九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

具材

ゴボウ、大根などの根菜類や特産のシイタケなどの他、椎葉で獲れるイノシシ肉が使われることも多い

味付け

具材から出る出汁をベースにして、味噌で味付けされることが多いが、醤油仕立てでも食べられている

作り方

具材を煮込んで味付けする。ソバ粉に水を合わせてこね、だんごを作って入れる。ほどよく火を通してできあがり

語り 森の民宿 龍神館 椎葉喜久子の「わくど汁」

女将・椎葉喜久子さん

『森の民宿 龍神館』は日向椎葉湖沿いを走る県道142号線沿いにあり、緑の木々に囲まれた静かな場所に建つ。迎えてくださったのはすべてを一人で切り盛りしている女将・椎葉喜久子(しいばきくこ)さん。「1995年(平成7年)にオープンした時は道からも建物が見えていましたが、木々がすっかり生い茂りましたね」。椎葉産の自家杉材を使ったロッジ風の建物の中はやわらかな雰囲気だ。

喜久子さんが作ってくれるのは、地元の食材を使った料理の数々。鹿肉やイノシシ肉のジビエ料理、希少な岩茸(岩壁の垂直な面に生えるコケの一種。キクラゲに似た食感をもつ)を使った料理、手打ちソバなども食べられる。「椎葉のイノシシ肉はとっても美味しいんですよ。山で木の実をいっぱい食べているからなのでしょう。知り合いの猟師さんが分けてくれるイノシシ肉は特に美味なんですよ。いい部分で、猟師さんも血抜きなどの下処理も上手なんだと思います。臭みもまったくなくて美味しいんですよ。私は椎葉以外ではイノシシ肉は食べないですね(笑)。ソバはね、椎葉産のものは他とは全然違うんです。椎葉産のソバは、香りと粘りがすごいんですよ」。

椎葉産のイノシシ肉とソバは喜久子さんの『わくど汁』に欠かせないものだ。「イノシシ肉からいい出汁が出ますからね!」。『わくど汁』作りはイノシシ肉を空炒りするところから始まる。「フライパンにイノシシ肉を入れ、塩を少し加えて空炒りします」。

イノシシ肉を空炒りする

「そこに切っておいた大根、ニンジン、シイタケ、ゴボウを入れ、水を加えて30分ほど煮込みます。イノシシ肉からも野菜からもいい出汁が出てきますよ」。

ゴボウなどの具材と水を入れて煮込む

イノシシ肉がやわらかくなったら味噌で味付けする。「イノシシ肉には味噌がよく合うんですよ、シシ鍋を作る時も味噌仕立てですね」。

味噌で味付けする

このままでも十分美味しそうだが、ソバのだんごを入れるのが『わくど汁』。喜久子さんはソバのだんごの準備をする。「ソバ粉と水を1:3の割合で合わせて別の鍋に入れ、火にかけてねりあげます」。

ソバ粉に水を加え、火にかける
ほどよくこねる

「いい具合に固まってきたら、スプーンですくって、具材が入っている鍋の中に落としていくんです」。

スプーンですくって鍋に入れ、煮込む

最後に白菜を加えて少し煮込み、ネギをちらせばできあがり。丼につがれた『わくど汁』は野菜もイノシシ肉もソバのだんごもたっぷり入っており、ボリュームのある一杯だ。

最後に白菜とネギを入れる

「具だくさんでしょう?(笑)。『わくど汁』は食べる味噌汁という感じかな(笑)。夏のイノシシはやせているそうですし、やっぱり寒い時に食べるのが美味しいと思います。身体もあたたまりますからね。イノシシの脂は豚肉とは違い、それも旨味なのでしょうね。寒い時期に『わくど汁』を出す時は、鍋のまま囲炉裏にかけて、みなさんで分けながら、好きなだけ食べていただけるようにしていますよ」。とろみのある汁とたっぷりの具材に身も心も満たされる『わくど汁』。赤米・黒米・もち米・小豆をブレンドしたごはんや煮しめ、岩茸の酢の物など、どの料理も滋味深い。「岩茸はシシ狩りの方が持ってきてくれるものです。仙人の食べ物とも言われていて、天ぷらにしたり酢の物にすると美味しいんですよ。椎葉の食材はどれもとても力があると思いますね」。

建物は上から見ると凹型の部分がある。それは大切な岩を動かさずに取り囲むようにしているためだ。「その岩から天に向かって龍がのぼったといい伝えられているんです」。“龍神館”という名前はその伝説に由来している。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

地元で獲れたイノシシの肉、地元産の大根、ニンジン、シイタケ、ゴボウ、白菜、ネギなどが使われる

味付け

イノシシ肉、野菜から出る出汁が味のベース。調味料はイノシシ肉を空炒りする時に使う少量の塩と、味噌だけだ

作り方

具材を入れて煮込み味噌を溶く。別鍋にソバ粉と水を合わせて火にかけてソバのだんごをねって加える

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森の民宿 龍神館 野菜とイノシシ肉がたっぷりの『わくど汁』

椎葉の杉材を使ったロッジ風の民宿。地元の食材を使った料理、鹿肉やイノシシ肉のジビエ料理、希少な岩茸を使った料理などを食べられる。『わくど汁』の出汁のベースは椎葉産のイノシシ肉、使う調味料は少しの塩と味噌だけで、ゴボウや大根の旨味も加わったまろやかな味わい。丼の中にはソバのだんごもたっぷり入っており、ボリュームのある一杯だ。

ボリューム満点の『わくど汁』
昼食は1500円〜(写真は1500円のコースの一例で『わくど汁』か手打ちソバを選べる)
※『わくど汁』を希望する場合は予約時に伝えること
冬季は囲炉裏を囲んで食事を楽しめる食事処
緑豊かで、野鳥のさえずりも聞こえる場所にある

森の民宿 龍神館

住所 東臼杵郡椎葉村下福良2090
電話 0982-67-2261
営業 ※昼食利用は前日までに要予約
※宿泊は1泊2食付き8500円〜
カード 不可
駐車場 あり
※記載した内容は2019年9月30日現在のものです。
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