九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

皮をむき、適当な大きさに切る。葉を落として2~3日置いておくと切りやすくなるとのこと。煮物に使う場合は下ゆでする場合も多い

煮物

代表的な煮物はぶり大根、ふろふき大根などで、煮汁でじっくりと炊く。旬の冬には郷土料理『とんこつ』の具材に使われることも多い

その他の料理

やわらかく甘みがあるのでそのまま生で食べても美味。酢の物、漬物、(下ゆでして)天ぷらなど、様々な料理でも食べられている

語り 一条通 さけ咲(さけさけ) 中村裕一郎の「桜島大根」

中村裕一郎さん

鹿児島中央駅近くの通称“一条通り”沿いで2005年にオープンした居酒屋。メニューには居酒屋メニュー、『かごしま黒豚』『鹿児島黒牛』『黒さつま鶏』と鹿児島の“3つの黒”を使った料理に加え、『自家製さつま揚げ』『とんこつ』『キビナゴ料理』といった鹿児島で昔から伝わる郷土の味が並ぶ。『桜島大根』も冬の時期に使われる鹿児島ならではの食材だ。
「時期が来ると八百屋さんが持って来てくれるんです。届いたら店頭に飾ってますよ(笑)。毎年楽しみでもありますし、時季を感じさせる食材ですね。渋みや辛みなど嫌われる部分がなくて(笑)、甘みがあります。煮付けにすると美味しいです。大根ではありますが形などカブに似ているところもありますね」。そうお話してくださるのは総料理長・中村裕一郎(なかむらゆういちろう)さん。

まず、『桜島大根』を使った煮物料理である郷土料理『きいこん』を作ってくださった。「『桜島大根』は縄で茎を縛った状態で出荷され、届きます。本場の桜島で育てられたものにはそれを証明する印鑑が押してあります」。

桜島で育てられた『桜島大根』にはそれを証明する印鑑が押されている

「水分が多くて瑞々しく皮は薄いですね。今日の『桜島大根』は10kgくらいで中くらいの大きさかな。小ぶりのものは“す(穴)”が多いので、大きいものがいいですね」。

『桜島大根』は皮が薄く、キメが細かい

「『きいこん』は簡単に言うと『地鶏の煮付け』です。大根、ニンジン、カボチャ、鶏肉といった具材を、鶏出汁、カツオ出汁、砂糖、醤油、ミリンを合わせた煮汁で煮込んでいくんです。うちの『きいこん』は肉も出汁も黒さつま鶏のものですよ」。

『きいこん』は黒さつま鶏のスープなどを合わせた煮汁で具材を煮込む

「『筑前煮』みたいなものですが、具材の切り方が大きめです。鹿児島人はせっかちで面倒くさがりだからなのかもしれません(笑)。元々、お正月料理でぜいたくなもの。『きいこん』という名前については、 “切って入れ込む”みたいな意味なのかなと私は思っています」。
できあがりをいただくと、やわらかい食感の中、『桜島大根』の甘みに黒さつま鶏の出汁が重なった味わいは、ほっとする美味しさでもある。「昔、鹿児島のおやじが家に帰ってからの定番は、まず、鶏刺し、ビール、野球(のテレビ中継観戦)です。その後は、煮付けと焼酎。だから、今でも地元密着型のスーパーには、煮付けが惣菜コーナーに並んでいるんです。家庭で作ることは減っていますが、今でも食べられているということですね。私が子どもの頃はスーパーで『桜島大根』がたくさん売られていましたし、煮物にもよく使われていたと思います。『きいこん』にしてもそうですが、『桜島大根』が主役の煮物料理は少ないかもしれません。やっぱり魚や肉が主役。でも、主役を陰ながら支えるものとして、『桜島大根』もなくてはならない食材だと思うんです」。

次に、作ってくださったのは『桜島大根のステーキ』だ。
「下ゆでした『桜島大根』を焼いて焼き目をつけたものに、2種類のソースをかけるという料理です」。表面が香ばしく中がやわらかい『桜島大根』には醤油ベースのソースもゴマ風味のソースもよく合う。上にのせられた『黒さつま鶏の炙り刺』と一緒に食べても美味しい。

『桜島大根のステーキ』は、適当な大きさに切った後、下ゆでして表面を焼く

その他、『桜島大根』がある時期は、レギュラーメニューの『じゃこ大根のさっぱり和風サラダ』に使われる大根が『桜島大根』であったり、漬物や突き出しに『桜島大根』が使われることもあるそうだ。
「サラダなど生で食べると、甘さが口の中いっぱいに広がり、その後で少しピリッときますね。中心部よりも外側のほうが甘みが強いようです」。

オシャレに盛り付けられた『きいこん』と『桜島大根のステーキ』

『桜島大根』が一番美味しい時期は30~40日間だという中村さん。その時期、多くの方に『桜島大根』のすばらしさと美味しさを伝えようという想いで厨房に立たれている。
「『桜島大根』は火山灰が積もった土壌で栽培されています。サツマイモも同じですね。鹿児島は日照時間が長いことも『桜島大根』がよく育つ条件の一つです。あと、『桜島大根』もサツマイモも土の中で育ちます。風に強くて台風の被害を受けることが少ないですし、降灰にも強いのです。鹿児島、桜島だからこそ『桜島大根』は世界一大きな大根になれるんです。だから『桜島大根』は鹿児島の大事な食材なのです。大切なものは近くにありすぎると忘れてしまいがちですが、そうならないように、私たちは料理を作っていきたいですし、たくさんの方に食べていただきたいと思っています」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

桜島産の『桜島大根』を仕入れ、皮をむき適当な大きさに切る。煮物に使う場合は下ゆでする

煮物

鹿児島の郷土料理『きいこん』。ニンジン、カボチャ、鶏肉などと一緒に、鶏出汁、カツオ出汁、醤油、ミリンなどを合わせた煮汁で煮込む

その他の料理

『桜島大根』を使った『桜島大根のステーキ』やサラダを提供したり、漬物や突き出しに使われることもあるとのこと

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一条通 さけ咲(さけさけ) 鹿児島の“3つの黒”がそろう居酒屋

居酒屋料理、さつま揚げやとんこつといった鹿児島の味に加え、かごしま黒豚、鹿児島黒牛、黒さつま鶏という鹿児島の“3つの黒”を使った料理を食べられる。『桜島大根』は、旬の時期になると漬物や突き出しに使ったり、煮込み料理である郷土料理『きいこん』、ステーキ、サラダなどで提供したりと、その魅力を幅広く引き出し伝えている。

『桜島大根』と黒さつま鶏肉などを煮付けた醤油風味の『きいこん』702円
『黒さつま鶏の炙り刺』がのった『桜島大根のステーキ』918円。2種のソースで食べる
じゃこがたっぷりとかけられた『桜島大根のサラダ』756円
写真は個室。カウンター席、ボックス席などもある

一条通 さけ咲(さけさけ)

住所 鹿児島市中央町1-10
電話 099-214-5885
営業 17:00~OS 23:00(金・土曜、祝日前日~OS 24:00)
休み なし
部屋数 36席+個室7室
カード
駐車場 なし
URL https://sakesake5885.owst.jp
お取り寄せ情報 なし
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