九州の味とともに 冬

長崎 からすみ

ボラの真子から生まれる
べっこう色に輝く珍味

『からすみ』は、ボラの真子(卵巣)を塩漬け、塩抜き、天日干しして作られる長崎の珍味。製法の起源は古代ローマ時代の地中海沿岸とされ、安土桃山時代に中国から日本に伝わったと言われている。当初はサワラなどの真子でも作られていたようだが、江戸時代以降、長崎近海でよく獲れるボラの真子で作られるようになった。名前は、形が中国の墨である『唐墨(からすみ)』に似ていることに由来するという説もある。

薄く切った『からすみ』を口に運ぶと、もっちりとした食感と独特の旨味が広がる。塩味も効いており、甘い香りと味わいを持つ芋焼酎のつまみにぴったりだ。『からすみ』の横に盛りつけられることが多い大根と一緒に食べれば、その個性はさらに際立つ。『からすみ』を軽く炙って食べたり、ほぐしてパスタに合わせて食べても美味。
真子の表面に残る血を取り除く下ごしらえや、各工程を丁寧に行なうことで、きれいなべっこう色に輝く『からすみ』。手順は同じでも、塩漬けのやり方や、塩抜きのやり方(水、日本酒、焼酎に浸すなど)、干し加減などで味わいの差が生まれる。

他国の『からすみ』

イタリアの『ボッタルガ』、台湾の『烏魚子(オーヒージー/台湾語)』、中国や台湾の『油魚子(ヨウユーズー/北京語・イウヒージー/台湾語)』などは『からすみ』と同じ製法の食品。長崎の『からすみ』はボラの真子を使うが、他の地域ではボラ以外の魚の真子も使われている。

『からすみ』の老舗『髙野屋』

『髙野屋』の創業は延宝3年(1675年)、300年以上にわたり『からすみ』作りを続けている老舗だ。14代目となる髙野正安さんの自宅兼からすみ工房を訪ね、お話をうかがった。

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「『からすみ』が日本に伝わった当初はサワラの真子で作られていましたが、長崎近海で獲れるボラの真子で『からすみ』を作ったのは私たちが初めてでした。基本的な作り方はその当時と変わっていません。ボラの真子、塩、水、あとはお天道様と人の力で作るのです。私たちは正徳2年(1712年)から長崎奉行を通じて宮中と将軍様の御用品として『からすみ』を献上していたんですよ」。

●作り方
「1年中作っていますが11月12月が『からすみ』作りのピークです。贈答品用ということもありますが、10月末から11月がボラの漁期だからです。国内産のボラの真子を取寄せ、塩漬けします」。

塩漬けされているボラの真子。真子30kgに対して塩が40kg必要とのこと

「その後、水で2日間ほど塩抜きをしながら、真子の中に残る血を細い針で丹念に取り除いていきます」。

塩漬けした後は塩抜きが行なわれる

「そして干します。初めに、塩抜きした真子を板にのせ、表面の薄皮が破れない程度の重しをして干します。初めに行なう水分の抜き方がとても肝心なんですよ!! あとは2時間おきにひっくり返しながら干します。干す仕事は屋上で行なっています」。

自宅兼工房の屋上で干される『からすみ』

「365日間、目が離せないので自宅兼工房なんです(笑)」。

美しいべっこう色に変わっていく

●『からすみ』の旨味の素
「ボラの真子で作るのが定着した理由は、ボラがよく獲れたということもありますが、ボラの真子で作ると美味しかったからです。ボラの卵は1粒ずつその中に油球(ゆきゅう)が入っています。油の力で卵が海の中で浮遊し、より広範囲に子孫を残すためということですね。その油が『からすみ』特有のもっちりとした感触や旨味の素なんです」。

●味わいと食べ方
「『塩辛い』と言われることもありますが、塩分濃度は昔と比べて低くしています。薄く切ってそのまま食べたり、大根のスライスと合わせて食べることが多いですね。山芋のスライスと食べても美味しいですよ。炙ってバルサミコ酢を少しかけても美味。『からすみ』はつまみにぴったりですね。『からすみ』を食べながら飲むと悪酔いしないと言われますが、飲み過ぎればやはり酔っちゃいますよね(笑)」。

■髙野屋
住所/長崎県長崎市築町1-16
電話/095-822-6554
※土産店などでの販売も行なわれている。取寄せも可能
http://www.karasumi.jp/

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「からすみ」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
下ごしらえと塩漬け

ボラの真子の表面に残る血を針で取り除く。この作業が出来上がりの色や香りに大きく影響する。その後、たっぷりの塩で塩漬け

塩抜きと干し方

塩漬けした真子を、水、日本酒、焼酎などに漬けて塩抜きする。塩抜きが終わったら形を整えて何度もひっくり返しながら干す

食べ方

スライスした『からすみ』はスライスした大根と合わせて食べることが多い。ごはんやパスタと合わせても美味。炙っても旨い

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