2022.09.26

お客様とまっすぐ向き合うとき、言葉は贈り物になる。

  • #歴史

お客様とともにある霧島ブランドへ。
それが、お客様相談室の使命だ。

霧島酒造には、年間約5,000件以上のお問い合わせが寄せられる。今や当たり前とも言える企業のお客様相談窓口だが、霧島酒造に設けられたのは2008年だ。
それまでお客様に対して各部署が個々に対応しており、対応の個人差や情報集約不足が起きていた。
消費者重視になりつつあった状況で、それらの課題を解決する為に、一本化された窓口の開設が求められていたのだ。最もお客様に近い立場でありながら、知られざる面の多いお客様相談室について、室長の谷口幸子が語ってくれた。

2007年、お客様相談室の前身として「お客様相談室 開設準備室」が設置されることになった。
社内で招集されたうちの一人が、当時の霧島ファクトリーガーデン(現「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」)で店頭販売や工場見学の案内を担当していた谷口だった。
会社から課されたミッションはいたってシンプル。"霧島酒造らしい相談室をつくること"だった。
「自分たちで霧島酒造らしさが分かっていないと、求められる相談室なんてつくれない。会社の歴史や姿勢を改めて理解することから始まりました」と谷口は語る。
自身の応対力を上げるための研鑽にも励んだ。
「これまでの接客の経験から、お客様とのやりとりにも慣れていたつもりでしたし、そのスキルが活かせたらと思っていました。それが、いざ電話応対を始めてみると言葉だけのコミュニケーションって本当に難しかったんです」
お客様からのお問い合わせへの応対に関する研修の受講や、関連する検定の受験、書籍の読み込みも行った。
大阪や東京など遠方まで出張することも多々あり、最終便で日帰りすることも少なくなかった。

準備室としての期間を経て、2008年4月、お客様相談室は開設を迎えるが、当時、霧島酒造は、計画出荷が長びいていた最中。
ご要望いただいている量を出荷できない。心苦しい応対しかできない。ご愛飲いただくお客様はもちろんのこと、飲食店からもたくさんのお叱りの声をいただいた。
それでもしっかりご説明をする中で、日ごろのお話を伺うことができたり、黒霧島を飲んだきっかけを聞かせてくださったりと、お客様から教えていただくことも多かったという。 このようなやり取りをきっかけに、静岡のある居酒屋の方は今でも「今後も、うまい焼酎を造ってください」という声とともに、毎年自身でつくった新茶をお客様相談室へ送ってくれている。距離が離れていても、応援してくれる方々がいることに感動を覚える出来事の一つだ。

お客様に少しでもファンになっていただくための工夫も積極的に行っている。
その一環として、相談室がある建屋から見える霧島連山の風景を撮影し、「本日の霧島」の様子としてお送りするという取り組みがある。手書きのメッセージも添え、霧島焼酎の故郷を少しでも身近に感じてもらえたらという想いを込めている。
他にも、お客様のご要望にノベルティで応えた例もある。新品の紙パックから焼酎を注ぐ時に重く感じる、年齢とともに握力が落ちて握りにくいという声を受けて、愛飲の一助となるようなすべり止めがついた指サックをノベルティとしてお送りしている。
商品改良までは叶わずとも、少しでもお客様に寄り添いたいと動いた結果だ。

そのほかにも、お客様相談室のメンバーが中心となり、様々な取り組みを行っている。 2018年からは"お客様の声を活かす活動"の構想をスタートさせた。 活動メンバーとの改善案検討や関連部署へお客様からの要望を展開するものだ。
普段お客さまとの直接的な接点がない部署の社員にも、お客様の温度感を伝えたい。 そう考えて様々な試行錯誤を経てたどり着いたのは、実際に相談室によせられたお客様の生の声を音声で共有することだった。

「例えば、資材について改善の声があったことを社内に伝える際に、『いつもここ開けづらいのよ』などお客様の生の声を聞いてもらうと、共感してもらいやすいんです」と、谷口は言う。
「すぐに実現に繋がらなくても、こうやって会社として皆さまの声を真剣に協議する場を設けたことに意義があると感じています」
そう語る表情には確固たる意志が見える。

このように様々な施策に励む中でも、日常的な勉強会や、"電話応対コンクール"への参加などを通じて、お客様相談室の基盤となる「応対力」を磨くことも怠らない。
特に大切にしているのは、お客様への感謝をしっかりと言葉にして伝えることだと言う。
「言葉は贈り物になる」谷口はそう口にした。それは、言葉の力を信じて進んできた谷口の奮闘が垣間見える一言だった。

電話応対をするお客様相談室の社員

現在のお客様相談室は、当初掲げた霧島酒造らしさのある相談室となっているかとたずねると、谷口はこう答えた。
「当時必死に霧島酒造らしさを考えて、なにか分かった気でいたけど、それって自分たちなりの解釈でしかないんですよね。強いて言えば、10年以上たった今も、今の時代における霧島酒造のあり方を考えながら、霧島酒造らしさって何だろう、と模索し続けていることこそが"らしさ"かもしれないですね」
時代とともに変わり続けながらも、お客様と向き合う熱量は変わらない。霧島というブランドはこうして、社員だけでなく、お客様とともにあることで、これからも成長していくのだろう。

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