2022.07.12

クラフトビールのリニューアル。追い求めたのは霧島酒造らしさだった。

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KIRISHIMA BEERはまだ完成していない。
ブルワーが目指す「焼酎のスパイス役」とは。

霧島酒造は、2016年に100周年を迎えた。その記念すべき節目の取り組みの一つとして発足したのが、KIRISHIMA BEER(1998年の発売時の名称は「霧島ビール」)のリニューアルプロジェクトだ。焼酎メーカーでありながら、ビールのクオリティーも妥協しない。そのミッションを課せられたのが佐藤康徳、髙橋太輔、中島一喜だった。

「クラフトビールの市場は変化の波が次々に押し寄せてくる市場です。だから、まずは自分たちが、どんなビールをスタンダードとして造っていくのかを考えないといけないと思ったんです」
髙橋は、まず他社のビールの研究から始めたことを語ってくれた。

新しいスタイルや味わいを学ぶために、県外のイベントやセミナーに参加。いろいろなブルワー(造り手)とも出会い、新しい情報や技術を吸収した。日本に限らず、海外のビールも取り寄せて、とにかく味わいや喉越しなどを分析したそうだ。
研究を続ける中で、クラフトビールの魅力はその多様性だと気づいた。
「独自の評価軸をつくり、他社と自社の商品をプロットしてみました。すると自分たちの商品は、一直線に並びがちだったのに気づいたんです」
佐藤は、苦笑いをしながら語ってくれた。
でも、視覚化したことが結果的に良かったとも言う。自分たちに足りないピースを認識し、それを埋めていくことを意識すると、自然と考えるべきことや、やるべきことが決まっていった。

一方で、霧島酒造らしさをどう付加していくかも重要だった。中途半端なクオリティーでは、焼酎のブランドにも悪影響を及ぼしてしまう。
「社長をはじめとした経営層とも議論を重ねる中で、自然と浮かんできたのが‘ 焼酎のスパイス役’という言葉でした」と高橋は語る。
霧島酒造のお客様は、焼酎だけを飲むわけではない。当然、ビールを嗜む人も多いはずだ。その方々に、焼酎だけでは伝えられない霧島酒造の魅力を感じてもらいたい。それこそが、リニューアルをする意味であり、霧島ブランドにおけるKIRISHIMA BEERの役割となっていくに違いない。
「焼酎のスパイス役」という言葉を柱に据え、リニューアルプロジェクトはさらに加速した。

ホップや酵母の選定、配合バランスの試行錯誤、発酵プロセスの検証・・・。さらに、霧島酒造らしさを追求する中で、ストーリー性を付与する役割を大きく担ったのがラベルデザインとキャッチコピーだ。
ラベルデザインは、KIRISHIMA BEERの世界観が伝わるものでなければならない。
辿りついたキーワードは、「霧島酒造が育まれた‘地’」だった。
朝焼けに浮かぶ霧島連山、山にかかる霧、山麗の豊かな森、火山灰でできたシラス台地に、霧島裂罅水という要素を取り入れた。
ラベル上部には霧島山をシンボルとしたデザイン、下部には、ビールをグラスに注いだ時にできるフロスティミストをグラデーションで表した。
完成したデザインは地域色豊かな表現で、細部までこだわりぬいたものとなった。

キャッチコピーは、「霧島山が育んだ、美しい水のきれいなビール」とした。
焼酎もビールも大部分は水。
KIRISHIMA BEERのきれいなおいしさは、柔らかく澄みきった味わいの霧島裂罅水だからこそ生まれるものだと考え、このキャッチコピーに至ったという。

2017年4月、リニューアルプロジェクトはゴールを迎えた。
当時を思い出しながら、「クラフトビールの世界における存在感はわかりませんが、霧島酒造という製造元の個性が十分に感じられるビールだと考えています」と佐藤は胸を張る。
「商品構成を一新した事で、幅広いユーザーへのアプローチが出来るようになりました」と髙橋も太鼓判を押す。
苦労の末に導き出した答えだからこその自信が表情や語り口調から十分に伝わってきた。

リニューアルしたKIRISHIMA BEERは、数々の国際的なコンペティションで入賞を果たすなど第三者からも評価され、根強いファンを生み出している。
決して大掛かりなプロモーションができるわけではないが、全国各地のビールイベントなどに参加すると、それを聞きつけて訪れる人もいるようだ。

KIRISHIMA BEERはこれで完成形かと問うと、皆、首を横にふる。
「追い求める理想の味やレベルはずっと上がるもので、この先も追いつかない」と髙橋は言う。
中島も「製造工程を改善してより長く品質を維持したり、過去に販売したスタイルをより美味しいものにしたりする構想もあります。これまで私たちがベンチマークを探していた側ですが、今後はKIRISHIMA BEERがベンチマークとされることを目指して様々な活動に積極的に取り組みたいと考えています」と意気込む。
KIRISHIMA BEERに、いまも季節ごとに新しいラインアップが限定商品として登場するのは、その意志の現れなのだろう。
焼酎メーカーが造ったクラフトビールが会社や世の中を少しずつ元気にしていく。
KIRISHIMA BEERは、今や霧島酒造の可能性の拡大に欠かせないスパイスとなりつつある。

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