九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

クチナシ

クチナシの実を割って水に浸けておき、黄色に染まった水を作る。煎じるという方法もあるようだ

炊き方

研いだ米を黄色に染めた水に浸けて炊く。浸水時間が長すぎたり炊き方によっては緑色に炊きあがってしまうとのこと

かやく

大根、ゴボウなどの根菜類、豆腐、魚(エソがよく使われる)のすり身や焼いた身を炒め、醤油などの調味料と水を加えて炒め煮する

語り 黄飯 ポルト蔵(ぐら) 安野祐二の「黄飯」

店主・安野祐二(やすのゆうじ)さん

「『黄飯』はクチナシの実で染めた黄色の水で米を炊いただけの黄色いごはんですよ」と笑うのは『ポルト蔵』店主の安野祐二さん。臼杵出身の安野さんは県外での仕事の後、2002年に地元に戻った。ちょうどその年の4月に臼杵の情報発信施設『サーラ・デ・うすき』がオープン。一角にあった1600年創業の醤油店の蔵を改装して6月に『ポルト蔵』はスタートしたのだ。「私も臼杵の魅力を訪れる方に伝えています。『夜の観光協会』として、臼杵の酒場情報など、夜の楽しみ方もお伝えしていますよ(笑)」。

オシャレな空間では、地元の野菜を使った洋風料理ともに、『黄飯』、『かやく』、『きらすまめし』が付く『ポルト蔵ランチ』など、臼杵の郷土料理も提供している。『黄飯』と『かやく』のお話をうかがった。まずは『黄飯』。「『黄飯』に使うクチナシは大分市野津原町で採れたもの。海外産もあるのですが、海外産は少し色が黒いので見ればすぐにわかりますね。臼杵では、かつてクチナシは各家庭の日の当たる庭先に植えられていました。クチナシの実は解熱作用などがあるので、漢方薬として使われていたんです。実を砕いて小麦粉をまぶし、湿布薬にも使っていたようですよ。

クチナシの実を割る

そして、臼杵ではクチナシの実を使った『黄飯』を赤飯代わりに食べていたんです。けれど、今では『黄飯』を家庭で炊くことはあまりないようですね。クチナシの実を割って水に入れて黄色の水にし、そこに研いだ米を入れて炊きます。

クチナシを水に入れるとすぐに水は黄色に染まっていく。米5合に対して10粒ほどを使うそうだ

ただ、米を水に長く浸けたままにしておくと、黄色ではなくて緑色になってしまうんですよ。夜に仕込んでタイマーで次の日の朝に炊き上がるようにしておくと大変なことになります(笑)。味は変わらないけど食欲がすすみません(笑)。『黄飯』は江戸時代の天保の改革の時期に生まれたともいわれていますし、パエリア説もありますが、不明ですね」。

ほどよく浸水させて炊き上げた『黄飯』

『かやく』を作っていただいた。「材料は大根、ニンジン、ゴボウ、エソのすり身、豆腐ですね。

『かやく』の材料と調味料

鍋に油をひき、まずエソのすり身を炒め、豆腐をまるごと入れてつぶし、その他の具材も入れて炒めます。さらに薄口醤油、砂糖、水を加えて炒め煮し、最後にネギをのせてできあがりです。『かやく』は商人が作っていた料理ですね。何度も火を入れることでだんだん美味しくなっていくんですよ」。

具材を炒め、調味料を加えて炒め煮する

『黄飯』と『かやく』が食べられる『ポルト蔵ランチ』はアンティークなお盆にのって提供される。オシャレな店内とのギャップもおもしろい素朴でヘルシーな和風ランチだ。臼杵での食べ方を踏襲して、『黄飯』の上に『かやく』をのせて食べると、ほっとする味わいが広がる。「『かやく』が上にのった状態だと、『黄飯』は見えませんよね。だから、『かやく』=『黄飯』だと思っている人もいるんですよ。

できあがった『かやく』

『黄飯』は小学校の給食でも出ていましたが、地味ですし、あまり食べたくなかった思い出があります(笑)。でも、大人になって『いい料理だな』と思うようになりました」。そう語ってくれる安野さん。冒頭で「『黄飯』はクチナシの実で染めた黄色の水で米を炊いただけですよ」と言われていたが、『黄飯』と『かやく』をとても大切にされている。小学校などで郷土料理の作り方を教えに行く活動もされているのだ。「地味な料理でも自分で作ると美味しいですから。『こうやって作るんだ』という発見もありますしね。もっと『黄飯』を地元の方にも食べていただきたいと思っています。ちなみに、うちの店では白いごはんは出さないんですよ。ハヤシライスでもカレーでも全部『黄飯』です。オードブルの中に入れるおにぎりなども作りますがそれも『黄飯』です(笑)」。臼杵の魅力は何ですか? という問いに対し、「子どもたちが素直なところです。歩いていたらみんな挨拶してくれますよ」と即答してくれた安野さん。次の時代を生きる子どもたちに、郷土料理を通して臼杵の歴史を伝えている。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

クチナシ

大分市野津産のクチナシの実を割って水に入れて黄色の水を作る

炊き方

研いだ米を黄色の水に入れてほどよく浸水させて炊く。浸水しすぎると緑色になってしまうとのこと

かやく

材料は大根、ニンジン、ゴボウ、エソのすり身、豆腐。まず材料を炒め、薄口醤油、砂糖、水を加えて炒め煮する

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黄飯 ポルト蔵(ぐら) オシャレな空間で食べる臼杵の和食

臼杵の情報発信施設『サーラ・デ・うすき』の一角にあるカフェ&ダイニング。古い醤油蔵を改装したオシャレな空間では、洋風料理ともに、『黄飯』、『かやく』、『きらすまめし』が付く『ポルト蔵ランチ』など、臼杵の郷土料理も提供している。自慢のハヤシライスやカレーなども含め、お店で使うごはんはすべて『黄飯』だ。

『黄飯』『かやく』『きらすまめし』、小鉢、味噌汁などが付く『ポルト蔵ランチ』1000円
『黄飯』を使った人気の『ハヤシライス』700円
安野さんとの会話も楽しめる1階のカウンター席
立派な梁が存在感を放つ2階席
お店は『サーラ・デ・うすき』の一角にある。“サーラ”とはポルトガル語で“居間”の意味だ

ポルト蔵(ぐら)

住所 臼杵市臼杵片町206-2
電話 0972-63-6511
営業 11:00〜17:00/19:00〜翌2:00
休み 不定
カード
駐車場 なし
※記載した内容は2019年6月20日現在のものです。
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