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さつまいも生産体制強化のための新施設「甘藷種苗生産施設(仮称)」を建設

企業情報

2023年4月6日

健全なさつまいも苗の育成・供給、さつまいもの研究開発を推進
~2023年9月 稼働予定~

 霧島酒造株式会社は、都城市志比田町の敷地に「甘藷種苗生産施設(仮称)」を建設いたします。建設工事は2023年1月に着工していますが、本日正式に発表しました。
 「甘藷種苗生産施設(仮称)」は、種苗の段階における「サツマイモ基腐病(以後「基腐病」と呼称)」拡大防止のほか、さつまいもの研究開発を目的とした施設です。2023年9月の稼働を予定し、敷地面積17,565㎡、総工費約14億円のプロジェクトとして建設を進めております。

■経緯

 近年さつまいも生産農家の高齢化や転作・離農が続いていた中、2018年に初めて国内で確認された基腐病の流行が重なり、霧島酒造の2022年のさつまいもの確保量は、前年に引き続き2年連続で計画を下回りました。この影響を受け、霧島酒造では商品価格を改定したほか、一部商品を販売休止しております。
 持続可能な焼酎造りの全体構想「KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。~」を掲げる霧島酒造は、基腐病の克服が急務であると考え、生産農家の皆様と共に基腐病菌の防除対策を進めてまいりました。これからも生産農家の皆様に安心してさつまいもを生産いただくため、このたび「甘藷種苗生産施設(仮称)」を建設することとなりました。

「甘藷種苗生産施設(仮称)」建設の目的

  1. 健全な苗の育成・供給
    種苗の段階における基腐病の拡大を防ぐため、基腐病に限らず、病害発生リスクの少ない健全な苗の育成、供給を行う。
  2. 基腐病の抵抗性が高いさつまいも品種の普及推進
    これまで主に使用していた品種「黄金千貫(コガネセンガン)」よりも基腐病の抵抗性が高い品種の普及を推進することで、さつまいもの安定確保を目指す。
  3. さつまいもの研究開発
    さつまいもの安定確保と新たな価値の創出を目指して、品種改良を含めたさつまいもの研究開発を行う。

 現在、主力商品である黒霧島や白霧島には「黄金千貫」という品種のさつまいもを使用しており、収穫されて3日以内の新鮮なさつまいもを使用して製造することで、安全で高品質な商品を提供しております。今後は農研機構(※)が開発した、基腐病に強く、「黄金千貫」と同様の酒質・品質を維持できる品種「みちしずく」を徐々に取り入れていくことで、商品の安定供給を目指してまいります。
 また「甘藷種苗生産施設(仮称)」では、将来的には焼酎の製造工程で出る蒸留温排水のエネルギーを一部活用し、冬場の育苗ハウスでの暖房利用を計画しております。

  • 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

■サツマイモ基腐病について

 「サツマイモ基腐病」は、さつまいもが根元から腐敗し、生育不良を引き起こす病害です。さつまいもは収穫時に一部を種芋として保管し、それらを苗床にして苗を育て、翌年に植えるというサイクルを繰り返す作物です。基腐病に感染したさつまいもを種芋にすると、そこから育つ苗も発病するのはもちろん、感染した芋や茎の残渣が収穫期を過ぎても畑に残ることで、翌年も基腐病が発生してしまう恐れがあります。

霧島酒造が実施した主な基腐病対策

  1. さつまいも購入価格の見直し
    生産資材(肥料、農薬、燃料等)の価格高騰や生産農家の皆様の基腐病防除対策費の補填として、2022年度集荷分より、生産農家からのさつまいもの購入価格の見直しを行いました。2023年度も状況に応じて購入価格の見直しを行います。
  2. 次年度に向けた種芋の確保と消毒
    現在、生産農家が各々で確保している種芋を霧島酒造でも確保することで、生産農家の種芋に病害がみられた場合に早急に補填できるようにしました。また、種芋から基腐病が発生してしまうリスクを最小限に抑えるため、2022年10月に蒸熱処理装置を2基導入し、一部種芋の消毒のために使用しています。
  3. 農薬散布の啓蒙と支援
    基腐病の防除を目的として、生産農家に対して積極的な情報共有を行いました。また、2022年度から要望があった一部の農場において、霧島酒造主体でドローンでの農薬散布を開始しました。

■甘藷種苗生産施設(仮称) 完成予想図

【甘藷種苗生産施設(仮称) 全体図】
【甘藷種苗生産施設(仮称) 管理研究棟外観】

■施設概要

住所 宮崎県都城市志比田町10877番地
建物構造 鉄骨造り2階建て(管理研究棟) オランダ式高軒高ハウス(育苗ハウス)
延べ床面積 9,942m2(うち研究棟1,238㎡、育苗ハウス8,704㎡)
敷地面積 17,565㎡
総工費 約14億円
着工

2023年1月~

稼働予定

2023年9月~

生産能力

最大200万本(切り苗)、最大9万本(ポット苗)

【霧島酒造 代表取締役社長 江夏順行コメント】

霧島酒造としての持続可能性を見つめ直した結果、事業基盤ともいえるさつまいも作りから見直す必要があると考えました。そしてこのたび、サツマイモ基腐病の抜本的対策とされている健全な苗づくりから取り組んでまいります。
九州の恵みであるシラス台地が育んできたさつまいも文化は、芋焼酎製造を営む霧島酒造にとって、守り続けていくべき価値のひとつで、基腐病に対する対策や支援は、最優先で取り組むべき課題です。運命共同体ともいうべき生産農家の皆様と一致団結して、この難局を乗り越えたいと考えております。

■「甘藷種苗生産施設(仮称)」建設予定地

 霧島酒造は、引き続き生産農家の皆様が安心してさつまいもを栽培いただけるような環境を構築し、さつまいもの生産体制を強化するとともに、今後もご愛飲いただいている皆様に高品質な商品をお届けできるよう、力を尽くしてまいります。