九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

具材

魚介類は、アジ、サバなどの青魚を使うことが多いが、地域によって異なる。野菜は大根、ニンジンなどの他、キュウリ、ネギなども

酢味噌

味噌、砂糖、酢などで作るが、家庭(作り手)によって酸味が強いもの、甘味が強いものなど様々。すりゴマが加わる場合も多い

作り方

魚介類は刺身か酢でしめたもの。野菜類は塩をしてしっとりとさせる。食べる直前に和えたり、和えて味をなじませたりと和え方は様々だ

語り 旅館 あけぼの 音成洋子の「かけ和え」

音成洋子さん

創業明治22年。風情ある建物、黒光りする柱や廊下にも歴史を感じる旅館。福岡県久留米市出身で天才と呼ばれた洋画家・青木繁氏も滞在していたこともあるという歴史ある場所だ。明治43年4月には青木氏の展覧会も開催されている。

門構えも重厚な『旅館 あけぼの』

そんな風情ある宿の一室で、女将・音成洋子さんに『かけ和え』の話をうかがった。
「一年中お出ししていますが、なんとなく、魚の身も締まる秋から冬の料理かなと感じています。『かけ和い(かけあい)』と呼ばれることもあるようですね。簡単に言うと、魚介類と野菜類の酢味噌和えですね。山のものと海のものをかけあわせて作るから『かけ和え』と呼ぶのでしょうね」。

野菜類をほぐし、魚介類を入れて混ぜる

今回作っていただいた『かけ和え』に使われる魚介類はイカとサバ、野菜は大根、ニンジン、キュウリ。
「サバはしめサバで、イカは一度ゆでてから切っています。魚介類は季節によって変わりますね。アジを使う時もあります。有明海に近いところでは、違う魚を使ったりもするようです。野菜は塩をまぶしてしっとりとさせておきます」。

準備した素材を酢味噌で和える。
「酢味噌は、味噌、砂糖、みりん、酒、からし、酢で作ります。ゴマをすったものを入れて、ゴマ酢味噌を使うことも多いですが、うちではゴマは入れていません。昔は青豆をすりつぶしたものも入れたりしもしていたようです。あらかじめ作り置きすることはせずに、魚介類と野菜をお出しする直前に酢味噌で和えます。そうじゃないと、野菜から水が出てしまい、水っぽくなってしまうのです」。

酢味噌を入れて全体を和える

できあがった『かけ和え』は、美しい器に盛られる。
「この器は100年前くらいの古伊万里です。演出として大きい鉢に盛って、お取り分けしていただいております。『かけ和え』は、お祭りや人が集まる時にたくさん作って、みんなで食べていたものですしね。サバの味噌煮、田舎煮しめ、赤飯などと並んで、人が集まる時によく出ていたという記憶もあります。地域のみんなで、順番に当番で作ったりしていたのです」。

野菜のしっとりとしていながらシャキシャキした食感。鼻にぬける辛子の風味。みずみずしく、なつかしさも感じる味わいだ。
「酢の物だし、野菜もたくさん入っているのでいいですよね。焼酎のロックにも合いますね。ご接待など利用していただくことも多いのですが、高級なものばかり食べていらっしゃる方に、『かけ和え』とか、芋のにっころがしとかお煮しめのような一品を出すととても喜ばれます。ほっとされたり、郷愁を感じていただけるのかもしれないですね。小さい頃からあった家庭料理なのでなくしたくはないですね。伝えていかなければならないと思っています。ただ、著名な板場さんでも家庭料理にはかなわないんです。家庭料理には、愛情という調味料が入りますから(笑)。『かけ和え』は、最後に和えるのは簡単ですが、酢味噌は味の調合がむずかしいものです。家庭に続く味を舌が覚えているからできるものなのではないでしょうか」。

器の美しさも堪能した

取材を終えて、音成さんにお礼の言葉をいただいた。
「『かけ和え』は、どこにでもあるものと思っていましたが、佐賀の料理だったんですね。普段は隠れた存在ですし、光をあてていただいて、『かけ和え』も喜んでいると思います(笑)」。

郷土料理は生活に密着していればしているほど、地元の方々にとっては、特別なものではなく日常のものなのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

今回の魚介類はしめサバとゆでたイカだが、季節によって変わり、アジを使う時もある。野菜類は大根、ニンジン、キュウリ

酢味噌

味噌、砂糖、みりん、酒、からし、酢で作る。すりゴマを入れていないことと、からしの風味が際立っているのがこちらの酢味噌の特徴

作り方

作り置きはせずに、魚介類と野菜類を提供する直前に酢味噌で和える。野菜から出た水で、全体が水っぽくならないようにするためだ

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旅館 あけぼの 美麗な佐賀の器でいただく佐賀の味

洋画家・青木繁が亡くなる前の半年ほど逗留していたという、明治22年創業の老舗旅館。趣ある空間では、地元陶芸作家が作った器に盛られた食事を、昼も夜もコース料理のスタイルで楽しむことができる。「佐賀ならではの食材を、地元の器で召し上がっていただくことが、食に関しては最高のおもてなしだと思っております」と言う女将・音成洋子さん。家庭料理である『かけ和え』も美しい器に盛られている。

『かけ和え』。コース料理の一品として出される料理なので、詳しくは要問合せ。
昼の『有明海コース』4000円〜の一部。むつごろう、クツゾコ(シタビラメ)の煮付け、メカジャ(シャミセンガイ)、ワラスボ(ハゼの仲間の魚)などが付く。夜は6000円〜
落ち着いた和の空間では、落語会、音楽会なども定期的に開催される ※宿泊は1泊2食付き12600円〜(税・サ込み)

旅館 あけぼの

住所 佐賀市中の小路3-10
電話 0952-24-8181
営業 11:30〜14:30/18:00〜22:00
休み なし
150席
カード
駐車場 あり
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