冬は虫であり、夏は草となる。そう考えられていた不思議な生物がいます。その名も「冬虫夏草（トウチュウカソウ）」。昆虫に寄生することで、体内の養分を吸収して大きく成長するキノコの仲間です。東アジアを中心に世界各地に分布しており、学名のないものも含めると800〜1,000種は存在すると考えられています。古来より神秘の素材は人々を魅了し、西暦約800年ごろから珍重され、健康維持に役立つとされてきました。

冬虫夏草に秘める力に注目し、向かったのは韓国・江原大学(カンウォンダイガク)。冬虫夏草研究の世界的権威である成載模（ソン・ジェモ）氏と、金泰雄（キム・テウン）氏に会いに行きました。お二人は、冬虫夏草の成分についてこう語ります。「2005年に冬虫夏草類のサナギタケから『ミリタリン』と命名した新しい物質を発見しました。これは、冬虫夏草の成分として知られる『コルジセピン』よりも多くの効果が期待できると考えています」。コルジセピンとミリタリンを含むサナギタケに、霧島酒造は新たな可能性を見出しました。

かつて中国では、秦の始皇帝や楊貴妃も愛用していたと言われている冬虫夏草。人々の健康維持を支えることは古くから知られていましたが、実際に「コルジセピン」を始めとする含有成分によって、抗がん作用、抗炎症効果、抗アレルギー効果、抗酸化効果など様々な優れた効能があるとされています。

1998年、豊かな水と緑に囲まれた韓国の晴日面（チョンイルミョン）の地に、成氏は冬虫夏草培養工場「株式会社マッシュテック」を設立しました。韓国における環境にやさしい農産物の認証「親環境農産物品質認証」を取得するマッシュテックは、最新のテクノロジーによって安全かつ効率的な冬虫夏草の量産を実現。金霧島で使われている冬虫夏草（サナギタケ）は、昆虫や農薬を使わず、晴日面でつくられた玄米を用いて栽培されています。

全長600km、地球上の淡水の約20%を占めるといわれるほどの貯水量を誇るシベリアのバイカル湖。固有の動植物が多数生息することから1996年に世界遺産に登録され、古代より人々に恵みと畏怖の念をもたらしてきたこの湖に、黒宝霧島のルーツがあります。巨大な湖を包み込むように繁茂する白樺の森で、ごくごく稀に見つかる「森の黒ダイヤ」。この土地に暮らす人々はこれを「チャーガ」と呼び、珍重し続けてきました。

チャーガは白樺などに寄生するキノコの一種で、北半球の温帯地域に分布しており、日本でも確認されています。驚くのはその希少性。チャーガが見つかる確率は白樺2万本に1本とも言われ、「森の黒ダイヤ」と呼ばれるのもうなずけます。森の奥深くに分け入り、白樺に寄生するチャーガを見つけ出し、採取するには、専門的な技術と経験が必要。チャーガハンターのブラディスラブ氏は、丁寧にチャーガを切り取り、こちらに見せてくれました。「これが森の黒ダイヤ・チャーガです」。

白樺に寄生し、ついには枯らしてしまうほどの強い生命力を持っているチャーガ。極寒の地を生き抜いたチャーガには自然の恵みがふんだんに含まれており、シベリア地方の針葉樹林で暮らす人たちの健康維持のために利用されてきました。活性酸素の除去、血圧の安定、抗アレルギー効果、肝臓機能の補助、免疫力向上、抗ウィルス作用、抗がん作用などの効果があると言われ、食品が持っている健康効果の大きさの目安となる活性力は、霊芝の約40倍、アガリクスの約46倍にもなります。

「チャーガは森を守るために生きているんです。いわば森の看護師さんですね」。専門家のタチアナ博士は語ります。抵抗力が弱くなった白樺に寄生して枯らしていくチャーガは、見方を変えれば、森の患部を治療しているともいえます。「チャーガは昔から人々の健康維持に使われてきました。この土地の人であれば誰もが知っており、森で暮らす猟師たちは必ずチャーガを漬け込んだお酒を携帯していました」。極寒の地・シベリアをたくましく生きるために、チャーガは貴重な役割を果たしてきたのです。

イクラやサケ科魚類の身(筋肉)、タイの表皮などは、きれいな赤色をしています。これらの色は、すべてアスタキサンチンという色素によるものです。鮮やかな赤に染まった海の生き物たちは、厳しい自然環境を生き抜けるよう、その力を取り入れ、様々な働きを支えるために体内に蓄えていると考えられています。

ヘマトコッカスという緑色の藻から生産されるアスタキサンチン。その純粋培養は難しいとされていましたが、世界で初めて高品質なアスタキサンチンの供給に成功したのがスウェーデンのアスタリールAB社です。日本人としてアスタキサンチン研究の第一線で活躍するジェネラルマネージャーの西田康宏博士は、デリケートなヘマトコッカスの生態と向き合い、温度管理や衛生管理など、最新の製造システムと万全の管理体制でアスタキサンチンを丁寧に生産していると教えてくれました。

アスタキサンチンはβ‐カロテンやリコピンなどの色素の仲間であり、コエンザイムQ10の約800倍、緑茶カテキンの約550倍という還元力を持っていることが長年の研究によってわかっています。その強い還元力は、健康食品や化粧品などさまざまな業界でも注目を集めています。

スウェーデンで生産されたアスタキサンチンの原料は、日本に送られ、最新鋭の設備を備えた工場で抽出作業が行われます。アスタキサンチンの優れた機能性や様々な面での効果を研究するアスタキサンチン研究の第一人者・山下栄次博士からもお話を伺い、その可能性を確信した私たちは、アスタキサンチン酒「Ax霧島」を誕生させました。