九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

猪肉と野菜

スライスして使われる猪肉には皮付きと皮なしがある。白菜、大根など秋から冬にかけての旬の野菜がたっぷりと入る

味のベース

スープそのものに味をつける醤油仕立て・味噌仕立てにすることが多いが、水炊き風・すきやき風といった食べ方もある

作り方・食べ方

スープで猪肉と野菜類を煮込んで食べる。薬味には柚子こしょうが添えられることが多い。締めはうどんや雑炊だ

語り 滋味健丈 炉丹 田上高広と渕本尚の「猪鍋」

支配人・田上高広さんと料理長・渕本尚さん

国道443号線沿いを車で走り、八代市泉町を行くと、山間の風景の中に斬新なデザインの建物が現れる。熊本県が“建築や都市計画を通して文化の向上を図ろう”というコンセプトで1988年から実施している『くまもとアートポリス』事業から生まれた『ふれあいセンターいずみ』だ。1997年にオープンし、観光案内所、特産品販売所、レストラン『滋味健丈 炉丹』などの施設があり、地域の文化・情報を発信している。
「レストランの大きなテーマは『からだにやさしい料理』。地元の食材を使った料理を提供しています。ヤマメ料理や『だご汁』が人気です。寒い時期は猪、鹿を使ったジビエ料理をメニューに加えていますが、それを目指して来てくださるリピーターの方も多いですね。『猪鍋』は12〜3月限定のメニューですが、11月になると『猪鍋はまだですか?』というお問い合わせが多くなりますよ(笑)」。

お話をうかがった支配人・田上高広さんと料理長・渕本尚さんのやさしい笑顔。山間の静かな雰囲気とともに心がやすらぐ。

『猪鍋』について教えていただくため、厨房で猪肉の塊を見せていただいた。猪肉は地元の猟友会の猟師さんたちが運営する施設で処理・加工されたものだ。
「猪肉はロース肉、バラ肉、肩肉、モモ肉などに分けられてブロック状で届きます。『猪鍋』にはロース肉とモモ肉を使い、他の猪肉は『しし肉うどん』などに使っていますね。個体ごとに味の違いはありますが、天然ものならではの味の違いを楽しんでいただければと思います。大きい猪は脂はのっているのですが、肉が少しかたくなる傾向がありますね。ちょっと大きめのメスの肉がバランスがいいようですよ」。

猪肉を切り、皿に並べる

「猪の獲り方には鉄砲で撃つやり方や罠を使うやり方がありますし、下処理にも技術が必要です。猟師さんたちの腕が悪いと臭みが出るんです。臭い肉は独特な個性とは言えず、とても食べられないですね(笑)」。

猪肉以外の具材は、白菜、ささがきゴボウ、ネギ、春菊、シイタケ、ニンジンなど地元産の野菜がたっぷり。豆腐、くず切りも皿に盛りつける。

野菜類を皿に盛りつける

こちらの『猪鍋』は味噌仕立てで、鍋に昆布とカツオをベースにした出汁に合わせ味噌を加えたスープを入れる。

昆布とカツオをベースにした出汁に合わせ味噌を加えてスープをつくる

準備が整ったところで美味しい作り方と食べ方を教えていただいた。
「まず、皿に盛られた野菜を鍋に入れてふたをして火をつけてください。野菜に火が通ったら、猪肉を入れて野菜と一緒にどうぞ」。

味噌仕立てのスープで具材を煮込む

「猪肉はあまり煮込み過ぎないようにしてくださいね。煮込みすぎるとかたくなってしまうんです。自家製の柚子こしょうを合わせると美味しいですよ。泉町はお茶とともにゆずの産地なので柚子こしょうは特産品です。赤、青、そして激辛の黄色い柚子こしょうもありますよ」。

猪肉の濃厚な旨味を野菜の甘味とスープが引き立て、身体はだんだんポカポカとあたたまる。締めは猪肉と野菜の旨味が加わったスープで食べるうどんだ。

締めはうどんを食べる

「寒い時期にはぴったりの料理ですね。うちは味噌仕立てのスープですが、五家荘(ごかのしょう)では醤油仕立てのスープで食べられることが多いようです」。

泉町はかつては八代郡泉村で、約9割は山林という山里だ。
「泉町のいいところはやっぱり自然ですね(笑)。レストランでは、タケノコ、山菜、栗、ヤマイモなどを使った季節ごとのメニューで、山の四季を味わっていただきたいと思っています。『猪鍋』もそのひとつ。寒い時のほうが脂がのって美味しい猪肉と季節の野菜がたっぷりの料理ですから」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

猪肉と野菜

地元の猟友会の猟師さんたちが運営する施設で処理・加工されたロース肉とモモ肉。白菜など地元産の野菜がたっぷり使われる

味のベース

昆布とカツオをベースにした出汁に、合わせ味噌を加えた味噌仕立てのスープで具材を煮込む

作り方・食べ方

初めに野菜を煮込んだ後、猪肉を煮る。猪肉を煮込み過ぎないようにして、自家製の柚子こしょうを薬味にして食べる。締めはうどんがおすすめ。

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滋味健丈 炉丹 山の恵みに彩られた味噌仕立ての『猪鍋』

のどかな山間に建つ『ふれあいセンターいずみ』内のレストラン。『からだにやさしい料理』をテーマにした、地元の食材を使った料理を食べられる。寒い時期は猪、鹿などのジビエ料理も提供。『猪鍋』は12〜3月の限定メニューだ。昆布・カツオ出汁に合わせ味噌を加えた味噌仕立てのスープと柚子こしょうが、猪肉の旨味と野菜の甘みを引き立てる。

『猪鍋』1人前2160円(税込)(2人前から、写真は2人前)は締めのうどん付き。『猪肉味噌炒め』864円(税込)などでも猪肉を味わえる
人気の一品『だご汁』432円(税込)。雑穀ごはんや小鉢が付く『だご汁定食』は756円(税込)
木をふんだんに使い、開放感のある店内
山間に現れるアーティスティックな外観

滋味健丈 炉丹(じみけんじょう ろたん)

住所 熊本県八代市泉町下岳3296-1 ふれあいセンター
いずみ内
電話 0965-67-3500
営業 11:00〜17:00(土曜・日祝日〜20:00)
※4名以上は前日までの予約で平日夜間営業
休み 水曜(祝日は営業)
80席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.izumimura.com/fureai/
※記載した内容は2017年1月20日現在のものです。
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