九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

かき

“ゴロタ石”と呼ばれる岩につく天然のかきを素潜りで獲る。中身が黄色っぽいこと、貝柱が大きいことが、高鍋の天然かきの特徴

焼き方・食べ方

殻がついたまま直接火にかけて、焼き過ぎないようにしていただく。濃厚な旨味とほどよい塩味があるので、調味料などは必要ない

自慢のかき料理

焼きかき以外に、酢がき、かきフライ、かき飯、かき鍋など、様々なかき料理があるが、各店、自慢のかき料理を工夫している

語り 本家たかしま 高島順治の「焼かき」

高島順治さん

「目の前の砂浜には天然記念物のアカウミガメが夏場はあがってきます。夜、産卵にくるんですよ」。
『本家たかしま』の前にはそんな自然豊かな海が広がっている。天然かきも豊かな海が育んだもの。店主・高島順治さんは、海の恵みに感謝しつつ、かき漁のために海に潜り、ご自身の手で料理もされている。
「目の前が漁場です。沖あい数十メートルのところにテトラポットがありますが、そこより沖は波が荒くて流れが早いのでそこにいるかきは大きくなりますね。潮がひくと石が見えてきて、そこにかきがついていることもあって、それを獲りにくる人もいますよ。かきが付いている石のことは『ゴロタ石』と呼んでいますね。現在、潜って獲っていいのは8人の組合員だけで、1日60kgまでなんです。じいちゃんも父もかき獲りをしていて、私も小さい頃、よくついていって海で遊んでいました。料理屋は父が昭和47年に始めて、私が2代目です。朝8時くらいから2〜3時間潜りますね。私が獲る場所は10月から5月くらいが漁期ですので、その間かきを獲ってきて、かき料理をお出ししています。潜ってかきを獲ってきて、殻をはずして、料理して…一人でなんでもやってます(笑)秋口のかきは少し水っぽかったりもしますが、年があけると身がしまってきます。冬場も美味しいですが、3〜4月もおすすめですね。同じかきでも身の量が多くなりますから、春先のほうが絶対にお得です。身の量が倍くらい違いますからね(笑)」。

表面をきれいにしたかき

かきを獲ってきたら、料理する前には下準備が必要。それも高島さんの日々の仕事だ。
「大きいやつは、焼きかき用のかきに使うので、表面をきれいにしておきます。その状態で常温でも1週間〜10日ほどは生きているんですよ。その他のかきは、殻からはずしたむき身にして大きさを分けて、殻の中にある水分も一緒にボウルの中に入れておきます。カキの身の中の水分がぬけないようにして、できだけその状態でおいておき、注文が入ってからささっと料理するんです」。

生のかきの殻を外して、中を見せていただいた。
「貝柱が大きいでしょう?見た目でいうと黄色っぽいでしょう?身もしまっているし、これが自然の栄養分で育った高鍋の天然かきです。身が入ると厚みが出てきて、もっこりともりあがってくるんですよ」。

中央の白い部分が貝柱。色は黄色い

冬から春にかけてのかきが美味しくなる季節、定食やコース料理でかきをたっぷり食べられる方が多いとのことだ。
「料理は焼いたり、揚げたり、鍋にしたりいろいろです。私が自分で獲ってきて料理しているということもありますが、できるだけそのままの味を味わっていただきたいですね。私も作ってる途中でつまみ食いしますよ。美味しいですから(笑)」。

その味は、やはり『焼きかき』が一番よくわかる。
「殻の白いほうが岩にくっついている部分です。その逆の黒いほうを下にして焼きます。白いほうを下にして焼くとばちばちはじくんです。黒いほうを下にするとかきのエキスも落ちにくいですから。殻のすきまから汁が出てきたら開けてみて焼き具合を確認します」。

焼きかき以外の料理に使うかきは殻から外しておく

かきフライはサクッとした衣がかきのジューシーさや甘味を包みこんでいる料理。
「かきフライは、熱を通しすぎないように、表面が色づいたら、油からあげています。ソースも用意していますが、天然の塩味があるからそのまま食べても美味しいです。やはり、そのまま食べていただきたいですね(笑)」。

かきフライは衣の表面が色づく程度で油から引き上げる

そして、こちらの自慢のかき料理は、『かき飯』だ。
「カキの身を炊いて(煮て)身は取り出し、その出汁をベースに醤油とミリンでごはんを炊きます。ごはんが炊けたら取り出しておいたかきの身をのせるんです。かきの身の旨味や食感がいいですね」。

焼きかきも焼きすぎないことがポイント

かき焼き、かきフライ、かき飯…それぞれに違うかきの旨味を楽しむことができる。これらの味をすべて味わえる『かきめし定食』が一番の人気メニューとのことだ。

味がしまりプリプリした食感の焼きかき

「『かきめし定食』2600円だと、使っているカキは20コ分くらいですね。4200円のコースだと、『かきの茶碗蒸し』『かき串焼き』『かきの土手味噌焼き』など品数が増えて35コくらいになりますよ(笑)」。
 天然かきの旨さと、『かきそのものの味を楽しんでいただきたい』という高島さんの想いが作るかき料理。35個でも簡単に食べることができそうだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

かき

料理人でもある店主自身も素潜りして獲る天然かき。10月から5月くらいが漁期なので、かき料理も同じ時期に提供している

焼き方・食べ方

殻の黒いほうを下にして焼く。殻のすきまから汁が出てきたら、ナイフを使って開け、身の焼き具合を確認する

自慢のかき料理

カキめし
カキの身を煮て身は取り出し、その出汁をベースに醤油とミリンでごはんを炊く。ごはんが炊けたら取り出しておいたカキの身をのせる

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本家たかしま 自ら漁にも行く料理人が作るかき料理

日向灘で育った新鮮な魚介類を使った料理が落ち着いた個室で味わえる。10月から5月まではかき料理の季節。店主自ら、高鍋の天然かきを潜って獲り、料理まで手がけている。『かき飯定食』では、焼きかき、かきフライ、かきの身をゆでた汁で炊いたごはんにかきの身をのせる名物『かき飯』が食べられる。9月から解禁となる伊勢エビの料理も美味。

かきの酢の物、焼きかき、かきフライ、かき飯、かきの吸い物が付く『かき飯定食』2800円。他に、『伊勢エビ味噌汁定食』2300円、『あら煮定食』1100円などもある
『かき飯』は700円で持帰ることもできる。
料理はすべて個室でゆっくりといただくことができる

本家たかしま

住所 児湯郡高鍋町蚊口浦6259-1
電話 0983-23-0108
営業 11:00〜15:00/17:00〜21:00
休み 不定
50席
カード 不可
駐車場 あり
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