九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

具材

欠かせないのはかつお菜、よく使われるのはブリ。その他、ニンジン、サトイモ、シイタケ、カマボコなども入る。餅は丸餅だ

ツユ

焼きあご(焼いたトビウオ)からとった出汁をベースに塩や薄口醤油で味付けする。昆布、カツオ、椎茸の出汁が入ることもある

作り方

それぞれに下ゆでや下味をつけて下ごしらえしておいた具材、別鍋でゆでた丸餅をお椀に入れて、温かいツユを注いでできあがり

語り もちカフェ 月うさぎ 片桐雅久の「博多雑煮」

片桐雅久さん

「初めて『博多雑煮』をいただいた時、“上品さ”を感じさせる、とても美しい料理だと思い驚きました。にごらないようにツユを最後に合わせますし、味も繊細でちょっとした出汁加減でも味わいが変わってしまいます。ブリが入っているのにも、かつお菜という珍しい野菜が入っているのにもびっくりしましたね。

美味しいお餅と出会いまして、“餅”という特徴のあるお店を始めたのです。私自身、昔からお餅が大好きだったのもあるのですが(笑)」。

片桐さんが惚れ込んだ餅は鍋で別にゆでる

オーナー・片桐雅久さんは2014年4月、『もちカフェ 月うさぎ』をスタートさせた。田園風景に囲まれた昭和27年築の古民家を改装したカフェだ。メニューは『博多雑煮』、『ぜんざい』などお餅を使ったものが中心。雑煮は1年中食べることができる。

「普通に餅というと甘味がイメージしやすいと思うのですが、雑煮をメインにしたいと思っているんですよ」。

そうお話してくださる片桐さんだが、福岡市南区出身ということで、当初は『博多雑煮』を詳しくはご存知なかったのだそうだ。

「お店を始めるにあたって、いろいろと調べました。初めて『博多雑煮』をいただいた時、“上品さ”を感じさせる、とても美しい料理だと思い驚きました。正統派の“博多雑煮”をつくっていきたいと思いました」。

厨房で雑煮をつくっていただいた。具材は、ブリ、かつお菜、ニンジン、サトイモ、カマボコ。ブリは下ゆでする。かつお菜、ニンジン、サトイモも別々に下ゆでされる。

それぞれ別々に下ごしらえされた具材

餅は小さめの丸餅が2つ。注文が入ると餅をゆで、お椀に具材を入れた後、焼きアゴからとった出汁をベースに味付けした澄んだツユを注いでできあがり。上品な出汁と一緒に、具材も餅もするりとお腹の中におさまってしまう。

お椀にゆでた餅、具材を入れてツユをかける

「お餅は大きいものが1コよりも、小さいものが2コのほうがきれいだし食べやすいですからね(笑)。お餅の歯応えと喉越しがいいでしょう?うちで使っているお餅は食べた感じが重くなくて、軽い感覚なんですよ。雑煮とぜんざいのセットメニューもありますが、お餅の後にまたお餅なんて普通はないですよね(笑)。でも、このお餅だと食べられるんですよ」。

雑煮メニューを提供するにあたり、餅や雑煮のことを調べたという片桐さん。

「今のお餅とは違うかもしれませんが、お餅のルーツは弥生時代にあったようです。雑煮の完成は室町時代で、当時の武家社会ではごちそうでした。その後一般家庭にも広まって、季節の変わり目やお祝いごとの時に雑煮を食べるようになったそうです。時代や文化の変遷によって、今ではお正月だけに食べるようになってしまいましたが、元々お餅はおめでたい時に食べていたもので、そこでよく雑煮として食べられていたのですね。雑煮は日本人のソウルフードとも言えると思うのです。お正月にしか食べないというのは少し悲しいですね(笑)。九州各地、日本全国に様々な雑煮がありますが、その中でも私は『博多雑煮』を広く伝えていくことができたらと思っています。ですから、うちでは、博多雑煮を一年中食べていただけるようにしています。夏に来てくださったお客様から『この時期に食べられるのはいいですね』という言葉もいただきました。私は、週に1回くらい食べていただけるといいなぁと思っていますが(笑)。世界遺産に和食が登録されました。日本の大切な食文化であるお餅やお雑煮も大切にしていきたいですね」。

古来より、月を見て『月にはうさぎがいて餅をついている』と感じていた風流な日本人。店名にはそんな想いも込められている。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

ブリ、かつお菜、ニンジン、サトイモ、カマボコ。餅は小さめの丸餅だ。ブリ、かつお菜、ニンジン、サトイモはそれぞれ下ゆでする

ツユ

透明なツユは、焼きアゴからとった出汁をベースにしたもの。味付けに関しては「秘密です(笑)」とのこと

作り方

注文が入ってからゆでる餅と、それぞれに下ゆでした具材をお椀に盛り、最後に温めたツユを注ぐ

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もちカフェ 月うさぎ 築60年の静かな古民家で餅メニューを

田園風景に囲まれた落ち着いた空間の中、雑煮、ぜんざいなど餅を使ったメニューを一年中食べることができる。雑煮は焼きあごからとった出汁をベースに、ブリやかつお菜が入る博多の味。小ぶりの餅は、もちもちとした食感とのどごしがよく、普通の餅よりも軽い食感。雑煮とぜんざいのセットでもするりとお腹におさまるほどだ。

前菜や小鉢、食後のコーヒーが付く『博多雑煮』1200円。さらに、お餅のスイーツ(ぜんざい、きなこ餅、2種餅、白玉3種の4種類から1つをセレクト)も付く『博多雑煮セット』は1500円
こんがり焼いたお餅が香ばしい『ぜんざい』800円
写真のカフェ空間以外に、セミナーや教室としても利用できる『和モダンルーム』、帯・着物のリメイクや器を展示しているギャラリースペースもある
お店は、田園風景に囲まれた民家を改装

もちカフェ 月うさぎ

住所 福岡県糸島市二丈浜窪243-1
電話 092-332-8320
営業 11:00〜16:00
木・金・土・日曜営業
26席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://mochi-cafe.net
※記載した内容は2014年12月24日現在のものです。
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