外した甲羅の部分にはミソもついているため、一緒に入れて炊く。

語り あかみず 山崎信二の「つがに飯」

山崎信二さん

「唐津は海の魚というイメージがありますが、100年以上前は川魚しか食べていなかったようですよ。海から離れていますし、今みたいに流通も発達していませんでしたからね。鯉、鮎、うなぎ…私の祖父にあたる二代目は、ごつい自転車で後ろに水槽をのせて、近くに買い付けに行ってましたよ(笑)」。
『あかみず』は、鯉料理を中心とした川魚料理を食べられる創業明治30年の老舗。四代目・山崎信二さんは小さい頃の川の様子とつがにの思い出もお話してくださった。
「目の前に国道パイパスができてからはずい分と様変わりしましたが、私の子どもの頃は、このあたりには、松浦川から分かれた小さな川がいっぱいありましたね。そこにもつがにがいて、自分たちで捕まえたのをゆでてもらい、おやつ代わりにしてたんです(笑)。かにごはんにしたり、煮たり、このあたりではつがにはとてもポピュラーな食べ物でした。小さい頃は他のかには食べたことなかったですし(笑)。風景は変わりましたが、当時も今もつがにの味は変わらないと思いますね」。
松浦川とは唐津湾に注ぐ一級河川。『あかみず』では、この川で獲れるつがにの他、九州各地からもつがにを取り寄せている。

がさごそと動き回る生きたつがに

「ここ松浦川で獲れたつがにも使いますし、近くの七山(ななやま)のものも使いますし、長崎など他県から仕入れたりもします。佐世保あたりの川ではつがにがたくさん獲れるのですが、食べる習慣がないみたいですよ。天然もののつがには9月から3月くらいまでが食べられる時期です。初めはオスが美味しくて、11月から1月はメスが美味しくて、その後はまたオスが美味しくなります。気温や水温で味が変わるようで、水の温度が高過ぎると、身に締まりがないようです。うちでは仕入れたつがにを料理するまで生け簀で生かしていますが、エサとして煮たカボチャを与えると、ミソがより黄色く美味しくなるようですね」。

つがにのお腹の皮のような部分と、背中の甲羅を取る

つがにを米と一緒に炊き上げる『つがに飯』は、“とてもシンプルな料理”なのだという。
「生きているつがにのおなかのところを取り、甲羅を取り、半分に割ってエラを取り、ツメを取ります。半分に割ったものと甲羅を米と一緒に炊き上げる。それだけなんです。味付けに使うのは、薄口醤油、塩、あっさりとした昆布出汁。味付けを濃くするとせっかくのつがにの味がわからなくなってしまいますから。独特のコクがある濃厚な味を味わっていただきたいですね。料理はいかに単純にやるかってことですよね。素材が良ければ変にいじくらなくてもいいんです。素材の味を生かすことに勝るものはありません。姿煮をする時も、同じように塩と薄口醤油を使った味付けですね」。

裂いて二つに分け、ツメも取る

つがに飯を通常炊く時は最低米5合を使う。その中にオスとメス合わせて5~6匹のつがにが入る。
「オスのほうが大きいのですが、ミソがたっぷりと入っているのはメスです。身を食べるならオス、みそを食べるならメスといったところでしょうか。どちらも美味しいですが(笑)」。

味付けはつがにの状態などで塩味を変える

おひつに入れられて運ばれてくるつがに飯。ふたを開けると、かにのいい香りが漂う。一口いただくだけでも、口の中いっぱいにかにの風味が広がる。ごはんにかにの旨味がしっかりと入り込んでいるのだ。

おひつのふたを開けると濃厚な香りが漂う

「つがにを丸ごと使って出汁をとり、それをごはんに染み込ませているという料理ですね。海のかにとは違う、濃い味の川かにだからこそできる料理でもあります」。
大きな釜で炊くつがに飯とは別に、一人前用の小さな釜で炊く釜飯タイプのつがに飯もあり、こちらはつがにが一匹入っている。つがにも残さず食べようと四苦八苦。食べ方を尋ねてみたが
「上手な食べ方というのはないですね(笑)。ゆっくりどうぞ」。

つがには上海かにの仲間で形もよく似ている。店に訪れる中国の方も、姿を見て上海かにだと思うとのこと。そして、彼らの味の評価は…
「上海かによりも美味しいとよく言っていただけますよ。それは、つがにが暮らしている九州の川の影響が大きいのだと思います。つがにが暮らす九州の川はきれいですし、清流にいるつがにがより美味しいですね。保護色と言いますか、外敵から見えにくくするために身体の色を変えますから、汚れた川では汚れた色になるんです。私たちは、色を見ればどんな川にいたのかわかりますよ」。
また、上海かには養殖もされているが、日本ではつがには養殖されておらず、すべて天然ものとのこと。つがに料理の味わいは、九州の自然があってこそのものなのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

生きているつがにのおなかのところを取り、甲羅を取り、半分に割ってからエラを取り、ツメを取る

味付け

使う調味料類は、薄口醤油、塩、あっさりとした昆布出汁。つがにが持つ濃厚な味わいを引き出すため、濃い味付けにはしない

炊き方

半分に割ったつがにと甲羅を米と一緒に炊き上げる。炊きあがったつがに飯はおひつの中にいれることで、長い時間美味しく食べられる

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あかみず 創業明治30年。川魚の美味しさを伝える店

「高たんぱくで栄養価が高い、本当の川魚を味わっていただきたいですね」と言う四代目・山崎信二さんが、初代からの味を守る。自慢の鯉料理に使う鯉は、2カ月間エサを与えず清水にさらすことで余分な脂が落ちて身が締まっている上に、まったく臭みがない。その他、ウナギ、鮎、ヤマメ、つがにを使った料理も、何世代にも渡って愛されている味だ。

写真は米5合で炊いた『蟹めし』。単品は茶碗一杯の単品は550円
米1合につがに1匹が入った『かに釜飯』1300円。小さな釜の入ったものを目の前で炊くスタイルだ
自家製酢みそと柚子こしょうでいただく『鯉の洗い』(写真は2人前)は、『鯉定食』1人前2400円に付く料理。『鯉定食』には、付け出し、刺身、鯉こく、香の物、ごはんも付く
『うなぎのせいろ蒸し』1400円。かば焼きのタレとごはんにまぶすタレは違う味で、さっぱりとした味わいに仕上げている
写真は1階の部屋。8つの個室に大広間などもある
国道202号バイパス沿いだが、緑に囲まれている

あかみず

住所 唐津市鏡赤水4763
電話 0955-77-1802
営業 11:00~21:00
休み 不定
200席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.akamizu-since1897.com/
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