九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

麺

小麦粉と塩水のみで作る麺は各店特製。自家製麺を使う店も多い。ゆで時間に影響する太さや形にも各店の特徴がある

ゆで方

大きな釜で注文が入ってからゆで始める。使いこんだ羽釜を見ることも多い。ゆであがりは、麺の状態を見たり、麺に触れたりして判断する

ツユ

昆布、カツオ節、イリコ、干しシイタケなど出汁の材料は各店様々だが、味付けは醤油とミリンだけというシンプルなところが多い

語り 釜揚げうどん 織田薪 松本哲夫の「釜揚げうどん」

店主・松本哲夫さん

宮崎の夜で一番のにぎわいをみせる『ニシタチ』と呼ばれる西橘通りには、多くの飲食店が軒をつらねる。通り沿いにあるビルの1階の奥にある『織田薪(おだまき)』は夜だけ営業する釜揚げうどん専門店。メニューは『釜揚げうどん』『釜揚げうどん大盛』『釜揚げうどん卵入り』と、『いなり寿司』だけだ。お店に入ってすぐ右側で麺をゆでる店主・松本哲夫さんにお話をうかがった。
「店は1978年に私の母親が始めました。場所柄、ほろ酔い気分でいらっしゃる方が多いので、あまり考えなくていいようにメニューを少なくしているんですよ(笑)」。

まず、麺の話をうかがった。麺は細めでやや平たい麺だ。
「毎日午前中に打った麺をお出ししています。自宅工房で作っている自家製生麺ですね。材料は小麦粉と塩水。季節によっても、日によっても塩分濃度を変えたりして最高の麺を作っています。春と秋が作りにくい時期だと思いますね。細麺にしているのは、早くゆであがるようにするためです。ほろ酔い気分のお客さんは待ってはくれないので(笑)。5分以内でゆであがり、なおかつうどんのしっかりした感じは残したいと考えて、今の麺になったのです。うちのツユにからみやすい麺でもありますね」。

そのツユは宮崎県人が好む味わいをベースに、上品に作られている。
「ツユに使う出汁はイリコ、サバ節、アジ節、カツオ節でとっています。7割はイリコですね。宮崎の方はイリコ出汁に慣れているので、イリコの風味がすると安心されるようです。でも、あまりイリコの風味が強くならないように、頭とワタを取り除いたイリコを使っています。出汁ができあがったら、薄口醤油とミリンで味付けします」。
透明なツユを見れば、丁寧に出汁が作られていることがよくわかる。

『釜揚げうどん』の注文が入ると、一度に8人前までゆでることができる大きな羽釜に麺を入れる。

麺を羽釜に入れる

「その日の一杯目をゆでるのは少し時間がかかります。お湯は継ぎ足しながらやっていきますが、何杯も作るうちにだんだんと白濁して(麺からの旨味が少しずつ溶け出して)いい感じになっていきます。だから、毎日、旨味が出るように開店前にはまかないとしてみんなで『釜揚げうどん』を食べていますね(笑)。麺が透き通ってきたらゆであがりです」
続いて、丼に麺とゆで汁を入れる。

丼にゆであがった麺を入れ、ゆで汁を注ぐ

麺とは別にネギ、揚げ玉、ユズの皮が入った器にツユを注ぐ。

器にネギ、揚げ玉、ユズの皮を入れてツユを注いでできあがり

「揚げ玉は小麦粉と油と水を使って手作りです。形がバラバラなのが手作りの証拠です(笑)。揚げ玉は娘が作っているのですが、『奥が深い』と言っていますね。決して天かすではないですよ」。
少し塩味のきいた和風の吸物のようなツユとユズの香りが麺によく合う。喉越しのいい麺にからむ揚げ玉の食感も程よい。
「母親はうどんがよく食べられている今治出身ですが、四国の味というよりも、宮崎の『釜揚げうどん』は宮崎ならではの味わいになっているようですね。宮崎の『釜揚げうどん』が特に注目されるようになったのは、平成に入ってからのような気がします。うどん自体は昔から宮崎にあって、宮崎人はうどん好きです。普通のうどんの麺はやわらかいものが多いですね」。

丼に入っている麺は一見、量が多いと思ったが、するすると食べることができた。飲んだ後の締めとして食べる方が多いというのも納得だ。ツユに丼のゆで汁を加えればお吸い物感覚、お母様手作りのいなり寿司と合わせると美味。
「昔は麺の量はもっと多かったんですよ。あまりに多すぎるとよく言われて、少し減らしました(笑)。うちのツユはあっさりしているから、飲まれるなら薄くなりすぎないように加減してくださいね」。

19時の開店と同時にお客さんが次々と訪れた。
「19時〜21時は仕事帰りや仕事前の方、そして23時頃と午前1時頃にピークがやってきます。特に県外の方は、地鷄を食べて、飲んで、釜揚げうどんで締めるみたいな夜の流れがあるようです(笑)」。
さっぱりとした味わいの『釜揚げうどん』は、夜の街で多くの方に愛され続けている。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

麺

毎日午前中に打つ自家製生麺。小麦粉と塩水を使い、その日の状況で塩分濃度を変える。早くゆであがるように細めのやや平たい麺だ

ゆで方

注文が入ると、一度に8人前までゆでることができる大きな羽釜で麺をゆでる。5分程で麺が透き通ってきたらゆであがり

ツユ

出汁をイリコ(頭とワタを取り除く)、サバ節、アジ節、カツオ節でとり、薄口醤油とミリンで味付けしたさっぱり味。揚げ玉は自家製

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釜揚げうどん 織田薪 ユズの皮が浮かぶツユでさっぱりと

1978年創業。夜の街・ニシタチ(西橘通り)沿いに立つビルの1階の奥にある。中に入ってすぐ右側で麺をゆでるのは店主・松本哲夫さん。麺は自家製の細めの平麺。ツユは頭とワタを取り除いたイリコがベースの出汁に薄口醤油とミリンで味付けし、ユズの皮を浮かべる。さっぱりとした味わいで飲んだ後の締めにぴったりだ。

『釜揚げうどん』620円(税込)。『釜揚げうどん大盛』は720円(税込)、『釜揚げうどん(玉子入)』670円(税込)は、ツユに生卵が浮かぶ
『いなり』1コ90円(税込)。持ち帰りも可
カウンター席と奥に座敷もある店内

釜揚げうどん 織田薪(おだまき)

住所 宮崎県宮崎市中央通2-23 コアビル1階
電話 0985-27-9984
営業 19:00〜翌2:00
休み 日曜
31席
カード 不可
駐車場 なし
URL http://www.i--wave.net/odamaki/
※記載した内容は2015年12月21日現在のものです。
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