九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

『たらおさ』を水で戻し、下ゆでした後、適当な大きさに切る。戻し方とゆで方ができあがりの食感を左右する

味付け

味付けは醤油、酒、砂糖、みりんといったシンプルなもの。唐辛子などを加えピリ辛に仕上げることも多い

煮込み方

やわらかくなるまで弱火でじっくりと煮込む。煮込みの後、一晩ねかせて味を染み込ませている

語り 日田の隠れ家・古里食房 傳 秋月啓子の「たらおさ」

秋月啓子さん

横に川が流れ、緑に囲まれた場所は、店名通りまさに“日田の隠れ家”。『豊(とよ)のしゃも』(飼料にとうもろこし、米ぬか、小麦、黒炭を与え放し飼いしているしゃも)を使った料理や手作り豆腐が人気のこちらでは、予約しておけば『たらおさ』を食べることができる。

地下水でもどした『たらおさ』

「『たらおさ』はすごくかたいので、水を何回も変えながら3日ほど水につけて戻します。水で戻している時が一番匂いがするんですよね(笑)。匂いがするけど、外に置いておくとネコやイノシシが来るので冷蔵庫に入れてます(笑)。戻し方が悪いとできあがった時にかたくなるので、手でさわって判断していますよ」。

『たらおさ』の煮物の料理法についてお話してくださるのは店主・秋月啓子さんだ。

おおきめに切っていく。かたいところは力が必要だ

「水で戻したものを切って、水からゆでますがまだ匂いがしますね。水で戻している時も煮る時も匂いが漂うので、近所の家で作っていたら、『あら、たらおさを煮よるね』という感じで、すぐにわかりますよ(笑)。切り方は作る人によっていろいろですが、私はあまり小さくは切りません、大きめですね。

切ったものを下ゆでする

少しゆでたらお湯を捨てて、醤油と砂糖だけで煮込んでいきます。

醤油と砂糖を加えて汁気がなくなるまで煮込む

ツヤが出るようにみりんを入れる作り方もありますが、うちで使う調味料は醤油と砂糖だけです。具材として、干したけのこや干しシイタケを入れたりすることもありますが、うちはシンプルに『たらおさ』だけですね。コトコト煮て汁気がなくなるまで煮込んでいきます。やわらかくなるように1日がかりで煮込みますが、煮過ぎると逆にかたくなってしまうんですよ。戻し方や煮方で食感は変わっていきますね。煮込んだら味が染みるようにそのまま一晩ねかせておきます」。

濃い色にできあがった『たらおさ』は砂糖と醤油の濃厚な味わいがしっかりと染み込んでいる。コリコリとしたエラと弾力のある内臓の食感も独特だ。
「エラの根元の白いところは骨みたいにかたいので、私たちは食べていませんよ(笑)。やわらかいのが好きな人もいれば、少しかためが好きな人もいます。切り方が小さめが好きな人もいれば、大きめが好きな人もいます。味も甘めのものもあれば、少し辛めのものもあります。うちでも唐辛子を少しいれますが、たくさん入れたものもあります。昔からある家庭料理ですから、味わいは家々で違います。私の作る味は、母から受け継いだものですね。日田の人はみんな知っていますし、お盆によく作る料理です。私も親が作っていたし、お盆には『たらおさ』を食べると昔から決まっていますから(笑)。お盆に人の家に行くといろんな料理が入った鉢がありましたが、『たらおさ』は絶対にありますからね。日田では普通に食べるもの、あたりまえの料理なんです。お盆の時期になると、『たらおさ』がスーパーや総菜屋さんでたくさん売ってますよ。できあがったものも売られているようですね。お盆に生魚の代わりに食べるというものだったのでしょう。見た目はちょっと悪いけど、美味しいですしね。日田に帰省してきた方は食べたがりますよ。ただ、家で作ったり食べたりするものだから、日田の人はお店ではあまり食べないようです。珍しいものだから県外の方からの問合せは多いのですが。うちではメニューにはのせていませんが、予約していただければご準備します。作り始めてからできあがるまで5日はかかるので、早めにお願いします!」。

『たらおさ』の旨味もさることながら、一緒に食べたごはん、水、お茶なども美味しい。
「料理には、すべて地下100mからの地下水を使っているんですよ」。

『たらおさ』を戻すのに使う水も、この地下水。水の美味しさも『たらおさ』の味を高めている秘密に違いない。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

『たらおさ』は3日ほど水で戻してから大きめのぶつ切りにして、下ゆでする。使う水は地下100mから汲み上げる地下水だ

炙り方・食べ方

調味料は醤油と砂糖だけ。素材の旨味を引き出すためシンプルな味付けにしている。アクセントとして唐辛子も少し加える

その他のたらおさ料理

汁気がなくなるまでコトコトとじっくり煮込む。煮込んだ後は一晩ねかせて味をよく染み込ませる

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日田の隠れ家・古里食房 傳川のせせらぎをBGMに大分の味を

日田市街地から車で10分ほど。樹々の緑に囲まれ横を川が流れる静かな空間で、炭火焼きにした『豊のしゃも』や手づくり豆腐を食べられる。『たらおさ』は、3日ほど水でもどして下ゆでした後、砂糖と醤油だけで炊く。シンプルな味付けの分、『たらおさ』の独特の旨味をより感じることができる。地下100mから汲み上げる地下水が料理の味を高める。

大きめに切られて食べ応えがある『たらおさ』の煮物
※電話にて要予約・確認
豊のしゃも、手づくり豆腐、地鶏サラダ他が付く『いろり炭火焼コースA』2600円
どこに座っても水の流れる音と鳥のさえずりが聞こえる
横に川が流れ、緑に囲まれたお店だ

日田の隠れ家・古里食房 傳

住所 日田市東有田1332-2
電話 0973-27-7488
営業 11:00〜15:00/17:00〜21:00
休み 第1・3木曜
40席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.mirakuru.jp/den/
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