九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

具材

大根、ゴボウ、レンコン、昆布、キクラゲ、凍りこんにゃくなどがよく使われる。具材の数は奇数と決まっている

甘酢

塩、砂糖、酢、出汁などを合わせて作る。二杯酢、三杯酢などとは少し異なり、『あちゃら漬け』用の味わいだ

作り方

切った具材をゆでるなど下ごしらえした後、唐辛子と一緒に甘酢に漬ける。一晩ねかせることで具材と甘酢の味が馴染む

語り 日本料理 味 竹林 竹林讓の「あちゃら漬け」

店主・竹林讓さん

福岡城址の近く、大手門で開店したのは1993年。楢製カウンターの内側に立たれているのは店主・竹林讓(たけばやしゆずる)さん。凛とした立ち姿だが、表情もお話も柔和だ。
「カウンターの中でお客様を見つめながらの仕事ですからお話もします。常連さんには『昔に比べるとよくしゃべるようになりましたね』と言われますね。和食の道へは…なんとなく入りました(笑)。小さい頃から柴犬が好きだったし、“和”が好きだったのかもしれません」。

地元福岡から離れ関西での修行の後、『日本料理 味 竹林』を開店した。
「日本料理が一番洗練されているのは京都。ですから関西で学ぶことには意味があると思います。けれど、日本人が作ればなんでも日本料理なのだと思いますよ(笑)」。

メニューは懐石料理のみ。竹林さんは博多の台所と呼ばれる柳橋連合市場に毎朝仕入れに行き、食材を手にしてから料理を組み立てる。
「食材もどんなものが手に入るかわからないから毎日が綱渡りですが、料理は刺激的な仕事だと思います。まず自分が楽しまなければとは思いますが、反省の毎日ですね」。

手間と時間をかけて仕込んだ美しい料理を、食べる速度などを図りながらお客さんに合わせて一品ずつ提供する。同じ値段の懐石料理でも、お客さんによって献立が異なることもあるのだそうだ。
「私の料理は『おしきせ料理』ですが(笑)、お客様の好みもありますし、前に来ていただいた時とは違う料理をお出ししたいとも思います。だから初めてのお客様の時が一番難しいのです。おなかの大きさや好みがわかりませんからね。まずはうちの定番料理を中心に出していきます」。

もちろん、定番料理も季節を感じさせるもの。夏の定番は、タコの湯引き、ハモ料理(ハモチリ、ハモの吸物、ハモしゃぶ)、アユのコンフィ(アユに塩をして油に漬け、数時間蒸し器に入れて90度を保つ。骨までやわらかくなる料理)などだ。

『あちゃら漬け』は食材の具合などで時折つくられる料理。懐石料理の前菜や、昼の松花堂(松花堂弁当のこと。四角の箱形で中に十字の仕切りがあり、かぶせ蓋がついた器を使った弁当)の一品だ。
「60〜70代の方は知っている方が多いですが、最近、知らない方も多いですね。名前はポルトガル語に由来しているようです。野菜を甘酢に漬ける料理で、南蛮漬けやお正月の紅白なますに似ていますね。甘みと酸味があり、材料はいろいろ変わりますが、唐辛子は必須だと思います」。

竹林さんは夏だけではなく、冬にも『あちゃら漬け』を作ることがあるとのこと。どちらの作り方も教えていただいた。

【夏バージョン】
赤パプリカ、黄パプリカ、ミョウガは切った後で軽く下ゆでする。

材料を切る

キュウリ(皮だけ)は塩水に漬けておく。それらを昆布出汁、塩、砂糖、米酢を合わせた甘酢、唐辛子と一緒に一日漬けてできあがり。
新レンコンを使うこともある。

下ごしらえした材料を唐辛子と甘酢に漬け、一日ねかせてできあがった『あちゃら漬け』を盛りつける

【冬バージョン】
大根とニンジンを切り、塩水に2〜3時間漬ける。それらを甘酢、唐辛子と一緒に一日漬けてできあがり。
水菜も添える。大根の代わりにカブを使ったり、カリフラワーを使うこともある。

『あちゃら漬け』冬バージョン。こちらも材料を切って下ごしらえし、甘酢に漬ける

「材料を塩水に漬けておくのは、甘酢の味が入りやすくするためです。日持ちはしますが、けっこう時間のかかる料理なんですよ」

やわらかですっきりとした甘みと酸味の中、具材の歯応えも楽しめる。
「料理の仕事を始めた時からずっと変わらずに思っていることがあります。それは母親になったつもりで作ること。“今日はあの方に何を召し上がっていただこうか”と、仕込みの時から考えているんですよ。なので、ぜひ予約をお願いします」。

元来、『あちゃら漬け』は家庭で作られていたもの。竹林さんが作る『あちゃら漬け』にも母親のような手間と愛情が込められているのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

取材時の具材は赤バプリカ、黄パプリカ、ミョウガ、キュウリ(皮だけ)。その日に仕入れた野菜が使われる

甘酢

甘酢は昆布出汁、塩、砂糖、米酢を合わせたもの。出汁の風味が広がる上品な香りと味わいの甘酢だ

作り方

材料を下ゆでしたり塩水に浸すなど下ごしらえした後、唐辛子ととともに甘酢に漬ける。一日漬ければできあがり

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日本料理 味 竹林 博多の旬を懐石料理で楽しむ

メニューは懐石料理のみで、柳橋連合市場で毎朝仕入れた旬の食材を使った美しい料理と出合える。野菜をゆでたり塩水に浸すなどそれぞれに下ごしらえした後、特製の甘酢に一日漬ける『あちゃら漬け』は前菜などに添えられる。小さな料理だが、1993年の開店以来変わらない料理への愛情が感じられる一品だ。

『あちゃら漬け』(夏バージョン) ※懐石料理(昼5,400円(税込)、夜7,560円(税込)〜)の一品。詳しくは要問合せ
『あちゃら漬け』(冬バージョン) ※懐石料理(昼5,000円(税込)、夜7,000円(税込)〜)や昼の松花堂(3,000円(税込)の一品。詳しくは要問合せ
骨までやわらかい夏の定番『アユのコンフィ』。金柑がそえられている ※懐石料理(昼5,400円(税込)、夜7,560円(税込)〜)につく一品
楢材のカウンターが印象的なカウンター席
テーブル席にも洗練された雰囲気が漂う
趣のある入口

日本料理 味 竹林(あじ たけばやし)

住所 福岡県福岡市中央区大手門1-3-3
電話 092-712-1051
営業 12:00〜OS13:30/18:00〜OS20:30
休み 日祝日
14席
カード 夜のみ可
駐車場 なし
※記載した内容は2017年7月24日現在のものです。
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