九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

具材

豚肉、ゴボウ、モヤシ以外は、何を使ってもかまわない。彩りや季節を考えて、作り手が工夫する。家庭では残り物が使われることも

調味料

醤油、酒、ミリンなどとともに出汁を使うことが特徴。甘味をつけるため砂糖が多めに入るのも長崎ならではだ

作り方

細切りにした具材を炒め、調味料を入れて炒め煮する。モヤシは歯応えを残すために最後に入れる

語り 長崎和食 草 花洛 桶口忠則の「浦上そぼろ」

桶口忠則さん

『思案橋』電停から少し北に位置する静かなお店。40〜50分かけて焼く名物の『鯛の塩釜焼き』、長崎の季節の素材を使った日本料理、『浦上そぼろ』をはじめ『ヒカド』、『ハトシ』など異国の影響を受けた珍しい郷土料理などを味わえる。
「店名に冠している“長崎和食”とは、地元・長崎の食材を使うことで表現しています。特に、『おまかせ会席』では、走り(出始め)の食材を使うことで季節感をいち早く感じていただければと思っています。長崎は魚種が豊富ですし、珍しい野菜を手に入れることもできます。毎朝、産地直送の店に通っていますよ」。

料理長・桶口忠則さんは仕入れた季節の食材を最高の料理にするため腕をふるっている。
「夏は『ハモ子の塩辛』なんか最高ですね。塩と酒をまわして臭みを抜きます。会席の中にちょっとお出ししたりしてますよ。秋の初めは注文が入ってから締めるシメサバ。締めたてはとても美味しいので、一度召し上がっていただきたいですね」。

さて、五島出身の桶口さんが初めて『浦上そぼろ』に出会ったのは、25歳の頃。名古屋での修行後、長崎に帰ってきた時だったそうだ。
「初めて知った時、昔をなつかしく思い出すような味わいで、まさに郷土料理だなと思いました。派手なものではないですし、難しい料理ではないですが、とても大事な昔ながらの郷土料理。50年、100年後まで伝統を守りつがないといけないと思いました。ずっと前から今まで続いているのですから」。

桶口さんに『浦上そぼろ』を作っていただいた。材料はモヤシ、下ゆでしたゴボウ、椎茸、豚バラ肉、人参、キクラゲ、そしてハスイモだ。
「料理に緑を添えたいので今日はハスイモを使っています。ハスイモは長崎の夏の特産品の一つですね。インゲンやミツバなどを使うこともありますよ」。

 鍋にゴマ油とサラダ油を合わせたものをひき、豚バラ肉、人参、キクラゲ、椎茸、ゴボウの順に入れて炒める。

鍋にゴマ油とサラダ油を合わせたものをひき、豚バラ肉、人参、キクラゲ、椎茸、ゴボウの順に加えて炒める

そこに出汁を加えて炒め煮する。

特製の出汁を加えて炒め煮する

「食材の切り方は、初めは細かく切る“おぼろ”だったものが、もうちょっと粗く切ったほうがいいということで“祖おぼろ”になり、それが“そぼろ”になったという話もありますね。出汁はカツオ出汁、薄口醤油、濃口醤油、ミリン、砂糖、酒などを調合したものです。和食でよく使う八方出汁(基本は出汁10:ミリン1:醤油1を混ぜ合わせたもの)よりも濃いめにしたもので、『浦上そぼろ』専用ですね」。

アクを取ったり味見をしながら味を整え、モヤシとハスイモを入れてひと炒め。

モヤシとハスイモを加えてひと炒めする

皿に盛り付け、みがきゴマ(皮むきゴマ)と山吹をちらしてできあがりだ。

皿に盛りつけてみがきゴマと山吹をちらす

山吹とは卵黄で作ったトッピングのような食材で、黄金にみたてて料理を華やかにする。

「どうぞ召し上がってみてください。中華料理的でもあるし、和食の要素もある味わいは、焼酎によくあいますし、つまみとしてもごはんのおかずとしてもいい料理ですね。単品メニューでもお出ししていますが、ご要望があれば卓袱料理の一品としても召し上がっていただけます。長崎の方は知っている人が多いですが、『浦上そぼろって何ですか?作ってください!!』と言われる若い方もいます。召し上がっていただくと、『美味しい!!』と言っていただけますね。まかないとして、ごはんの上にのせて丼のようにして食べることもあるんですよ」。

ハスイモの緑や山吹の黄色など色合いも盛付け方も美しい。一口食べると、上品な甘味が素材の味を引き立てる。簡単にできる家庭料理としても知られている『浦上そぼろ』だが、桶口さんは和食の“心”を込めて仕上げている。
「あたりまえのことをきちんとやれば、美味しい料理ができます。そして、何を作るにも、手間をかけてやらんといかんですね(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

モヤシ、ゴボウ、椎茸、豚バラ肉、人参、キクラゲ、さらにインゲンやミツバなど緑色の野菜(取材時はハスイモを使用)

調味料

カツオ出汁、薄口醤油、濃口醤油、ミリン、砂糖、酒などを調合した『浦上そぼろ』専用の出汁で味付けする

作り方

ゴマ油とサラダ油を合わせたもので素材を炒め、特製出汁を加えて炒め煮する。最後にみがきゴマと山吹を彩りよくふりかける

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長崎和食 草 花洛 長崎ならではの素材と味わいを

名物『鯛の塩釜焼き』、長崎の季節の素材を使った日本料理、『浦上そぼろ』をはじめ『ヒカド』、『ハトシ』など異国の影響を受けた珍しい郷土料理などを味わえるお店。長崎の家庭料理でもある『浦上そぼろ』にも和食の“心”を込め、盛付けの彩りや形にも気を配る。八方出汁よりやや濃い、専用の出汁を使った味わいは上品な甘味が素材の味を引き立てる。

『浦上そぼろ』800円(税込)。豚バラ肉、モヤシなどに加えて季節の野菜が使われる。取材時は、ハスイモの緑色が彩りを添えていた
『ハトシ』1人前850円(税込) (写真は2人前・昼間は要予約)と、名物の『鯛の塩釜焼き』5000円(税込)
写真は1階のカウンター席。2階には宴会が楽しめる個室もある

長崎和食 草 花洛(ながさきわしょく そう からく)

住所 長崎県長崎市鍛冶屋町5-78
電話 095-823-9313
営業 11:30~14:30/17:00~OS21:30
休み 不定
72席
カード
駐車場 なし
URL http://www.nagasaki-karaku.com/
※記載した内容は2016年10月20日現在のものです。
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