2023.09.26

大胆な目標の向こう側に、焼酎造りの未来がある。

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霧島酒造が描く持続可能なエネルギーサイクルとは

霧島酒造には、さつまいもから生まれた電気で走る社用車『さつまいも EV e-imo(以下e-imo)』がある。『KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE(以下KSC)』プロジェクトの一環として生まれたものだ。
KSCとはどのような考えのもと生まれたプロジェクトなのか、企画室の長谷川裕晃と、グリーンエネルギー部の林純平に話を聞いた。

KSCがプロジェクトとして立ち上がったのは2019年だが、環境への取り組みは、ずっと昔から実行してきたことだと言う。
「やはり根底にあるのは、焼酎粕は宝だという考えです」と長谷川。焼酎造りで得られた副産物である焼酎粕は、一般的には産業廃棄物として処理されるものだが、霧島酒造は“自然から得た恵み”であると考えてきた。だからこそ、バイオガスを用いたサツマイモ発電を行い有効活用するなど、循環に繋がるアクションを続けている。
このような活動の延長として、さつまいもを中心に、ポジティブなエネルギーの循環を続けていくという意味を込めて2021年11⽉にKSCプロジェクトを世の中に発表した。同時に、プロジェクトの実現を通して、2030年度までに⼯場・事務所のCO₂排出量実質ゼロを⽬指すことも宣⾔した。

この発表も、なかなか一筋縄ではいかないものだった。
「はじめは、CO₂排出実質ゼロを2050年までに、という目標を立てて準備を進めていました。しかし、発表を間近にして大胆な目標を掲げるべきだという意見が上がり、急遽2030年まで前倒しにして計画を進めることになりました。」と長谷川は当時を思い出しながら語った。
2030年が目標となると、猶予はほんの数年となる。日夜急ピッチで議論を交わさざるを得ないほど、ハードルは高い。だが、やるべき意義はある。言葉には出さないが、誰もがそう感じていた。
「根拠を持ってゼロにできると言い切れるか。発表のための計画になっていないか。本当の意味で環境のためになっているのか。それを突き詰めて考えていました。絶対にブレたくなかったので。」と林も振り返る。
苦戦しながらも徐々に社内の空気は変わり始めた。関係社員の全員が同じ方向を見て、根拠を集め、達成可能な目標値として算段をつけられたのは発表会直前のことだった。

発表会の場ではe-imoのお披露目が行われた。さつまいもの“いも”と、電気⾃動⾞をイメージさせる“electric(電気)”と“mobility(乗り物)”を掛け合わせたネーミングだ。
e-imoは、サツマイモ発電で生まれたエネルギーで走る。
本社のある都城市周辺を走っており、地域の⽅に親しみを持って霧島酒造の取り組みを知ってもらうために、車体には、都城や環境に関係するモチーフが賑やかなイラストであしらわれている。
「環境の話となると、難しそうと思われがちなので、世代問わずわかりやすく伝えるためにイラストがいいと思いました。霧島酒造だけでエネルギーを循環させているわけではないし、やはり地域あってのことです。一緒にドキドキワクワクしてもらえるように、地域のイラストをたくさん散りばめています」と長谷川。

イラストには、今実現していることだけではなく、少し先の未来のことや、こんな世界があったらいいなという夢まで入れ込むことで、より楽しさを演出している。
「サツマイモ発電を利用して子供たちが安全に遊べる遊具ができるといいですよね」と林。
「温排水を活用しつつ、バイオガスの生成で出る炭酸を高濃度にして炭酸風呂を作ったり、その炭酸で黒ッキリボールを作ったりしても楽しそうです」と長谷川。
担当者の環境や地域に対する思いもあり、e-imoは、霧島酒造が実施している小学校の環境教室などで子供たちの人気を集める存在になっている。
「e-imoの電気を利用して、電気ヒーターでポップコーンを作ってみたり、夏にはスポットクーラーの電源として使って涼んでみたり、子供たちにも喜んでもらっています」と林。
また、e-imoは、災害時に役立つ側面も担っている。霧島酒造は都城市と協定を結び、災害時の電源として利用できるようになった。200名の避難所であればe-imo1台で24時間の供給が可能となるそうだ。

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e-imoをはじめ、新たな挑戦が多かったKSCの発表を通じて、霧島酒造の情報発信に対する姿勢に変化が生じつつある。
「これまでもグリーンエネルギー部と関わる機会はありましたが、部署を横断したKSCの取り組みを通じて、改めて当社の環境活動を担っている部署のすごさを実感しました。当たり前のように見える業務の中から価値のある情報を見つけていく重要性に気付きました」と長谷川。
「焼酎は物理的な味だけではなく、ストーリーが頭にあることでよりおいしく感じてもらえると思います。お客様に焼酎をおいしく飲んでもらうためにも、継続的な情報発信に力を入れていきたいです」と林。

さつまいもも水も麹も、すべては自然の恵み。これらが焼酎となり、人々に喜びと活力を与え、大きな循環を経て次の焼酎が生まれる。それがKSCの示すビジョンだ。これまでもこれからも、霧島酒造にとって環境活動に取り組むことは、“あたりまえ”のことであり続ける。

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