味わいとボトルが魅せる「伝統」と「革新」。
積み重ねてきたからこそ造れる商品を。
2026年5月に創業110周年を迎えた霧島酒造。その節目にふさわしい新たな記念ボトルが誕生した。それが『百十寿(ひゃくじゅじゅ)』である。
17年甕貯蔵した黒霧島を贅沢に使用した『渦文(うずもん)』、高濃度のKIRISHIMA
No.8を特製ブレンドした『釉滴(ゆうてき)』のふたつがセットになった商品だ。
110周年の記念ボトルには、どんな味わいや想いが込められているのか。開発チームの長谷川裕晃と外村舞に話を聞いた。
「甕貯蔵の黒霧島を使いたいというのが、まず最初にあった構想です」
そう語るのは、開発チームのリーダーである企画室の長谷川。
霧島酒造には、長い歴史のなかで積み上げられてきた無数の研究と試作品が眠っている。4年前、長谷川らが目を付けた甕貯蔵の黒霧島がそのひとつだ。
「一口飲み、その味わいに惹かれたのはもちろんのこと、長期貯蔵という歴史が生んだ財産を活用することで、110周年に相応しい商品にできるのではないかと思いました」
幾度かの会議を経て、コンセプトをクリアにしていった。
検討の中で、まず「伝統」というキーワードが挙がった。長期貯蔵の黒霧島は、110年紡いできた伝統の象徴としてぴったりの商品になるだろう。しかしそれだけで良いのか。過去だけでなく、未来への眼差しも必要なのではないか。チームで議論を重ね、「伝統」と対を成す概念として、新たに「革新」をキーワードとして挙げた。
100周年記念ボトルである『百瑠璃』と同様、今回の110周年記念ボトルもふたつをセットにして「伝統と革新」を体現することが決定した。
では、もうひとつの「革新」をどのように酒質で表現するべきか。ベースの酒質として選ばれたのはKIRISHIMA
No.8の原酒だった。
「KIRISHIMA
No.8は、当社が日本で初めて焼酎メーカー単独でさつまいもを育種し、その原料を用いて焼酎を製造販売した商品。近年の霧島酒造の商品で最も革新を象徴する商品です」と語る長谷川。
2026年度の熊本国税局酒類鑑評会でも、本格焼酎部門の全3カテゴリ※で入賞を果たすなど、高い評価を得た。両商品の根幹が固まった。
※チャレンジの部、一般酒の部、炭酸割りの部
数ある原酒から商品の味わいを造りあげていくのは、ブレンダーである外村の仕事だ。
「『渦文』は甕貯蔵酒の個性的な風味を活かしつつ、食中酒としても楽しんでいただけるような飲みやすい味わいを目指しました」と、外村は当時を振り返る。
甕貯蔵酒の特長は、甕のミネラル分などが溶け込むことによるまろやかさと、紹興酒やブイヨンを思わせるようなふくよかで奥行きのある香り。その特長を活かしたい。その上で、霧島酒造がずっと大切にしてきた「食事に合う焼酎」であることが絶対条件だ。個性的かつ飲みやすいバランスを探るため、試行錯誤を重ねた。
『釉滴』は、開発当初「伝統」と「革新」の融合を目指し、KIRISHIMA
No.8の原酒に黒霧島の甕貯蔵酒をブレンドする方向で進んでいた。フレッシュな味わいの原酒と濃厚な甕貯蔵酒のブレンドは意外性があり、まさに革新を感じさせる味わいであったが、ゆえに社内でも賛否が分かれた。
「美味しかったですよ。私は好きでした」と当時を振り返る長谷川。
しかし、コンセプトにあっているか、お客様がおいしいと感じる味わいになっているか。議論を重ねる中で、再び一から味わいを設計することに決まった。
「一度、白紙に戻ったことで、むしろ新たな可能性を探ることができました。結果的によりコンセプトに近く、KIRISHIMA
No.8の原酒が持つ特長を存分に引き出せたと満足しています」と、力強く語る外村。最終的には、製造条件の異なる原酒をブレンドすることで、KIRISHIMA
No.8の原酒が持つ果実のような華やかさ、瑞々しさを最大限に引き出し、「革新」を体現する酒質に仕上がった。
長谷川と外村から感じる商品への揺るぎない自信は、紆余曲折を乗り越えてきたからだろう。
周年記念商品ならではの特別感を一目見て感じられるのが、その豪華なボトルだ。
デザインは、有田焼・「白磁」の人間国宝 故・井上萬二氏※と、その孫である井上萬二窯三代目・井上祐希氏に依頼した。
「祖父と孫で世代を超えて活躍されている井上萬二窯は、今回の『伝統と革新』という想いを形にしていただくのに高い親和性を感じました」と語る長谷川。
『渦文』は萬二氏作。代表作である渦文を、110周年と掛けて11本の渦をボトルにあしらい「伝統」を表現した。『釉滴』は祐希氏作。祖父から受け継いだ白磁の考えを元に、現代的感性を織り交ぜた祐希氏の作品の中から、釉滴と呼ばれる技法で「革新」を表現した。
※1929年〜2025年
陶磁器のデザインをガラスで表現するのは非常に難易度が高く、井上萬二窯、ガラス瓶メーカーと何度も協議を重ねた。
「渦模様の溝が深すぎると型が抜けないという制約のなか、何度も検証し元となる陶磁器の原型に近づけていただいたり、釉滴の唯一無二の模様を一つひとつ転写で再現いただいたりと、メーカーさんには本当に最後までご尽力いただきました」
細部の細部まで、こだわりを詰めこんだ創業110周年記念ボトル『百十寿』。込めたのは、霧島酒造とともに時を重ねてくださっているお客様への感謝だ。
「私がお世話になっている方にも気持ちを込めた贈り物としてお渡ししたいです」と嬉しそうに話す外村。また、長谷川は「これまで当社を支えてくださったお客様はもちろんのこと、まだ霧島酒造を知らない方にもこれから当社を知っていただくきっかけにもなれば」と語る。
110周年だからこそのこだわりをふんだんに込めた周年記念ボトル。歴史が紡いできたその一杯を、是非味わってみてほしい。
※20歳未満の方へのお酒に関する情報の共有はお控えください。


