九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

鮎の下ごしらえ

鮎の背びれ、中骨、ワタを取り除き塩でまぶす。塩を洗い流した後、酢で締めておく。背中側から包丁を入れ、背開きすることが多い

すし飯

炊いたごはんに砂糖、塩、酢などを合わせる。鮎の身の旨味を引き立てる味付けだ。米どころである地元の米が使われることが多い

作り方

背開きした鮎の身にすし飯をはさむように詰め、適当な大きさに切る。半身をすし飯の上にのせるスタイルもある

語り 食処さかもと鮎やな平田由美子の「鮎ずし」

料理長・平田由美子さん

球磨川に並行して走る国道219号線沿いに建つ『道の駅さかもと』。その横に2016年にオープンした食事処が『食処さかもと鮎やな』だ。毎年6月下旬から11月上旬まで、鮎漁が解禁となる時期に営業している。メニューは鮎料理が中心で、球磨川の流れを見ながら食事を楽しむことができる。

迎えてくれたのは「父親が鮎漁を営んでいて、私も網に入った鮎を取って手伝うこともありました。雨が降ったりして川の水が濁ったすぐ後がよく獲れていましたね。だから、私も小さい頃から鮎料理をよく食べていたんですよ。塩焼きや甘露煮の他、子どもなのにうるか(鮎の塩辛)が好きでしたね(笑)」という料理長・平田由美子(ひらた ゆみこ)さん。日本各地の川で鮎は獲れるが、球磨川の鮎はやはり特別なものとのこと。「香りが違いますね。キュウリやメロンのようないい香りがします。9月くらいになると大きくなって味もさらによくなります。その名の通り体長が30cmを超える『尺鮎』もいるんですよ。味も最高ですね。球磨川の鮎が美味しいのは、球磨川の水がきれいだからなんだと思います。お店では塩焼き、甘露煮、唐揚げ、田楽、『鮎ずし』…いろいろな鮎料理を提供しています」。

この地方に伝わる『鮎ずし』作りを教えてただいた。
「鮎は背開きして中骨、背びれ、ワタを取り除きます。胸びれは残しておきます。骨と背びれはかたくて食べにくいので取りますが、胸びれは見た目がいいですからね。塩をして洗った後、酢で20分ほど締めます。身は少し白っぽくなりますね。そして、水分を切ってすし飯を詰めます」。

鮎を背開きして酢で締める

「すし飯は炊いたごはんに酢、砂糖、塩を合わせ、酢漬けして刻んだショウガとゴマを混ぜたものですね。すし飯の味付けは、鮎の旨味を生かすためのものです」。

ごはんに塩、砂糖、酢を合わせる
酢漬けにして刻んだショウガ、ゴマを和え、すし飯を作る

お腹の部分がつながった鮎の身にすし飯を詰めたら、ラップで巻いて形を整える。ラップを外して適当な大きさに切り、シソや酢漬けのミョウガやショウガなどと皿に盛り付ければできあがり。鮎の頭からしっぽまで使われた“姿ずし”だ。

酢で締めた鮎の身にすし飯を詰める

「頭の部分は苦手という方もいらっしゃいますが、私は頭の部分が大好きなんです(笑)。そのまま食べていただいても美味しいですし、添えているミョウガなどと一緒でも美味しいです。醤油を少したらす方もいらっしゃいますね」。酸味をまとった鮎の旨味とすし飯のバランスが絶妙の味わいで、一匹分の『鮎ずし』はするりと食べられる。頭の部分は少しかたい部分もあるが濃厚な旨味をもっている。「私の父親はこの『鮎ずし』に麹を合わせて、発酵させたものも作っていましたね」。

ラップに包んで形を整える
適当な大きさに切り、シソや酢漬けのミョウガととともに盛り付ける

『鮎ずし』は単品メニューのみで提供されているので、鮎料理がお得に食べられる定食メニューとともに楽しみたい。「『鮎づくし定食』には、鮎の塩焼き、鮎の唐揚げ、鮎の甘露煮、鮎の田楽、鮎の味噌汁、鮎めし(鮎の身が入った炊き込みごはん)にデザートなどが付きます。食べきれない方もいらっしゃいますが、お持ち帰りいただくこともできるのでぜひ試してみてください! その他、鮎の天ぷら、鮎の一夜干し、鮎の背ごしといった料理も美味しいですよ」。

9月末になるとお店のすぐ前を流れる球磨川に鮎やなが作られる。鮎やなとは木や竹などで川の水の流れをせき止めて魚をつかまえる仕掛けだ。そして、11月上旬にその年の営業は終了する。「鮎のシーズンが終わったら、みんなで鮎料理を食べながら打ち上げです。それが鮎供養かな(笑)。球磨川の鮎が美味しいのは球磨川の水がきれいだから。自然を大切にしながら、鮎料理をご提供していきたいですね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

鮎の下ごしらえ

背開きして中骨、背びれ、ワタを取り除く。塩をして洗った後、酢に漬けて20分ほど締める

すし飯

炊いたごはんに酢、砂糖、塩を合わせて混ぜ、酢漬けして刻んだショウガとゴマを加えてさらに混ぜたもの

作り方

酢で締めた鮎の身にすし飯をはさむようにして詰め、ラップでくるんで形を整える。適当な大きさに切る

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食処さかもと鮎やな 球磨川を眺めながら鮎料理三昧を

球磨川の横を走る国道219号線沿いにある『道の駅さかもと』に併設された食事処。毎年、鮎が解禁となる6月下旬から11月上旬にかけて営業、9月末には店のすぐ下に『鮎やな』も設置される。メニューは塩焼き、甘露煮、唐揚げなどの鮎料理が中心だ。『鮎ずし』は、ゴマと刻んだ酢漬けのショウガを合わせたすし飯を使い、酸味をまとった鮎の旨味とすし飯のバランスが絶妙。

『鮎ずし』864円
『鮎の塩焼き』648円、『鮎の甘露煮』648円。塩焼きに添えられるのはタデ酢だ
『鮎の一夜干し』756円、『鮎の唐揚げ』648円、『鮎の田楽』648円。鮎の田楽には、自家製の晩白柚(ばんぺいゆ)みそが使われる
『鮎づくし定食』3240円
球磨川の流れを眺めながら食事ができる店内
入口の横では『鮎の塩焼き』が焼かれ、まわりにはいい香りが漂う

食処さかもと鮎やな

住所 八代市坂本町荒瀬1239-1(道の駅さかもと)
電話 0965-45-3800
営業 月〜金曜11:00〜OS14:30
(土曜・日祝日〜OS15:00)
※金・土曜・日祝日の夜間利用
(17:00〜20:00)は10名以上、3日前までに要予約
休み なし ※6月下旬〜11月上旬営業
80席
カード 不可
駐車場 あり
URL https://sakamoto-ayuyana.jimdofree.com
※記載した内容は2019年9月20日現在のものです。
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