九州の味とともに 秋

宮崎 かつおめし

かつおの漬け(ヅケ)を熱々ごはんにのせて…
漁師たちが生み出したお茶漬け風料理

自然の地形を活かした天然の漁場が点在する宮崎県南部の日南海岸。古くは平安時代から栄えていたと言われている。かつおやマグロの水揚げが特に有名で、宮崎県日南市は一本釣りかつおの水揚げ高が日本一の街でもある。『かつおめし』は、古くからかつお漁が盛んだったここ日南で、よく知られている郷土料理だ。

新鮮なかつおをさばいて切り身にしたものを、醤油をベースにしたタレに漬ける。ほどよく味が染み込んだ切り身をアツアツのごはんの上にのせ、熱い出汁をかけてお茶漬け風にいただく。元々は地元の漁師たちが船の上で食べていた料理なので、調理法はシンプルなものだ。漁師たちが刺身の余りを醤油に漬け、お茶をかけて食べていたとのこと。しかし、家庭でも食べられるようになって、醤油以外の調味料も使ってタレの味を工夫したり、お茶ではなく出汁をかけたりと、より美味しく進化していった。

かつお独特の臭みがないのは、新鮮だから。かつおの旨味を活かすタレは日南ならではの甘めの醤油があればこそ。タレに漬け込んだかつおだけでも焼酎のつまみになる。そして、出汁をかけて食べれば、締めの一品にもなる料理なのだ。

かつおについて

かつおのお話を、南郷漁業協同組合業務部部長・古沢弘明さんにうかがった。

■漁法について

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かつおは、一隻22〜23人乗りの船で漁に出かけます。船はハイテクですが、今でも『めがねみ』と呼ぶ役目の人がいますよ。船から遠くを見張り、数キロメートル離れた鳥の動きを探知しているんです。鳥がちらっと見えると、その下にイワシがいて、それを狙うかつおがいるからです。かつおのことを『なぶら』と呼ぶんですが、なぶらの群れとか、なぶらを追うといった言い方もよくしますね。漁は竿を使った一本釣りをしています。竿も針も、狙った群れの中にいるかつおの大きさによって変えていきます。だから一人20本くらいの竿を用意していますよ。針はスズと鉛で手作りし、そこに手作りの疑似餌を巻き付けておきます。疑似餌の色もみんな工夫していますが、赤系が多いようですね。かつおの群れに近づいたら生きたイワシをばらまき、そこに放水することでイワシを踊らせてかつおをおびきよせて釣り上げます。船の先端にいるとよく釣れるのですが、先端は海から甲板までが高いため、釣り上げるのに力がいります。なので、ベテランは船のうしろの低い方にいますね。手を使わずに針からかつおを放すのには技術が必要で、木で作ったかつおを使って港で練習している人もいますよ。一本釣り以外では、網で獲る方法もありますが、網で獲ってしまうと資源が枯渇してしまいます。一本釣りだと、群れの半分も釣ることはできませんからね。それから、網で獲るとかつおの身体に傷がつくことも多いんです。

●かつおの獲れる時期について
かつお漁は12月から1月までは休んでいます。2月から4月は北上する上りがつおが日南の近海を通るので漁もピークを迎えます。この時期、日本各地で「初がつお」として売られているものは、南郷に揚がったものを陸送したものですよ。北上したかつおはUターンしてきますが、その戻りがつおが日南近海を通るのは8から11月くらいで、漁も盛んになります。戻りがつおは脂がのってきますが、傷みやすいのでより注意が必要ですね。かつおと言うと高知が有名ですが、南郷もすごいんですよ!(笑)。3月には『かつお祭り』もやってます。

●かつおの味と料理について
小さいかつおよりも、5kg以上のかつおがより美味しいようです。南郷のかつおを食べた方からは、「生のかつおがこんなにおいしいなんて」という声をよく聞きますよ。かつおは、『刺身』、『かつおめし』、『かつおのタタキ』などがよく知られていますし、『日南一本釣りかつお炙り重』も最近売り出し中です。それ以外にもいろんな料理があるんですよ。『かつおの角煮』、かつおそのままを醤油に漬ける『醤油節』、『かつおのハラデ(腹皮)の塩焼き』、『かつおの胃袋の塩辛』や『かつおのカレー』といった珍しいものもありますね。

かつお一本釣りに使う針
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日南の醤油

日南市には7軒の醤油蔵があり、中でも大堂津(おおどうつ)エリアには5軒の醤油蔵が集中している。
大堂津で80年ほど前から『マルタニしょうゆ』を作り続けている谷口醸造の谷口忠彦さんにお話をうかがった。
「九州の南、さらに海岸線は甘口の醤油が好まれているようです。漁師が刺身を海水で洗って食べるから、醤油が甘口になったとも言われていますね。南九州は焼酎文化圏だから焼酎に合う味わいということで甘口になったのかもしれません」。
南九州にあって、日南界隈はさらに甘口の醤油が好まれるのだそうだ。「50年ほど前に私の親父が作ったのが『太陽』という名前の醤油。これも甘口だったのですが、お客さんの『もっと甘く』という要望に合わせて、だんだん甘くなっていきました。初めが『太陽』だったので、『水星』『金星』『土星』ときて、『宇宙』まで作ったのですが、“もっと”ということで、宇宙から飛び出して『新世界』まで作ってしまいました。私たちが作っている中で、一番甘くて濃厚な醤油です。もっと甘いものもできるようにがんばります(笑)」。

「かつおめし」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
かつお

新鮮なかつおを使うことと、重さ5kg以上の大きなかつおを使うことは各店変わらないが、切り身の厚さは異なる

タレ

かつおの切り身を漬けるタレが味の決め手。日南ならではの甘口の醤油をベースに、各店が工夫を凝らす。漬け方も様々だ

出汁

かつおの切り身がのったごはんにかける出汁は、昆布やかつおをベースにしたもの。その濃さで味わいは変わる

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