九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

豆腐

豆乳濃度の高い木綿豆腐で、材料としては嬉野産大豆フクユタカなどの国産大豆と天然にがりを使ったものが多い

炊き方

嬉野温泉の温泉水で炊く。豆腐が溶けて角がとれ、全体が白濁したら食べ頃。炊き続けると豆腐は豆乳に戻ってしまう

タレ・食べ方

醤油をベースにして、すりゴマなどが入ったさっぱりとしたタレが主流。豆腐が溶けて白濁した温泉水も全て味わうのが嬉野流

語り 大正屋 山口雅子の「温泉湯豆腐」

山口雅子さん

「嬉野は、江戸時代は長崎街道の宿場町として栄えた湯治の町です。その頃は民家というか木賃宿(きちんやど)みたいなものしかなかったと思いますが、やがて食事を提供する宿もできていったようですね。嬉野温泉の湯は、ぬるぬる感もある、やわらかいお湯です。温度は95度くらいとかなり高め。温泉に詳しい方の話によると、温度が高い温泉のほうが様々な成分が溶け込んでいて効能があるのだそうです。お肌にも良いし、温泉水を飲むと胃腸の調子も良くなりますね」。

嬉野温泉のお話をしてくださったのは、大正14年創業『大正屋』の専務取締役・山口雅子さん。温泉湯豆腐についてもお話をいただいた。
「嬉野の温泉水でお豆腐を炊くと、お豆腐が溶けてトロトロになることは昔から知られていたようですね。それが今では温泉湯豆腐という形で広く知られるようになりました。湯豆腐と言っても京都の湯豆腐とは全く違います。京都の湯豆腐は“す”ができないよう、コトコト炊き続けずに火を止めます。けれど、嬉野の湯豆腐は炊き続けますからね。ただ、炊き続けると全部溶けてしまうんです。私はそそっかしいので、家で作る時などは、とろ火にしたまま忘れてしまって、お豆腐が溶けてなくなったことがあります。それはそれでとても美味しいスープになるんですけどね(笑)。それから、普通の湯豆腐では鍋の底に昆布をひいたりしますが、嬉野では昆布は使いません。昆布を使うとお豆腐が溶けにくくなってしまうんですよ」。

豆腐の1コは、一丁を4等分したもの。炊いていくと白濁していく

温泉湯豆腐を作っていただいた。土鍋に切った豆腐と温泉水を入れて炊いていく。
「お豆腐は私たちが経営している『湯豆腐本舗』で作っています。いち早く地産地消を目指し、地元の大豆を使って作り続けています。国産の大豆は当然割高ではあります。けれど、嬉野名物なのですから、しっかりしたものを提供したいと思っているのです。いい大豆で作ると、白くて美味しいお豆腐ができますね。さらに、このお豆腐は豆乳濃度がとても高いんです」。

時折、鍋底に焦げ付かないようにおたまの背で豆腐を動かす

鍋の中がぐつぐつとなってくると、時折、山口さんが豆腐を動かしてくださる。
「そのままにしておくと、鍋の底が焦げ付いてしまうんですよ。お豆腐は崩れないように、おたまの背中で動かすといいですね。温泉水が白濁し、豆腐の角がとれて、トロトロになったら食べ頃です」。

全体がとろけて、角が丸くなったら食べ頃

湯豆腐は特製のタレで食す。
「うちのタレは昔から生醤油と、ゴマを炒って摺ったものを合わせたシンプルなものです。ポン酢なんかもいいんですが、うちのタレはお豆腐の味を味わっていただきたくて、すっきりさっぱりした味ですね。生醤油なので、少しかけて量を加減しながら召し上がってください」。

特製のタレをかけ、薬味をのせて味わう

すっきりしたタレが豆腐の甘味を引き出すような味わい。豆腐が溶け出した温泉水も旨味たっぷりだ。
「うちの温泉湯豆腐は、お豆腐と温泉水と薬味だけという、シンプルなものです。これもお豆腐本来の味を味わっていただきたいからです。お豆腐を食べ終わったら、お豆腐が溶け出したこの“ツユ”に野菜やうどんを入れて食べたり、雑炊にしても美味しいですね。温泉湯豆腐は、焼酎のつまみにもなるし、冬は身体が温まります。冷やして食べても美味しいですよ。トロトロの冷や奴が楽しめますよ」。

さて、嬉野の温泉水はなぜ豆腐を溶かすのだろうか。この事に関しても興味深いことを教えていただいた。
「嬉野の温泉水は重曹泉で少し塩分、つまりナトリウム分も入っています。だから、葉もの野菜を茹でると緑色が鮮やかになります。お茶には合わないし、ごはんを炊くのにも合わないですが…。この高い重層成分がお豆腐を溶かすのです。ただ、重層が多過ぎると、お豆腐は溶けますが苦みが出てしまうんですよ。私の主人が各地の温泉水を取り寄せて、実験してみたのですが、嬉野の温泉水を使った湯豆腐が一番美味しいんです。嬉野の温泉水は成分の割合がちょうどいい塩梅ということですね。嬉野の温泉水じゃないと、美味しい温泉湯豆腐はできないんです。同じ嬉野でも、私たちが経営している『椎葉山荘』の温泉水では、お豆腐はうまく溶けないんですよ。嬉野の中でも、『大正屋』がございますこのあたりが、温泉湯豆腐には一番いいようですよ(笑)」。

まさに嬉野の湯があればこその、温泉湯豆腐なのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

豆腐

自社で運営している『湯豆腐本舗』で作った豆乳濃度の高い豆腐。地産地消を目指し、使っている大豆は嬉野産のフクユタカ

炊き方

全体が白濁し、豆腐がとろけて角が丸くなるまで温泉水でコトコトと炊く。鍋の底に焦げ付かないように時折豆腐を動かす

タレ・食べ方

生醤油とゴマを炒って摺ったものを合わせたシンプルなタレで食べる。タレは豆腐そのものの味がわかるようにと、すっきりとした味

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大正屋 大正14年創業の老舗宿で、湯と湯豆腐を

やわらかなお湯につかった後は、特製の温泉湯豆腐を楽しみたい。地元産の大豆・フクユタカと天然にがりを使用した豆腐を温泉水で炊き、豆腐がとろりと溶けたら食べ頃。生醤油とすりゴマをベースにした、すっきりとしたタレが豆腐の甘味と旨味を引きたてる。宿泊時の食事、食事休憩と合わせ、レストラン『山茶花』で味わうこともできる。

『温泉湯豆腐』。部屋食・入浴付きの昼の食事休憩5,000円〜(室料は別途必要)。『レストラン 山茶花』では、小鉢や刺身などがついた『湯豆腐定食』2,100円といったメニューもある
季節の懐石料理の、湯豆腐以外のメニューの一部
東館特別室『松琴亭』。嬉野の街並を見渡すこともできる

大正屋レストラン 山茶花

住所 嬉野市嬉野町大字下宿乙2276-1
電話 0954-42-1170
営業 11:30~14:00(OS13:30)/17:00~
20:30(OS19:30)
定休日 なし
43席
カード
駐車場 あり
URL http://www.taishoya.com/
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