九州の味とともに 冬

熊本 このしろ姿寿司

薬味を合わせたすし飯の上にのる
塩と甘酢で味付けした『このしろ』

このしろ』はニシン科で体長15〜30cmの魚。キラキラと輝くウロコと黒い斑点模様が特徴。真水と海水が混ざる汽水域に生息するため、球磨川が流れ込む八代海では豊富に獲れる。ブリと同じように、大きさによって名前が変わる出世魚で、体長5cm程度までは『しんこ』、10cm前後のものは握り寿司のネタとしてもよく知られる『こはだ』、15cmを超えると『このしろ』と呼ばれる。ただ、ブリとは違い、出世する(大きくなる)にしたがって、値段が安くなるという特徴を持つ。

『このしろ姿寿司』は、棒状にしたすし飯の上に、背開きにした頭付きの『このしろ』をのせて押し固めた寿司だ。すし飯の上にのせる『このしろ』は、塩をした後、甘酢で締めたもので、ほどよい塩味と酸味が付いている。すし飯には、ゴマ、ショウガ、大葉などの薬味も混ぜ込まれている。すし飯の香りと甘味の中に広がる『このしろ』の旨味。醤油を付けなくても、そのまま美味しくいただける。また、酢で骨や頭もやわらかくなっているので、残さず食べられる。

『このしろ』は漢字で書くと『鮗』。その字の通り、脂がのる秋から冬が美味しい季節だが、八代海沿岸では、ほぼ1年中食べられている。この地域では、お正月、お祭り、お盆などには欠かせない、大切な郷土料理なのだ。

このしろ

■『このしろ』について

八代共同魚市場を訪ね、八代鮮魚商協同組合の藤原成治さんに『このしろ』についてうかがった。

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朝7時からせりが始まり、威勢のいい声がこだまする

「『このしろ』は出世魚、大きくなるにつれて、『しんこ』、『こはだ』、『このしろ』と名前が変わっていきます。料理に使う『このしろ』は大きくても30cmくらいまでのものがいいようです。それより大きくもなりますが、大きくなると骨が硬くなって食べにくくなってしまうんです。八代海では1年中獲れますが、秋から冬が美味しくなります。正面から見て丸みがあるのが良い『このしろ』ですね。定置網や刺し網で漁をしますが、『しんこ』や『こはだ』は、たくさん獲れません。使っている網の目よりも身体が小さいというのもありますし、『しんこ』や『こはだ』は八代海を回遊しているので、いつも網をしかける場所にはいないようなんです。ちなみに、このあたりでは獲れてもあまり高く売れません(笑)。八代海は浅いので、赤色を帯びた魚はいなくて、『このしろ』をはじめ、タチウオ、ヒイラギと“ひかり物”が多いですね」。

『このしろ姿寿司』は『このしろ』を酢で締めたもので作るが、漁師さんや市場の方々は刺身もよく食べていらっしゃるとのこと。

市場に届いてすぐの『このしろ』はピチピチ

「市場に届いてすぐの新鮮な『このしろ』は輝いていて、これを刺身で食べると美味しいんです。三枚におろして切ります。腹の部分(マグロでいうとトロの部分)は脂がのっているんですが、小骨が多いので外します。皮は剥いでもいいんですが、身は皮と一緒に食べたほうが美味しいですね。コリコリとした食感は他では食べられません。『このしろ』は弱い魚で傷みが早いので、新鮮な刺身は漁師さんか魚屋さんしか食べられないものです。私たちはよく食べているので、みんな飽きていますよ(笑)。ですが、『このしろ』がないと八代は始まらないですね」。

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「このしろ姿寿司」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
下ごしらえ

ウロコを落とし、内臓をとった『このしろ』は、塩をして、甘酢に漬け込まれる。塩の仕方や漬け込みの時間で味わいが変わる

すし飯と薬味

通常のすし飯がベースだが、そこに、ショウガ、ゴマ、大葉、ネギなどの薬味が加わることで、『このしろ』の旨味が際立つ

巻き方・作り方

酢で締めた『このしろ』とすし飯は、基本的には巻きすなどを使って押し固める。固め方も作り手によって異なる

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