九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

うに

壱岐で獲れる新鮮なうにを使う。5〜6月はムラサキウニ、6〜10月はより濃厚な味わいのアカウニが獲れる時期だ

タレ

各店、醤油ベースの特製のタレが添えられる。うにの甘みと旨味をより引き出すために作られた『生うに丼』専用だ

作り方・食べ方

丼にごはんをのせ、生うにを丁寧にのせて、刻み海苔やわさびを添える。特製タレを合わせて食べる

語り うにめし食堂 はらほげ 三浦多恵子の「生うに丼」

女将・三浦多恵子さん
女将・三浦多恵子(みうらたえこ)さん

ユニークな店名『はらほげ』は、店の近くにある『はらほげ地蔵』に由来する。海女(あま)の集落として知られる八幡浦にある6体の地蔵は、遭難した海女の冥福を祈るため、捕獲した鯨の慰霊のためなど諸説あるが、だれが何のために祀ったのかは定かではない。満潮時は胸まで海中に浸かる場所にある。“はら”=お腹に、“ほげ”=穴があることからその名がついた。穴はお供え物を置く場所。満潮時に海水につかってもお供え物が流れないのだ。

店のすぐ近くにある『はらほげ地蔵』

「“はらがほげるほど食べてほしい”=“お腹に穴があくほどたくさん食べてほしい”という願いも込めているんですよ(笑)」と、お話してくださるのは女将・三浦多恵子さん。「創業は昭和47年(1972年)。元々は地元の方に利用していただこうと母が始めた食堂だったんです」。現在は多くの観光客でもにぎわうが、夏場に特に人気の品が『生うにぶっかけ丼』。

生うにはきれいなものだけを使う

「壱岐全域でうには獲れています。八幡のうにもとっても美味しいと思いますよ!」と三浦さんが言う、うにそのものの味を感じられるシンプルな丼だ。作り方もいたってシンプル。丼にごはんをつぎ、刻み海苔をのせ、塩水につけておいた生うにを箸で一枚一枚のせていく。どれも鮮やかな黄金色だ。

ごはんをつぎ、刻み海苔をのせる
生うにを一枚ずつ丁寧にのせる

ワサビを添えればできあがり。上からかけて食べる特製のタレにも、うにが使われているとのこと。「いりこと昆布からとった出汁に生うにを入れて炊き、醤油や砂糖で味付けして漉しているんです。うにの風味もして、それだけをごはんにかけても美味しいですよ。このタレも評判がいいんです(笑)。漉したうにはメニューの『和風うにスパゲッティー』の具材に使っていますよ!」。

特製タレをかけて食べる

まずはそのまま一口、濃厚なうにの旨味が口の中いっぱいに広がる。特製タレをかけて一口、さらにうにの旨味が大きくなる。少しワサビをつけると、うにの甘みがより強く感じられる。ごはんとの相性もいい。壱岐は長崎県有数の米どころとのことで、使われているのは壱岐産米だ。

「壱岐ではムラサキウニ、アカウニ、バフンウニが獲れます。見れば違いはすぐにわかります。ムラサキウニは黒っぽくて、クロウニとも呼ばれています。アカウニは赤い色をしてトゲが短い。バフンウニはまるくて茶色っぽいですね。壱岐の海にはカジメという海草があって、ごはんにかけたりして食べますが、トロトロしていて美味しいんです。壱岐のうにもこのカジメを主にエサにしているので、美味しいんだと思いますよ。浅い海にいるうにの身がきれいなようです。夏の時期が旬のアカウニは特に濃厚な味がしますね。食べ終わった後、口の中にしばらく風味が残るほどです」。

うにを使った『はらほげ』の看板料理、『うにめし』についても教えていただいた。「八幡浜では、ご主人が漁に出て魚などを獲り、奥様は海に潜ってうにやサザエなどを獲る家庭が多かったのです。女性はごはんを作るのが大変なので、米を研ぎ、醤油などを加え、生うにを入れてごはんを入れて炊いていました。それが『うにめし』です。旧暦の三月三日のお節句に氏神様に豊漁と安全を祈願してお供えする料理でもあったんですよ。うちの『うにめし』は、ムラサキウニ、アカウニ、バフンウニの3種類のうにを使ったオリジナルです。うにが苦手という方も、『うにめし』を食べてうにの味を知っていただき、その後『生うに丼』が好きになるという人も多いみたいです」。『うにめし』はふわりとうにの風味が広がるやさしい味わいだ。その他にも壱岐に伝わるうに料理があるとのこと。『うにの厚焼き』はうにが入った卵焼き、『がぜみそ』はゆでたバフンウニを味噌と合わせたもの。『うにの厚焼き』と『がぜみそ』は予約しておけば食べることができる。

店の横にある海女小屋を再現した体験場では、5月上旬から10月下旬まで、『うに割り体験(要問合せ)』を行なっている。「たとえ大きなうにでも、1つのうにの中に身は5枚しか入っていないんですよ。うにを割って、身を取り出すのは手間がかかりますが、ご自分でされてそのまま食べれば美味しさもひとしおだと思います(笑)」。海女の街で食べる新鮮なうにの味は、他ではなかなか味わえないものだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

うに

夏場によく使われているのは八幡浜の海女が獲ったアカウニ。※時期によって使われるうには異なる

タレ

いりこと昆布からとった出汁に生うにを入れて炊き、醤油や砂糖で味付けして漉した、うにの風味が香る特製タレだ

作り方・食べ方

ごはんの上に刻み海苔をのせ、生うにを一枚ずつのせていく。特製タレをかけ、好みでワサビをつけて食べる

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うにめし食堂 はらほげ 漁師と海女の集落にある郷土料理店

壱岐で獲れる新鮮な旬の魚介を味わえる店。生うにを炊き込んだ看板メニューの『うにめし』とともに、夏場に人気が高いのは『生うにぶっかけ丼』だ。生うにを出汁で煮込み醤油などで味付けして漉した特製のタレをかければ、うにの旨味がよりふくらむ。予約しておけば、『うにの厚焼き(うに入り卵焼き)』『がぜみそ(ゆでたうにの身と味噌を合わせたもの)』も食べられる。

『生うにぶっかけ定食』3500円には『生うにぶっかけ丼』、あおさの吸い物、小鉢、刺身が付く。『生うにぶっかけ丼』単品は2800円
『はらほげ定食』1750円。『うにめし』、あおさの吸い物、小鉢、サザエつぼ焼き、刺身が付く。『うにめし』単品は700円
壱岐の写真や伝統工芸品『鬼凧(おんだこ)』などが飾られている大広間
名所・はらほげ地蔵のすぐ近くにある

うにめし食堂 はらほげ

住所 壱岐市芦辺町諸吉本村触1307
電話 0920-45-2153
営業 10:00〜18:00
休み なし
120席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://harahoge.com
※記載した内容は2019年8月26日現在のものです。
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