九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

ウロコを落とし、内臓をとった『このしろ』は、塩をして、甘酢に漬け込まれる。塩の仕方や漬け込みの時間で味わいが変わる

すし飯と薬味

通常のすし飯がベースだが、そこに、ショウガ、ゴマ、大葉、ネギなどの薬味が加わることで、『このしろ』の旨味が際立つ

巻き方・作り方

酢で締めた『このしろ』とすし飯は、基本的には巻きすなどを使って押し固める。固め方も作り手によって異なる

語り 和食 島崎 島崎誠士の「このしろ姿寿司」

島崎誠士さん

熊本を代表する繁華街・下通りにあるビルの地下1階。『和食 島崎』の店主・島崎誠士さんは大の釣り好き。
「月曜なら、カウンターのショーケースに私が日曜に釣った魚が並ぶこともありますよ」。

築地・新橋などで修行をされた島崎さんは1990年にお店をオープン。新鮮な魚介をはじめ、旬の食材を使った料理、熊本ならではの郷土料理で地元の方々に愛され続けている。

通年食べることができるこちらの名物『さばの棒寿司』に加え、秋から冬にかけては『このしろ寿司』もメニューにのぼる。
「このしろは、成長するにつれて『しんこ』、『こはだ』、『このしろ』と名前が変わっていきます。『こはだ』は体長10cmくらいで、それ以上は『このしろ』。大きいものだと30cmくらいにもなりますが、私が使うのは20cmくらいの『このしろ』です。秋から冬にかけて脂ものって美味しい季節ですね。肩口から身がこんもり盛り上がっているのがいいですね。また、全体的に黄色いものが、脂がのっているようです。熊本では『このしろ』はとても安く手に入る魚ですね。『こはだ』は、江戸前寿司では高級なネタになるんですが、熊本では『こはだ』も安く手に入ります。江戸前寿司は玉子と『こはだ』の握りで職人の腕がわかるとも言われていますね。今でこそ、江戸前の寿司を出すところも増えてきましたが、熊本では、昔は関西に修行に行く人が多かったんですよ。なので、棒寿司を作る人が多かったりもします。私も、秋はさんまの棒寿司も作りますよ。『このしろ』は、熊本では棒寿司の一種である姿寿司にすることが多いですね。八代海あたりでは『このしろ姿寿司』をお祝いや、お祭りの時に必ず食べるんです。私は姿寿司とは少し違う『このしろ寿司』を作っていますよ」。

島崎さんの『このしろ寿司』作り。キラキラと輝くウロコが特徴的な『このしろ』の下ごしらえから始まる。

『このしろ』を三枚におろす。身の腹の部分は小骨が多いので取り除く

「ウロコを落とし、頭と内臓を取り除いて、三枚におろします。腹側の小骨が多いところを落として、塩をして10分くらいおいておきます。そのあと、酢の中につけて20分ほど入れておきます。

塩をして酢に漬ける

これは臭み取りでもありますが、酢に漬けすぎると酸っぱくなりすぎるので加減が大事ですね」。

身の表面に切れ目を入れた後、厚みを半分にするように包丁を入れる(切り離さない)

酢で締めた身の表面に、包丁で格子状の切れ目を入れた後、3枚におろした身の厚みが半分になるように包丁を入れ(切り離さない)、開く。そして身の表面をバーナーで炙る。

表面を炙る

「酢に漬けるところまで準備をしておいて、注文が入ったら炙りから始める、という段取りです」。

身を並べ、すりおろしたばかりのわさびを塗る

炙った身を並べ、その上にすりたてのわさびをのせ、すし飯を置く。

すし飯をのせ、くぼみを作ってネギと大葉を置き、巻きすでしっかりと巻く

すし飯の中央にくぼみをつけてネギと大葉をのせ、巻きすで巻いていく。食べやすい大きさに切ったらできあがりだ。

食べやすい大きさに切ったらできあがり

「そのまま食べてもいいですが、醤油をつけて食べていただいても美味しいですよ。醤油は、刺身醤油、醸造醤油、もろみ醤油の3種の醤油をブレンドした特製です」。

通常の『このしろ姿寿司』は大きめに切られているが、こちらの『このしろ寿司』は小さめに切られていて巻き寿司感覚で食べやすい。『このしろ姿寿司』にある、小骨の多い腹の部分や頭がついていないのも食べやすい。焼き目の香ばしさも新鮮な味わい。
「骨があると少し食べにくいですし、いったん口の中に入れてから骨を出すのも面倒ですからね。そうしなくていいように、この形にしているんですよ。酢に漬けた上に、炙ってもいるので、魚臭さもないでしょう? 寿司以外では、刺身もいいし、南蛮漬けもいいですね。私は、小さい頃は塩焼きにして食べていました。塩焼きは骨が多くカルシウム分が多いので、焼くと独特な匂いがして苦手な人もいます。やっぱり寿司が定番でしょうか。秋から冬にかけては、『このしろ寿司』を締めに食べてくださる方が多いですね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

ウロコと頭を落として三枚におろし、腹側の小骨が多いところを落とす。塩をして10分くらいおいた後、酢の中に20分ほど漬ける

すし飯と薬味

甘酢と合わせた通常のすし飯に、薬味としてワサビ、ネギ、大葉が加わる。香りとともに緑色の彩りも鮮やかだ

巻き方・作り方

表面に切れ目を入れて炙った『このしろ』の上に薬味とすし飯をのせ、巻きすでしっかりと巻く。食べやすい大きさなのも“島崎流”

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和食 島崎 新鮮な魚介や熊本名物を肴に焼酎を

繁華街・下通りにある和食店。熊本産の新鮮な魚介や野菜を使った料理や、熊本名物を味わえる。焼酎好きにたまらないのは、辛子蓮根、馬肉薫製、馬ひも串が付く『肥後盛』1,000円や、自家製からすみなどが付く『おすすめ三点盛』1,000円だ。『このしろ寿司』は骨の多い腹の部分を取り除いたり、身を焼いたりと一工夫。食べやすく、オリジナルの味わいになっている。

握り寿司感覚でもある『このしろ寿司』1,000円
焼酎がすすむ『創作焼なめろう』800円。その他、馬肉団子やぷりぷりの天然ハモのすり身などが入る『馬肉のふわふわ鍋』1人前2,000円や、『島崎名物さばの棒寿司』1,200円も人気のメニュー
カウンター席の前にあるショーケースを見て、オーダーするのも楽しい

和食 島崎

住所 熊本市中央区下通1-9-1 松藤会館地下1階
電話 096-351-0321
営業 18:00〜23:00
定休日 日祝日
18席
カード 不可
駐車場 なし
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