2025.04.30

都城を盛り上げたい。その想いが、内陸の工場群にビーチ空間を生んだ。

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国際水準の競技場でありながら、
地域の憩いの場でもある、里山のビーチに迫る。

霧島酒造が拠点を置く都城市は海のないまち。だが、そびえる焼酎製造工場や巨大なタンクを抜けると、そこには人々が憩う真っ白なビーチ空間が広がっている。その名も『KIRISHIMA BEACH PARK』である。

霧島酒造の直営施設『焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン』に設けられ、オーストラリア産のホワイトサンドが敷き詰められたこの広い敷地は、国内最高峰のビーチバレーボール大会「ジャパンビーチバレーボールツアー」の会場のひとつとしても使われる、国内でも珍しい内陸のビーチバレーコートだ。
なぜこの場所にビーチができたのか。霧島ファクトリーガーデン事業本部の細山田浩二と、丸本雅夫に話を聞いた。

ジャパンツアー2024 第2戦 都城大会 第25回霧島酒造オープン(©JVA BEACH)

霧島酒造で初めてビーチバレーボールの大会が行われたのは2000年。
「大会運営側から、宮崎県でビーチバレーボール大会を開催したいと相談されたことがきっかけだと聞いています」と、細山田は当時の資料をめくりながら語る。
当初、大会運営側は海岸沿いを探していたが、最適な環境が確保できず難航。その中で、1996年のアトランタオリンピックを参考に、内陸地での開催を視野に再検討され、都城市が候補に挙がった。そして都城市と霧島酒造が協力し、霧島ファクトリーガーデン内、現在の霧の蔵ホール付近に川砂を使ったコートを急遽整備して開催が実現した。
「都城市出身のアトランタオリンピック出場選手をはじめ、ビーチバレーに精通するキーマンが都城市に揃っていたこと。そして何より、霧島酒造経営陣の『地元都城を盛り上げたい』との強い想いがあったこと。これらにより当施設内での開催が実現したのだと思います」

『KIRISHIMA BEACH PARK』として新たに生まれ変わったのは2018年。霧島ファクトリーガーデンの施設全体をリニューアルした際に、現在の場所へ移設し工場見学通路から一望できるようになった。
「リニューアルでは、都城一帯の雄大な自然や霧島焼酎の歴史などが感じられる“里山”をイメージした空間づくりをコンセプトとしていました」と、丸本が当時を振り返る。

“里山”を演出するため、ビーチパークの砂の飛散を防ぐ防壁は、コンクリートではなく石積みでつくった。また、周りにはたくさんの樹木や草花を植え、日本の四季を感じられる空間にした。
「約1万種の草花と、梅や竹、シンボルツリーの桜など約60種の樹木を植えました。お客様に日本の原風景を感じていただきたかったんです」

また、ビーチバレーボールを行うための環境整備としては、コートが3面設置できる広さを確保し、砂の色や粒の大きさなどが細かく定められた国際大会の規格に近いホワイトサンドを採用した。
「粒子が細かいと足をとられやすく、選手にとって非常に負荷の大きい環境です。大会だけでなく、トレーニングにも最適で、選手の事前合宿や地元高校のバレー部の練習場などにも活用されています」
それだけでなく、大会開催地として、水はけの良い設計はもちろんのこと、毎日の清掃に加え、大会前などには機械を使った異物除去作業を適宜行うことで安全性も担保している。
「他県のビーチバレーコートを視察し、また、大会運営側にも多くの助言をいただきながら、選手たちが高いレベルで安全にプレーができるような環境をつくり上げることができたと自負しています」

2025年の大会で、霧島酒造での「ジャパンビーチバレーボールツアー」の開催は26回目を迎える。第1回から26年間同じ場所で開催し続けているのは、全国でもここだけ。歴史のある場所ということもあり、都城市に訪れることを楽しみにしている選手も少なくないという。
細山田は大会についての想いをこう語る。
「個人的な意見に過ぎませんが、2024年のパリオリンピックのように、夜に大会を開催できると面白いだろうなと思っています。同時期に当施設で開催しているビアガーデンもお楽しみいただけるようにするなど霧島酒造ならではの関わり方が出来ると良いですね。ビーチバレーボールの振興に貢献していきたいという想いもありますし、大会が盛り上がることで地域の活性化にもつながると思っています」

また、今後の『KIRISHIMA BEACH PARK』について丸本は語る。
「現在、スポーツ以外にも砂遊びやお花見、バーベキュー、地域の学校の遠足など、地元の方々に親しみを持ってご利用いただいています。今後もアクティビティの新設など、さらに楽しんでもらえる工夫を行い、みなさんの“心の里山”にしていけたらと思っています」

本来そこにあるはずのない、霧島酒造の想いから生まれた内陸のビーチ。
その想いが続く限り、これからも『KIRISHIMA BEACH PARK』は、訪れる人に憩いや熱狂を提供し続けるだろう。

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